丹羽の劇的弾で青学大下す 2年連続の総理大臣杯出場権獲得/関東大学トーナメント

2016.06.27
 激しいシーソーゲームを劇的な勝利で飾った。勝てば夏の総理大臣杯への出場が決まる関東2部所属・青学大との2回戦は、前半21分に木戸皓貴(文3=東福岡)が幸先よく先制点を挙げる。しかし、ペースをつかめ切れない明大は前半終了間際に同点を許すと、後半21分にもPKから失点。逆転される苦しい展開となったが、途中出場の櫻井敬基(政経3=藤枝東)のヘッドで2-2とし、最後は後半アディショナルタイムの丹羽詩温(文4=大阪桐蔭)のゴールで勝ち越し。3-2で激闘を制し、3回戦進出と2年連続の総理大臣杯出場権をもぎ取った。

 泥臭く伸ばした右足が、息詰まる熱戦に終止符を打った。2-2で迎えた後半アディショナルタイム。木戸が左サイド深いところでボールを持つと、丹羽はゴール前のいやらしい位置にすかさずポジショニング。「自分もシュートを決められる位置にいることが大切だと思った」(丹羽)。木戸は自らのシュートではなく、丹羽へのラストパスを選択。GKとDFの間に送り込まれたボールを、誰よりも早く丹羽がタッチした。4年目にしてアミノバイタルカップ初ゴール。リーグ戦でも得点ランキングトップを走る丹羽が、覚醒のシーズンを象徴する一発をねじ込んだ。
 

 「11」を背負う思いも特別だ。リーグ戦では「15」だった丹羽の今大会での背番号「11」は、ケガで離脱している岩田拓也(商4=FC東京U-18)がリーグ戦で背負っていた番号だ。8月の総理大臣杯には復帰が間に合うという岩田の思いも背負い「拓也を含め他の4年生のためにもそういう舞台を勝ち取ることができて良かった」と丹羽。大一番での奮起の大きな原動力は仲間への思いだった。

 宿敵撃破で8強入りだ。先制点を挙げながらも追い付かれ、逆転される苦しい展開。2年前の同大会2回戦、延長戦の末1-2で青学大に敗れた悪夢と重なるかのように試合が動いていく。再びジャイアントキリングが起こるかと会場はヒートアップしていくが、今年のチームは逆境にも慌てなかった。PKで逆転を許しても「残り20分あったので、普通にやれば点は取れると思っていた」とGK服部一輝主将(法4=札幌大谷)。勝利への執念がぶれることはなかった。

 ピタリの采配で流れを変えた。リードを許した場面で櫻井を投入し、3バックにシステムチェンジ。櫻井は前への積極的な仕掛けでためをつくり、攻撃の時間に厚みをもたらした。直後のCKからはヘディングで貴重な同点ゴールをゲット。同じく途中出場の土居柊太(政経3=浜松開誠館)も中盤の細かいボールタッチで足が止まった青学大DFを翻弄(ほんろう)。相手を引き付けてボールをさばき、丹羽の決勝ゴールの起点にもなった。栗田大輔監督は「選手たちが強くなっていることを証明できた」と高いチーム力が見えた逆転劇に手応えをのぞかせた。

 この劇的勝利でさらに弾みをつけたい。ベスト8進出で総理大臣杯出場権を得たが、直近の目標はアミノバイタルカップ連覇だ。3回戦の相手は同じ関東1部の日体大に決定。「1部のチームに勝って大臣杯に行くことで弾みがつく」と櫻井をはじめ、チームは気を引き締め直した。昨年王者でありながら連覇への挑戦者。戦いの中でさらなる成長を遂げていく。

★神川明彦前総監督も観戦★
 今日の試合は、神川明彦前明大総監督(現J3・グルージャ盛岡監督)も観戦した。今季の明大の公式戦を観戦するのは初めてだったという神川氏は「2年前は残念な結果だったので、しっかりとリベンジをしてくれたと思います。トーナメントは戦い方が難しいし、その中でも粘り強くやって次に勢いが出るような勝ち方でした。連覇目指して頑張ってもらいたいです」とコメント。試合後のミーティングでも選手たちに激励の言葉を送った。

[鈴木拓也]

