有終の美 西野 V4

 学生女王の名を守り続けた。西野友毬(政経4=武蔵野)が前人未到のインカレ4連覇を果たした。SP(ショートプログラム)は首位と0.42点差の2位も、FS(フリースケーティング)で逆転。166.16点の自身最高得点で偉業を成し遂げた。

ラスト演技
 その一挙手一投足に、会場にいた全ての人の視線が向けられていた。今大会で競技を引退する西野にとってフリーは最後の演技。大歓声に支えられながら、集大成の演技は始まった。冒頭のトリプルルッツ―ダブルトーループのコンビネーションジャンプを成功させると勢いに乗り、次々とジャンプを決める。2本目のトリプルルッツは1回転になったが、ミスはこれだけ。ステップ、スピンでも観客を魅了。持ち味である表現力で一気に西野の世界へ引き込んだ。見せ場のスパイラルでは笑顔も見せ、西野自身も演技を楽しむ。圧巻の演技が終わると同時に観客はスタンディングオベーション。「友毬ちゃんありがとう」の歓声はやむことがなかった。演技を終えた西野は感慨深そうにリンクの中心を一周してから深々とお辞儀をした。逆転での4連覇。インカレは西野のためにあるのか、というほど劇的な幕切れに誰もが拍手を送るしかなかった。

名前刻んだ
 「やっぱり4連覇を意識した」。ショートでジャンプのミスが出て2位に終わった後、西野は4連覇へのプレッシャーを口にした。意識しないようにすればするほど、自分を追い込む。心と体がうまく一致しなかった。それでも「最後だから笑顔で楽しく」やり切ることに徹し、自分らしい演技を貫いた。「普通の試合と特別な試合、半々くらい」と臨んだ最後の大会だったが、やはり演技が終わると涙があふれた。「歓声がすごくて、それがありがたかったのと、寂しいのとこれで終わりなんだと思う気持ち」と感情が押さえ切れなかった。インカレ4連覇。破られることのない記録を刻むとともに「西野友毬」というスケーターは多くの人の心に、確かに刻まれた。
[記事・石渡遼 レイアウト・橋本杏菜]