下克上とはならず 2年連続の総合8位/東日本学生リーグ戦
見せた理想の形
軽量級の支柱が、一人気を吐いた。チームカウント1―6で敗れた拓大戦では、副将を務める61㎏級の喜多雄介(政経4=三井)が5―2で唯一の白星。痛めていた足をテーピングで固定し、満身創痍(まんしんそうい)の中で6分間を戦い抜いた。
それはチームが目指すべき勝ち方だった。安西信昌コーチが上位討ちのカギに挙げる「自分の勝ち方をどんな相手にでもだせるか」。喜多は第1ピリオドの相手の攻撃を「しっかり我慢することができた」と耐えると、第2ピリオドでは得意の股裂きでポイントを奪取し勝ち越した。試合の中の攻防を見極め、攻めどころで理想の技を展開する。軽量級をけん引する副将が、それを自ら体現してみせた。
強く、優しく、信頼されるキャプテンだ。試合後、大山博貴主将(営4=仙台育英)は「4年生に付いてきてくれてありがとう」と応援で枯らした声で話した。この言葉こそが今年のチームを象徴している。4年生が率先して練習に取り組み、試合中のサポートも怠らない。そうした最上級生の姿を見て、後輩たちもそれに応えようとする。ルーキーながら5戦3勝と健闘した二ノ宮寛斗(営1=岐南工)は「先輩方が引っ張っていってくれたから、自分が思い切ってやることができた」と話した。信頼できる上がいて、下も力を発揮する。全員が同じ目標を定めるこの団体戦で、チームは確実に一つになった。
[小田切健太郎]
試合後のコメント
中出幹児監督
「去年とは順位が一緒だけど、だんだん上位チームに近づいてきている。今年は特に大山を中心に4年生が頑張ってくれた。主将のやるぞという気持ち。それが個人でやる試合だろうが、チームとしてやる意欲につながった。来年以降にも期待したい」
多賀恒雄副部長
「実力差はまだ上とはあるっていうこと。喜多は相手がグレコの選手だから、勝って当然かな。ああいう落ち着いた試合をすれば、もっと上を目指せる選手なんだよ。(チームとして昨年との違いは)やっぱり上位チームに対する試合内容が全然違ったよ。去年は全く勝つ気がしなかったけれど、今年はあわよくばって期待が持てたからね。国士大を追いつめたし専大も可能性あったし。今年は4年生がしっかりしていて、そこに若い二ノ宮や奥田が加わって、総力戦で何とかここまでやれたかなって感じ。次の新人戦は奥田、平嶋、永井、二ノ宮の4人には上位に入ってもらわなきゃいけない。二ノ宮はルーキーだけどインカレでもうまくいけばファイナリストになれるよ」
安西コーチ
「実力を出せた選手もいれば、ケガで出せなかった選手もいた。結果として驚く8位でもないし、悲しむ8位でもないような感覚。一人一人がそれぞれの目標を持ってやってくれているので、前よりかは自分が勝てるんじゃないかなって意識は出てきたと思う。試合に向けて尻込みしないでいく姿勢だったりね。練習に関して言えば、自分のできることとできないことを見極めてやって欲しい。勝つために何が必要なのか、勝てるレスリングを展開するために何が必要なのかを考えさせていきたい」
大山主将
「目標の7位を達成することができなかったので、残念だった。みんなが勝ちたいという思いが本当に強くて、メンバーも本気で考えたし、練習からの意識も高かった。上位校とは3―4、2―5という試合があって、射程圏内ぐらいの相手になってきていると感じた。あともう一つ勝ち切ることはできなかったけれど。東洋大戦の時に言ったけれど、みんなが勝ちたいと思っているからこそそういう粘った試合ができたと思う。今日の拓大戦、個人としては情けなかった。正直何もできなかった。(試合後、チームにかけた言葉は)みんな一丸となってくれてありがとうということ。東洋大戦ではあの流れの中で海人(奥田)とニノ(二ノ宮)が勝ってくれて、専大でも平嶋とニノが勝ってくれたけれど、出た4年生が全員負けてしまったと。