
(5)「明治に入って成長できた。だから恩返しがしたい」/室屋3年間の軌跡
[1年次(2013年度)]
日本高校選抜にも名を連ねた室屋は期待のルーキーとして明大サッカー部に入部。リーグ戦第7節・早大戦の先発フル出場でデビューを飾るも、1-2で競り負けるほろ苦デビューとなった。
室屋「初めてのリーグ戦出場で個人としてもっとできることがあると感じ、ほろ苦いデビュー戦になってしまいました。前半は自分の持ち味である攻撃参加を積極的にできたが、後半は体力がなくできなかったのが残念です。また最後のクロスなどの細かいとこの精度が悪かったので練習から意識して直していきたいです」
デビュー戦を厳しい表情で振り返った。
後半ロスタイムに痛恨の失点 早大に敗北を喫する/関東大学1部リーグ戦
――新人賞受賞
その後もコンスタントに出場を続けた室屋はリーグ戦で新人賞を受賞。その実力を確かな結果で示してみせ、飛躍の2年目へ向け充実のシーズン1年目を終えた。
和泉がベストイレブン入り、室屋が新人賞受賞を果たす/リーグ戦閉会式
[2年次(2014年度)]
この試合ベストヒーロー賞を受賞した室屋は、持ち味のスピードを生かした攻撃参加で早大ディフェンスを翻弄(ほんろう)。前後半1回ずつPKを獲得する仕掛けを披露し、決勝点をアシストした。
室屋「その前のシーンで裏に抜け出していて、シュートを打つ場面があったので、そこのプレーをもっと追求しないと。あの場面で、ずっとクロスの練習を今年はやってきたので、それが試合に出て良かったです。あれは感覚です。一瞬ぼわっと味方が見えたような気がしたので、クロス入れました。適当じゃないけど、直感でやりました」
練習どおり、そして室屋独自の「感覚」でのアシストだった。
――U21日本代表選出。アジア大会出場
8月5日には2016年リオ五輪を目指すU21日本代表に選出された。2014年に手倉森誠氏がU21日本代表の監督に就任してから初の大学生の召集となった。
室屋がアジア大会へ向け持ち味発揮/強化試合(U21日本代表対全日本大学選抜)
9月14日から10月2日に行われた第17回アジア競技大会にも唯一の大学生として出場。1試合目のクウェート戦でアシストを記録し、5試合全てにフル出場を果たすなど存在感を示した。日本代表のベスト8にも貢献し、圧倒的アウェーでの戦いに大会独特の雰囲気も味わった。
[3年次(2015年度)]
4月21日付けでJ1・FC東京の特別指定選手として日本サッカー協会に承認された。背番号は36番で、明大にいながらもFC東京の試合に出場できるようになった。室屋は明大でのリーグ戦にも出場しながら、平日にはFC東京の練習にも参加。厳しい環境でさらなるレベルアップを目指した。
室屋がFC東京の特別指定選手に!