試合後のコメント
栗田監督

「前半に小出にアクシデントが起こってしまい、リーグ戦では小出がいないということがなかったのでどうかなとは思いました。それでも鳥海が入って、しっかりとチームを鼓舞してというかリーグ戦の経験を生かしてやってくれたかなと思います。前半は相手の人数を掛けてくる攻撃に戸惑う部分もあったんですが、中で選手たちがよく話していまいしたし、ハーフタイムを挟んでその辺は修正できたので、試合を通して非常に成長できたと思います。あの時間帯に点が取れて勝てたということは、選手たちが強くなっていることを証明できたのかなと思います。何よりも夏の総理大臣杯を決めることができて良かったです。逆転されてもまだ時間があったので、3バックにして攻撃的に出てそれがハマって良かったなと思います。慌てるということはなくて、そこからまたやるべきことをはっきりとして、攻撃的に出ようと。途中で土居を入れて、中盤で受けていいリズムをつくってくれました。昨年優勝しているので、選手たちが連覇を目指そうということで一丸になっています。次からは一部との対戦になるので、優勝を目指して頑張りたいなと思います」

服部
「結果的には勝って良かったんですけど、内容の部分ではまだまだなところがあるので、次から一部の相手になるのでしっかりと明日から調整していきたいです。2失点ともセットプレー絡みで、今シーズンセットプレーからの失点がすごい多いので、一人一人マークの責任感っていう部分が足りていないのかなと思います。そういう部分を占めるのはキーパーである僕のやるべきことなので、もっとしっかり指示を出して守備を占めていきたいです。個々だけで見たら明治の方が強かったですし、ああいう試合展開になっても勝てたことは今年の明治を象徴しているんじゃないかと思います。全員が勝つということに向かってどん欲にできていましたし、失点した後に僕も言ったんですけど、残り20分あったので普通にやれば点は取れると思っていて焦りはなかったです。(2年連続の総理大臣杯出場が決まったが)大臣杯は準優勝で終わってしまったので優勝するためにも、まずは出場を決めなければならなかったのでまずは良かったのかなと思います」

丹羽
「(決勝点のシーンは)木戸がボールを持った時にあそこでシュートも打てたと思うんですけど、自分もシュートを決められるポジションにいることが大切だと思ったので、それが点につながったと思います。青学がしっかりと下からつないできてポゼッションをしてくるという話は試合前からしていて、自分たちのハイプレスがはまればペースをつかめると思っていました。でも前半は相手のボランチを捕まえきれずに、回されてしまったので前半は苦しい展開になってしまったと思います。(逆転されてからの焦りは)90分間で勝てればいいと思っていましたし、試合前からも点を取られても焦らないで自分たちのサッカーをやろうと話していたので最後まで諦めずにやれていたと思います。(背番号11はリーグ戦で岩田が付けていた番号だが)拓也(岩田)がケガをしてしまったので、この大会の前に栗田監督に自分を11番に選んでくれたというところです。拓也は総理大臣杯には間に合うと思いますし、拓也を含め他の4年生のためにもそういう舞台を勝ち取ることができて良かったと思います」

木戸
「今日は絶対に勝たなければいけないということはみんな分かっていたので、どんな勝ち方でも勝てたことは大きいです。勝ち方でも勝負強いところが出たので、守備陣も失点はしましたけどよく踏ん張ってくれましたし、自分たちも最後こん身の力を振り絞って決めることができました。前線のプレーヤーで絶対に一回チャンスが来るからそこを決めようと話をしていましたし、そこを決めることができたのは前期リーグでやってきたところが出たのかなと思います。(自身は1ゴール1アシストで勝利に大きく貢献したが)2年前も同じ相手で、自分はその経験をしていてトーナメントっていうのは何が起こるか分からないので最初は本当にチームに貢献しようというところから入りました。きついゲームになることは分かっていたので、早い時間帯から得点は狙っていましたし、そこで決められたことは大きかったです。アシストも本当はシュート打ちたかったんですけど、それよりも詩温君(丹羽)がいい形で入ってきていたので確実な方を選択しました。(総理大臣杯出場を決めたが)昨年の大臣杯でケガをして自分としては苦い大会になったからこそ、こうやって出場できることをかみしめて今度は絶対にチームを優勝させる選手になります。これから3回戦もあるので、自分が点を取ってチームを勝たせられるようにやっていきます」

櫻井
「(1点ビハインドの場面での投入となったが)出番が来たら流れを変えてやろうと思ってアップしていましたし、諒平君(道渕)からいいボールが来て点を取れてチームの勝利に貢献できたことがうれしいです。前にあまりボールが運べていなかったので、前にどんどん仕掛けてためをつくるということと、試合の流れを変えることを監督からは言われました。セットプレーからは点を取ることはできましたが、流れの中からゴール、アシストができるチャンスがあったのでそこを生かしきれなかったことが今後の課題かなと思います。(総理大臣杯出場が決まったが)大臣杯に出ることはチームとしても大切な通過点という風になるので、まずは4冠の第一歩として大臣杯の出場権を掴めたことはうれしいです。次からは関東1部との対戦になりますし、そこに勝って大臣杯に行くことで弾みもつくと思うのでより一層引き締めてやっていきたいです」