神鳥が優勝 川田と羽田野も全日本ジュニアの出場権獲得/東京都ジュニア体重別選手権

2016.07.12
 期待のルーキー・神鳥剛(政経1=愛知県私立大成)が堂々と優勝を果たした。20歳以下の選手に出場権が与えられる全日本ジュニア体重別選手権への予選も兼ねた今大会。多くのルーキーが大学での公式戦デビューを飾った中、1年生で唯一、春の団体戦に出場した神鳥が90kg級で優勝した。また、昨年のリベンジを果たした100kg級の川田修平(政経2=愛知県私立大成)、初出場ながら冷静な戦いぶりを見せた60kg級の羽田野航(政経1=四日市中央工)の二人が準優勝を果たし、9月の全日本ジュニア体重別選手権への出場権を獲得した。

 まさに独擅場だった。高校時代の前年に、全日本ジュニアに出場したことから、個人戦のデビュー戦ながら第1シードにおかれた神鳥。プレッシャーがかかる状況だったが「いい緊張感を持って張りつめた空気でやれた」(神鳥)と力に変えた。準々決勝までは「勝ちにこだわってやった」(神鳥)と全日本ジュニアへの出場権を獲得するまで結果にこだわった。出場権を獲得した後の準決勝、決勝では結果だけでなく、試合内容にもこだわった。自らの強みである組手と足技をいかしつつ、「相手の釣り手を全部封じることができた」(神鳥)と相手の良さを消して、主導権を握らせなかった。「勝って当たり前」と語る猿渡琢海監督(平11営卒)に加え、本人も「最低条件は優勝」(神鳥)と今大会はあくまで全日本ジュニアを制するための通過点という強い自信をのぞかせた。昨年かなわなかった全日本ジュニアでの優勝を果たし、学生日本一への階段を駆け上がる。

 実力者が復活ののろしを上げた。昨年はベスト8と低調な結果に終わり、全日本ジュニアの出場権を得られなかった川田。昨年はケガの影響もあり、結果を出せず歯がゆい一年を過ごした。その悔しさを晴らすかのように、初戦から川田らしい正攻法の柔道で一本勝ちを重ね、昨年はね返されたベスト8の壁を打ち破った。続く準決勝も一本勝ちを収め、優勝にも期待が懸かったが、決勝は一本負け。「(全日本ジュニアの)出場を決めていて気が抜けていた」(川田)と目標を達成したことによってスキを見せてしまった。また、準々決勝で右足を負傷。試合を待つ間は体のケアに時間を使うなど満身創痍(そうい)の状態だった。夏はケガとうまく付き合いながらの練習となる。苦しい時期を乗り越えて、全日本ジュニア、そして目標とする全日本学生体重別選手権での優勝をつかむ。

 試合運びのうまさを見せた。羽田野は高校時代インターハイ準優勝の実績があり、軽量級のエース候補として期待されているが、今大会ではその能力の高さを見せた。無理に攻めていかず、相手の動向をうかがいながらの落ち着いたプレーで相手に指導を取らせるなど、ルーキーらしからぬ冷静さを見せた。自らの強みである競り合いで力を見せ決勝まで駒を進めた。決勝は延長までもつれる熱戦となったが、決着は突然訪れた。相手の指が目に入り、自分から場外に出てしまったことで指導を取られて、あっけなく敗れた。「自分の弱いところが出てしまった」(羽田野)と試合後は悔しい表情をのぞかせた。それでもデビュー戦で準優勝という結果は今後に大きく期待を持たせる。「全日本ジュニアでは優勝目指して頑張っていきたい」(羽田野)と心身ともにさらなる進化を遂げ今度こそ表彰台の一番上に立つ。

 春季は今大会をもって終わり、各個人が課題を持って成長を期する夏がやってくる。秋は全日本ジュニアだけでなく、学生日本一を決める全日本学生体重別選手権や、シニアの大会である講道館杯も控えている。下級生の底上げが個人戦の席巻、そして悲願の団体日本一へ導く。

[加藤真人]

