(3)「『前へ』を継承する」 FWリーダー近藤雅喜・古川満
第3回は、FWリーダー近藤雅喜(商4=東海大仰星)と古川満(商3=桐蔭学園)。「重戦車明治」を勝利に導く2人に、今の気持ちを伺った。
<近藤>
――FWリーダーに選ばれた時の感想は
明治のラグビーの中でFWといえば深い伝統と歴史があって、その中で今年のチームをFWの先頭に立って引っ張っていけるということは責任が大きいなと。それが率直な思いです。不安はもちろんありましたが、楽しみな気持ちもどちらもあります。
――「FWの明治」という言葉は意識しますか
もちろんです。ファンの方々は明治がスクラムで押されている姿を見たくないと思います。FWで負ける明治なんて誰も想像したくないはず。部員全員が「FWの明治」という言葉を意識しているだろうと思います。
――実際に新チームが始動してからの二カ月間はいかがでしたか
みんな相当ハードワークしています。身体もサイズアップして、2月から良い二ヵ月を過ごしてきました。基本的なスキルを中心にしてきたので、戦術はまだまだです。でも充実した二ヵ月だと部員それぞれが思っているはずです。ウエイトが多くて、とにかく筋肉量が増えました。多い人だと5、6㎏増えたのではないかと思います。
結構いろんなメディアやファンの人が、今年のFWはごそっと変わることを指摘していますが、去年は去年。今年は桶谷(宗汰主将・営4=常翔学園)を先頭に、もう去年の4年生はいないわけだから、そこのポジションに入る選手が競争していくと思います。全員がレベルアップするだけです。今年のチームとして強くなっていきたいです。
――今のFWの状況を教えてください
ここから春シーズンが開幕して試合が入ってきて、ABCそれぞれのチームの試合が増えます。チームとしてやるべきことを、AができていてもB、Cができていないとか、CができていてもA、Bができていないとか去年はムラが多くて。やっぱり全員が明治大学ラグビー部として戦っていくのだから、FWとしてはすべての試合でFWがやるべき仕事を発揮していきたいです。全部うまくはいかないけど、試合のポイントを見つけて成長していきたいです。
――理想のリーダー像はありますか
自分が高校一年生の時の主将、林大成さん(現キヤノンイーグルス)のことを思い出しました。チームの目指した方向性を一人で体現できる人でした。そんなに多くを語る人ではなかったけど、やっぱり部員が100人くらいいる中で試合に出られる人も出られない人もいろんな立場の部員に話してチームの道筋を自分で上手く作っていました。中学ラグビーから高校ラグビーに変わった時、その姿を見ていて、すごいなと。あの人が下を向いているところを見たことがないです。リーダーが下を向いていたらいけない。一つ一つの行動をチームのみんなが見ています。そういうのは大切だなと思いました。この人についていこうというチームは強いです。
――桶谷主将もFWですが、近藤選手ならではの強みは
本人が一番分かっていると思いますが桶谷は話すのがそんなに得意ではないです。やっぱり桶谷一人でFW全員に目が届くかと言ったら違うと思います。FWのプレーをかみ砕いていってもいろいろあるので、桶谷一人では見られない部分を補っていきたいです。そういうところは、僕や真一(田中・法4=国学院久我山)、満も含めて、桶谷にない部分を僕らが補ってさらに桶谷がチームを上手く引っ張っていけるようにと心掛けています。
――近藤選手の今年の目標は「全てのことで責任を全うする」です
今まで3年間目標をあまり変えてこなかったのに今年変えたのは、「MUST WIN」という目標ができて、勝つという目標ができたことが大きいです。勝つということの前に絶対責任があると思います。ラグビーで言っても一つ一つのプレーに責任があります。一人の人として私生活を送る中で何かするときにも責任があります。そこを100%全うできるかと言ったら僕も全然できるわけではないけど、少しでもできたらなと思います。
――今の時点で一番成長したところは
プレーどうこうよりも、ラグビーに対する姿勢が変わりました。昨年は試合に出られない時期も出られる時期もあったので。いろんな時期を過ごしてきていろんな立場を知りました。プレーヤーとして負の部分に陥った時もあります。マイナスに考えてばっかりのときもありました。けど、4年生になってほんの一部でも余裕が持てたかなと。それが一番の成長かな。それは自分にしかわからないことだけど、評価するのは他人です。だから、これから試合が始まっていく中でそういうことが少しでもわかってもらえたらなと思います。
――近藤選手にとっての「MUST WIN」とは