そんな4年生に付いてきてくれてありがとう、という感謝の気持ちを伝えた。(その中で今年の4年生の色は)なんだかんだ言って、個人個人を考えるというより部の事を考えてくれていた。旭昇とか主務でやってくれているし、悟士はあまり自分に自信はないけれどその分たくさんサポートをやってくれたし、石井は口には出さないけれど一番練習していたし、喜多は一人で居残りもするし研究もするし、寺田はレスリングが大好きだから勝つことをずっと考えているし。そうなると俺はキャプテンだからもちろん頑張らなければいけないし。何だかんだ、一人一人の自分がやるべきポジションを分かっていたんじゃないかなって今考えるに思う。来年、僕たちが成し遂げることができなかった順位を上げるということを達成して欲しい。来年は東洋大ではなくて青学大と大変にはなると思うけれど、来年も全然上を目指すことができると思う。一つでも多く順位を上げるようにがんばって欲しい」
喜多
「目標が7位だったので8位は悔しい。今日の自分はいつもと違ってしっかり我慢することができて、最後に点数を取ることができた。テーピングもがっちり止めて痛みもあまりなかったので、しっかり動けて試合をすることができた。副将としては情けない試合が多くて納得はできていないけれど、チームのために頑張れたことはよかったと思う。チームとしての盛り上がりは強くて、大山と寺田が引っ張ってくれた。4年生みんなでまとまることができた。個人としてインカレに向けて一回ケガを直して、競技力をアップさせて3位以内を目指したい。そのためにディフェンスを強化したい」
寺田靖也(農4=八千代松陰)
「善戦したけれど上を崩せなかったという悔しい気持ち。自分自身の結果としては情けないの一言。弱い奴に勝つのは当たり前で強い奴に勝たなければいけないポジションになっていたにも関わらず、そこで勝ち切れなかったというのは自分の弱さだと思う。そのせいでチームに黒星を与えてしまったので、総じて情けない結果に終わってしまった。今日も相手がでかいのは分かっていたけれど、持ち上げられて足を決められた。馬力の差があるのはわかっていたのに、うまく動けなかった自分の作戦ミス。この大会では後輩が勝ってくれたり、いい試合をしてくれたのは大きな収穫。強さがわかったし助けられた部分があった。この元気をなくさないで、来年を2位リーグに入って欲しいと思う。個人として、今年のインカレはフリーだけではなくてグレコでも表彰台を狙いたい。2週間後の明治杯もグレコで登録するという大きな決断をした。最後の年なので、レスリングを通して楽しみたい。そのためにグランドの弱さを改善していきたい」
二ノ宮
「東洋大戦に勝って8位以内を決めることができた、というのは良かったけれど、そこからどこかに勝って7位以上になる目標を達成できなかったのが悔しい。個人として、ゆっくりな動きをする相手に対しては自分の動きができたけれど、一昨日と今日やった日本トップ選手のような選手はパワー、スピード、技術と全てが上だった。何もかも負けていた。その差を埋めるには、まずは力をつけること。パワーをつけて、動きの面の粗さもなくすこと。体つくりを当面の目標としてやっていきたい。(初めてのリーグ戦を振り返って)監督や先輩方にも自分が勝負だぞ、という風に言われていて、東洋大戦の時はその役割を果たせたと思うけれど、それは先輩方が引っ張っていってくれたから自分が思い切ってやることができた。練習中、お2人は自分がスパーリングに入っていない時とかに見ていると、常に一生懸命やっていて、だからこそこういうところで結果が残せるんだなと思った。これから明治杯、アジアジュニア、新人戦と試合が続くけれど、どんな大会でも出場するからには優勝するつもりで臨みたい」
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