試合後のコメント
猿渡監督

「一昨年も同じような結果だった。予選で上位に行った選手が全日本ジュニアに出る。神鳥にしても川田にしても羽田野にしても、インターハイ1、2位でジュニアというレベルで勝って当たり前だと思っている。そこを勝ち切れなかった川田、羽田野は全日本ジュニアに向けて今日の反省点、課題を克服するために夏に頑張ってもらいたい。合宿も足強化練習もあるし、しっかりやりきって全日本ジュニアの優勝を目指してもらう。(川田の)足のケガは自分の注意不足でのケガ、油断。注意力の無さ。集中力をもっと高めてやらないと決勝みたいに負けるしケガもするし、精神力の弱さを気づいてやらないと。(2年生)だらしないね。1年半やってきたことが何もできていなかった。2年生の半分が優勝大会のレギュラーとして強化されてきたし、あとの半分は彼らに比べて下がったところで練習をしてきたというのもあるが、内容的には同じきつさつらさを味わってきたと思う。練習量というものは言い訳にはできない。本人たちのモチベーションの違いだった。去年練習してきたことを克服できなかったりの状況があっての敗戦。稲毛は一回戦からあのような試合をしていたら一生勝てない。稲毛、増本はケツに火つけてやらないと来年の個人戦に出れない状況になってくると思う。今年も下級生と勝負をさせながら戦力分析して東京学生に出すことを考えた時に、下の勢いのある選手を出したくなるというのは監督の心情だし。差が五分であったら年下を使いたいから。(原澤)良くなった。気持ちを前面に出した柔道ができるようになった。周りの重量級に比べると少し物足りない部分もあるので、本人がその差を埋めるような気持ちで頑張ってもらいたい。すごく能力はある、体格的にも引けを取っていない。あとは本人の気持ち次第。(1年生)全然だめ。(足りないものは)精神力ですね。並木は高校生に負けていたし、たまたま相手がケガして棄権をした。高校生に2回投げられて、練習でやっていることも出せなかったし、気持ちも前に出てないし何一ついいことがなかった。この部分を彼が気づいてどう変化していくか見ていきたいと思うし、そのためのアドバイスはしていきたいと思います。(神鳥の優勝)勝って当たり前だと思っていた。国学院大の二見は去年の野々内が勝っていて神鳥はその野々内と練習で五分でやっているし勝って当たり前。いい自信にはなったと思う。ただ、ここで天狗ならず、調子に乗らず全日本ジュニアのタイトルを目指して頑張ってもらいたい。東京学生の出場は考える、東京学生の一週間後が全日本ジュニアなので、日程的にも厳しいかもしれない。特に90、81は人数が多い階級だから体への負担も考えつつ。去年は同じローテーションで全部勝ったのは小川だから、比較すると悩ましいところ。(夏の練習)毎年激しいトレーニングをしてる。足りないものが多すぎるから、今持っているものを武器にしていけばいい。足りないものを求めようとしたら、物足りないものが出来上がる。それぞれの得意技を柱にすることを考えて教えていきたい」

川田
「(ケガの具合は)試合へ影響はしたかもしれないが、それ以前に(全日本ジュニアの)出場権を決めていて気が抜けていた。ケガをする自分も悪いと思った。優勝していても、準優勝でも、どちらも満足はしていなかったと思う。負けて言うのも変だが、最後の本番に勝たなければ意味がない。(今大会に向けてどんな練習をしたか)特に何かをしたというわけではない。監督に日々言われていることを練習でやってきた。できるようになるまでずっと失敗しながらやっと少しはまともにできるようになった。(団体戦と個人戦の心境の差は)団体戦は良くて白星、最悪引き分けという気持ちがまだある。個人戦は負けたら終わりというのがあるが、指導1で勝ちな分、気持ちは楽だった(日本代表として国際大会に出場するが)国際大会はまだ数回しか出ていなくて、まだ緊張はあるがジュニアなので思い切りやって優勝を目指すが経験だと思っている。(夏に強化したいことは)メンタル面、組手を中心とする技のキレ。(秋までの目標は)個人は全日本学生、団体は体重別団体で優勝したいと思う」