――プロの舞台で磨き上げたプレーの質
7月のユニバーシアードでの日本代表の銅メダル獲得に貢献。8月の総理大臣杯準優勝を経て、残りの夏休みの1ヶ月間FC東京でのプレーに専念した。
栗田大輔監督「8月に特別指定で行ってFC東京のマッシモ前監督(マッシモ・フィッカデンティ)がいたころに、とにかく24時間100%FC東京に挑戦させてみて、そこでどれだけの評価を貰えるのかというのが一つあったんですね。そこで本人もだいぶ苦労をして、また学校も始まったので練習にも参加できないという状況にも陥ってくるので、向こうで試合の契機がないのであれば10月の頭に関東大学リーグにもう一回戻そうと。実は昨年の関東大学リーグは後期はもう室屋なしで行くぞと自分には言ってあったんですけれども、そこはもうミーティングで修正しまして室屋戻ってくるぞということで10月の頭から戻ってきてそこで彼が結果を残したので、それが一番評価につながったと思います」
公式戦出場こそなかったが、ハイレベルな環境で室屋は確かな進化を遂げる。リーグ戦第17節法大戦で復帰し「違い」を見せつけた。前半35分に鋭いドリブルから右サイドを突破し、精度の高いクロスボールで先制点をアシスト。守備でも磨きをかけた1対1の対人で圧倒的な強さを誇った。
室屋「試合に出ることも自分には必要なことだと思いましたし、監督とFC東京の人たちと話し合ってこっちに出ることになりました。試合に飢えていた、出たいという気持ちはありました。でも向こうでしっかりと練習しているし、すごい自分が成長できたのでそういうのをここでしっかりと出せればいいなと思います」
法大に4―1快勝! 次節首位国士大戦に勢いつける/関東大学1部リーグ戦
――獅子奮迅の3年目 初のベストイレブン受賞
2年連続の2位に終わったリーグ戦では室屋にとっては初となるベストイレブンを受賞。また代表での活躍が評価され、2年連続となる特別賞も受賞した。
2年連続2位で約7カ月間のリーグ戦終える/関東大学リーグ戦閉会式
――「明治大学2番室屋成」ラストゲーム
室屋の明大でのラストゲームはインカレ準決勝関西学大戦。序盤に2失点を喫するも、室屋の得点を皮切りに同点に追いつく。しかし後半立ち上がりに勝ち越されると、試合終了間際にも失点し2-4での敗戦となった。直前のU23日本代表中東遠征から帰国してわずか2日。疲労があり、時差ボケも残る。それでも室屋はピッチに立ち、魂のゴールを挙げ、90分間その足を止めることはなかった。
室屋「個人として点を取れたことは良かったけど、チームを勝たせることができなかった悔しさの方が大きいです。4年生はレベルの高い選手がたくさんいて、練習から本当にレベルが高かったし、プライベートでもみんないい人で本当に尊敬できる先輩ばかりだったので寂しいという気持ちが一番大きいです。4年生は練習に取り組む姿勢がすごくて、本当に意識が高かった。今年は色んな環境でサッカーができて、本当に充実した1年になりました」
関西学大に2-4で敗北 日本一の夢果たせずシーズン終える/全日本大学選手権
――現在地
そして室屋は2016シーズンからFC東京のユニホームに袖を通す。朝練、当番、連帯責任。プロでは味わえない経験をした「大学生Jリーガー」だからこその強さがある。
室屋「朝の6時から練習があって、対人練習をやります。それは他の環境では味わえないことだったと思います。明治でやっている1対1や個人戦術は先日の最終予選でも生きたかなと思いますし、それが僕の今のストロングポイントになっていると思います。大学のこの3年間では、プロサッカー選手とは違い1年生からサッカーだけではなくて、ピッチ外での仕事だったり当番、上下関係がしっかりとある部活だったので私生活の部分での成長があったと思います。明治に入って成長することができました。だから明治に恩返しがしたいんです」
栗田監督「確か1年生の早稲田戦がデビュー戦だったかと思うんですけど、そこから順調に本当に頑張ってくれて、それぞれの場所で代表に選ばれたりこないだもユニバーシアードの光州大会でも活躍したりと、一歩一歩慢心することなく成長してくれているんだなというふうに感じています。やっぱり頭が大学生だからとかではなくて全て世界から逆算するとか、自信を持って入っていく、たとえばこの時期にオリンピックとか過去は忘れてですね。代表に選ばれるんだとか、この時期にフル代表に選ばれるんだとか、たとえば27歳で海外に行きたいんだったらそこから逆算してしっかりと入っていくことが大事かなと、そうしたら周りの質も高いしポテンシャルがある選手なので、そこの意識の問題だけだと思います」
明治での3年間があったから、今の室屋成がいる――。
[鈴木拓也]
次回はAFCU23選手権2016ノックアウトステージ準々決勝イラン戦を振り返ります。
更新は明日2月13日です。お楽しみに!
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