自分への「MUST WIN」は、今年はラスト1年を1日1日自分に勝つ、やり抜くということです。去年、春は試合に多く出て、秋は最初だけで終盤にかけて落ちていってしまったので。「MUST WIN」な相手は、個人では早稲田の桑野(詠真)です。大学1年生のときにU19日本代表で一緒になってから、ずっと意識しています。同じポジションですし、プライベートでも仲が良いので。大学では、東海大です。東海大の付属の出身なので。相手のメンバー表を見ればいつでも東海大仰星という文字がズラーっと並びます。やっぱり負けたくないです。留学生がいようがいまいが、絶対に勝たないといけない相手です。そして、大学選手権優勝をします。それしかないです。
――ありがとうございました
◆近藤雅喜(こんどう・まさき) 商4 東海大仰星高出 188㎝・106㎏
FWリーダー。昨年はフランカーとして多くの試合に出場。今年はロックとしての活躍が期待される。大学1年次に前十字じん帯切断のため戦線を離脱し、2年次に復帰後も試合の感覚をつかめず苦しんだものの「自分にできることを」と努力を積み重ね、現在の逞しい肉体を手に入れた。
<古川>
――FWリーダーになった感想は
FWリーダーは指名という形で就任しました。去年はまだ2年生ということで下級生という意識でやっていましたが、今年は上級生にもなってさらにリーダーという役職も与えてもらったので、そういうところで自分が声で引っ張るのもそうですがプレーでもっと引っ張らないといけないなという意識でずっとここ2、3か月やっています。
――今シーズンのスローガンは「MUST WIN」です
4年生が決めたスローガンで、しっかり下級生もそれに向かってやっていかないといけない中で、今は相手に勝つというよりも自分自身とか同じポジションを争う仲間内に勝つというのにフォーカスしています。練習の段階からお互いで競争しあって意識しているのかなと思います。
――今年1年どのようにプレーしていきたいですか
4年生が掲げた「MUST WIN」という目標に自分たちは本当に付いていくだけです。4年生だけこの目標に向かって行って1、2、3年生が向かわなかったらダメだと思います。3年生でリーダーとして選んでもらったので梶村(祐介・政経3=報徳学園)と一緒に下から意識高く4年生に付いていけるように、そういうつなぎ役みたいなのを今年は担っているのかなと思うので、上も下も見ながらやっていきたいなと思います。
――ご自身のプレースタイルは
ボールを持ったら絶対ゲインを切らなければいけないといつも思っているし、よく本当に明治らしいFWだねと高校の監督とかに言われるのですが、そう言われるのは本当にありがたいと思います。これからも力強いプレーを心がけていきたいなと思っています。強みはブレイクダウンかなと。どちらかというとアタックのブレイクダウン、ボールを供給するブレイクダウンの方が自分は得意で、ディフェンスよりかはアタックでボールを継続するブレイクダウンの方が得意なのかなと思っています。
――今後の古川選手のポジションに関してはいかがですか
チームの状況に応じてたくさんポジションができる方がいいと思いますし、そこはあまりロックとかフランカーとか固執しないでその時のチームの状況に合わせて、高いレベルでどっちもできるように自分の中でしていきたいなと思っています。
――今までで最も成長した点は
1年生の時は何もわからずにただ紫紺を着て勝利が決まってから出させてもらうという感じでしたが、2年生になって勝利が決まってもないまだどうなるかわからない後半の時間帯に入れてもらえるようになったことで自分の自信になりました。ケガがあったからとはいえ自分にチャンスが回ってきて選手権ずっとフランカーとして出場できたというのも本当に自分にとって自信にもなって成長したのかなというふうに思います。また2年生になって自分で考えて判断をできるようにもなったし、先輩たちとも試合中コミュニケーションを取るようになったので、会話ができるようになったという精神面での成長が結構大きいのかなとも思います。
――最後に意気込みをお願いします
ずっと勝ち続けるというのは本当に難しいことだと思うし、うまくいかなくなった時が大事だと思うので、桶谷さん(宗汰主将・営4=常翔学園)たちを助けられるようにしっかりやっていきたいです。去年は春あまり勝てなかったのですが、4年生たちは練習を信じてずっときついことを続けていました。春勝てなかったとしても夏もずっと継続して、対抗戦ではすごく良い結果になったと思うので、今年も春もし勝てなくても自分たちの目標をぶらさずにコーチ陣を信頼して、リーダー陣中心となってやっていきたいと思います。そして僕たちがやらないと下も付いてこないと思うので、自分たちから率先してしっかりやっていきたいなと思います。
――ありがとうございました
◆古川満(ふるかわ・みつる)商3 桐蔭学園高出 186cm・105kg
FWリーダー。昨季はU-20日本代表に選出され、中心選手として数々の遠征を経験した。持ち前の冷静さと力強いプレーで、1年時から紫紺を着用。「明治らしいFW」とも言われるLOは上級生になった今、背中で見せる男になるべくさらなるレベルアップを目指す。
[江原璃那子・石塚真維]
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