神鳥
「最低条件で優勝を課題にしてきたので、とりあえずその課題はクリアできた。(今日に向けての練習)明大の柔道部は他の大学に比べて、人数が少ないので、自分と同じ階級の2人の先輩であったり、OBの実業団の方たちとの数少ない練習の中で、いかに試合を想定して、時間を見ながら、波を作って、攻撃して、それを続けて、とりあえず指導を取れるような山を取れるような練習をしたり、組み方もいろいろ練習してきた。誰かの対策というわけではないですけど、自分が一つステップアップするためにいろんなことをやってきました。この大会はあくまで全日本ジュニアに出れれば大丈夫だったので、準々決勝勝つまでは、自分が負けるリスクを完全に減らして、4分間フルに戦って勝ちにこだわってやった。準決勝、決勝では、相手のことも分かってるし、力のある選手ということを知っていたから、リスクを冒してでも、自分のやってきたことを出そうと思って、勝ち負けよりも試合内容にこだわってやりました。(思い描いたプラン通り出来たか)自分が思い描いていたのは、リードされないってこと。追いかける場面が出てきたらリスクも出てくるので、絶対に自分がリードまたはタイの状態で試合するのが試合展開での理想の形だった。それに関しては、今大会、一度もリードされなかったので、できたと思う。(個人戦としては、初めての大きな大会だったが)今大会は予選の一つなので、気負いはなかったけど、やっぱ第一シードで、優勝するつもりだったし、優勝するのは自分だというのを信じてやってきたので、ある意味いいプレッシャーがあった。いい緊張感を持って張り詰めた空気でやれた。(団体戦と個人戦の違い)団体戦だと指導3つまで引き分けなので、取りに来ない相手とか、逃げる相手とかいるんですけど、個人戦では、指導1つで負けになるので、攻撃を少しでもしてくるとスキも出てくるので、そういう面で戦いやすかった。(高校時代と大学の大会での違いは)あまり変わらなかった。マークされていたというのも、高校時代と変わらなかったので。(90キロ級優勝できた勝因は)リードされた試合展開を作らないこと。リードされなければ負けないので。あと、準決勝、決勝と大内刈りでポイントが取れたこと。大内刈りはずっと練習してた技なので、練習してた成果だと思う。(全日本で優勝する自信は)全日本ジュニアは優勝して当たり前と思っているので、それよりも個人の東京学生体重別と全日本学生。大学の大会で1年からタイトルを獲って、自分の名前をアピールしていきたい。(今後の目標は個人戦の優勝か)優勝大会でああいう悔しい負け方をしてしまったので、個人で一人でも上位入賞者とか優勝が出ると、明治は強いんだと他の大学にアピールできると思うので、個人の大会で出る大会は全て優勝して、尼崎の10月、11月の体重別団体のまずメンバーに入って貢献したい。(団体戦の時は階級が上の選手とあたることがあるが)自分より軽い相手、重い相手と自分のスタイルを曲げずに対応できる方法を練ってきたので、その面に関しては、団体は重量級に対する戦い方、同階級に対する戦い方が作れていたので、やりにくさはなかった。(自分の強みは)組手と足技。準決勝と決勝では相手の釣り手を全部封じることができたので、それを徹底することができると主導権を握れるので、徹底していこうと思う。さらに、技出しが遅いという課題も見つかったので、組み際の技とか組み方をもうワンパターンか考えて、いろいろ課題を克服していければと思う。(明大での4年間の目標)今年全日本ジュニアで優勝して、講道館杯で結果を残せば、シードに上がって、グランドスラムも見えてくると思う。来年の春の選抜体重別に出て、自分が卒業して、社会人一年目の年に東京五輪があるので、この4年間というのは、そのオリンピックに向けての準備期間。世界大会で勝っていかないといけないし、大事な4年間になってくるので、まずは、出る大会は絶対に負けないということとやっぱり外国人選手だとトリッキーなこともしてくるし、日本人選手にもいるので、そういうことに柔軟に対応していけるような選手になって、東京オリンピックで金メダルを獲る。あとは、団体優勝。来年からは、負けたくないので、必ず貢献して、団体優勝する」

羽田野
「決勝までいけたのに勝てなくて悔しい。最後で気持ちが折れて自分から場外に出てしまったので、気持ちの弱さが敗因。自分の弱いところが出てしまったので、もっと練習して全国大会では優勝目指せると思うので頑張ります。この前のオーストリアでの大会でも一回戦負けしていて、精神面が足りなかった。(今日までの練習)自分は組み手が遅いので、組み手を早くできるよう、組み手を重点的にやってきた。決勝では相手の方が上だった。(強みは)競り合い。(全日本ジュニアに向けて)組み手と技。背負い投げ。今回2位だったので全日本ジュニアでは優勝目指して頑張っていきたい」