力足りずインカレ8位 表彰台は西岡のみ/全日本大学対抗選手権

 インカレは各階級のスナッチ順位、ジャーク順位、そして総合順位のそれぞれ1~8位までに点数が与えられ(1位8点、2位7点……8位1点)、それがチームの得点となる。各大学8人が出場し、その合計点を競う。
 総力を挙げて臨んだインカレは8位に終わった。西岡翔吾主将(政経4=洲本実)が94㎏級でチーム最高の2位。しかし、チームは目標としていた上位入賞を果たせず。昨年から順位を一つ下げ、総合8位で1部残留となった。

◆12・18~20 第61回全日本大学対抗選手権(上尾市スポーツ総合センター)
▼56kg級
 6位 後藤
▼62kg級
 7位 永原
 8位 中野景
▼77㎏級
 8位 小川
吉川 記録なし
▼94㎏級
 2位 西岡
 5位 松本
▼+105㎏級
 上野 記録なし
▼総合
 8位 明大

[1日目]
 明大のトップバッターは56㎏級の後藤将(政経2=埼玉県立川口)。スナッチ競技のトップバッターも務め、スナッチで90㎏、ジャークで自己ベストを2㎏更新する124㎏を挙げトータル214㎏で6位となった。
 トップバッターに緊張もあったというが「思ったよりも何倍も軽かったのでいつも通りの試技ができた」。スナッチ1本目の87㎏を落ち着いて挙げ切ると、2本目の90㎏も成功。目標としていた3本目の93㎏は後ろに落とし失敗となったが、残るジャークは3本全て成功させた。ジャークの3本目では124㎏に成功し、自己ベストを2㎏更新。トップバッターとして「いいスタートを切れた」と、続く階級へ流れをもたらした。
 他大の選手が失敗していく中、自分の試技を貫き6本中5本成功と高い成功率を見せた。東日本インカレでは記録なしに終わっていたが「自分に勝つつもりで頑張ってきた。インカレに懸けてきた思いが少しは実った」と笑顔で振り返った。

 62㎏級に出場した永原祐志(法3=熊本西)はスナッチ107㎏、ジャーク134㎏で7位につけた。得意とするのはスナッチ。しかし1本目の105㎏を難なく成功させるも、2本目は「加減してしまった」と取れるはずの107㎏を落とした。3本目に再び107㎏を挙げると成功するも2本目を逃したことが結果に響き、高得点に結びつかなかった。一方で、不得意のジャークでは点数が取れないと計算していた。しかし3本全て成功させ、自己ベストにあと1㎏と迫った。3本目の134㎏を成功させるとめずらしくガッツポーズ。ジャークでの得点獲得には本人も驚きを隠せなかったようで「いい意味でみんなの期待を裏切る結果。うれしかった」と笑い交じりに試技を振り返った。油を控えた食事に、飲料は水のみというハードな減量を乗り越え力を付けた。「次は4月の選抜大会。みんなを感動させるくらいの試合がしたい」。インカレ終了とともに世代交代。最上級生の一人としてチームを先導しながら、自身の結果も求められる。最後のインカレに向けて新たな一年が始まった。

 中野景介(営2=須磨友が丘)は得意のスナッチで110㎏を挙げ4位、ジャークでは130㎏で10位と得点は獲得できなかったものの、トータル240㎏で合計6点を稼いだ。「まずはトータル240㎏を挙げることが目標だった。うれしい」と全日本選手権の規定記録も破り納得の結果を残した。試合は苦手と今まではあまり高い成功率を収められていなかった中野景。5本成功、中でも練習ベストの112㎏に挑戦せず着実に得点を重ねたスナッチの3本成功は「自信になった」と初インカレにも臆せず手ごたえをつかんだ。軽量級はぎりぎりまで調子を見て選手を決めることもあり、激しい部内での競争を制して得た出場権。他大のライバルを倒すと意気込んでいたが、相手の成長率を超すことはできなかった。今大会62㎏級には2年生が多く「またライバルが増えた」と楽しみな様子。「次は超せるように」とさらなる強化に臨む。

[2日目]
 小川翔大(政経4=能代工)はスナッチ118㎏、ジャーク153㎏でトータル8位。スナッチでは得点を取ることができなかった。9月の東日本個人選手権では69㎏級で1位に輝いた小川。今大会は、実力者がひしめく69㎏級をあえて避け77㎏級に臨んだ。スナッチ118㎏を挙げたが、8位の選手と1㎏差で得点は0。「115㎏からスタートすれば、得点が変わったかな」。110㎏からスタートしたのには訳がある。試合直前に手のマメが破れ、握りが甘くなった。「得点することが大事」とチームを第一に考えた小川は万全を期し1本目の重量を下げた。自分の記録より確実に得点することを優先したことが、悪く出た。
 思わぬケガに見舞われながらも、置かれた状況で力を出し切った。スナッチ、ジャーク6本全ての成功は、ウエイト人生7年目にして2度目だ。満足の結果ではなかったが、大学4年間の成長は確かに感じた。ウエイト人生に終止符を打つジャーク3本目。153㎏をきっちりと挙げた。後輩に伝えたいことは「強くなってほしい。現状こんな感じで、そこまで上位に食い込む選手がいない。悔いを残さないように」。後輩から面倒見がいいと評判の小川。人生最後の大会を終え、真剣なまなざしで後輩に託す思いを口にした。

 吉川琢磨(政経4=明石南)はスナッチ0㎏、ジャーク157㎏で記録なしに終わった。「何で取れなかったのかよく分からない。今考えると左足が動いていなかった」と練習では余裕で取れていたというスナッチ140㎏を3本連続で失敗。3本目を落とすとプラット上で突っ伏し悔しさをあらわにした。スタート重量の140㎏は大会新記録、1本目を落としたことで目標としていた日本記録を狙うこともできなくなった。ジャークでは途中から「いきなり足が痛み出した」と3本目ではプラットに向かうにも足を引いている状態に。157㎏という記録には「足が痛いなりにできた」というものの満足のいく結果とはならなかった。3本取れば優勝、6本取ればトータルでの大学新記録とスナッチでの日本新記録を出せるはずだった今大会。「終わった感じがしない」と悔しさが募る最終戦となった。ひとまず引退となるが今後も明大に関わっていく予定だ。後輩に強くなってもらうため、そして「自分のような思いをさせないように」。ケガに苦しめられ続けた吉川が最後の試合を終えた。

 94㎏級では西岡翔吾主将(政経4=洲本実)がチーム最高となる2位入賞を果たした。スナッチ138㎏で3位、ジャーク178㎏で1位と、計21点を稼ぎチームに大きく貢献した。
 大会前から調子が悪かったという西岡。それでも主将として「今できる最高の仕事をしよう」と覚悟を持ってプラットへ立った。調子の悪さを感じさせない安定した試技を見せ、スナッチは3本目の138㎏を挙げ切ると小さくガッツポーズ。続くジャークでは3本目で自己ベスト+2㎏となる178㎏に挑戦。クリーンも気合で立ち、最後の刺しもよろめきながらも耐えてみせた。「今までやってきた練習を信じてやった結果」と6本全てを成功させてインカレを終えた。
 それでも三度目の正直とはならなかった。昨年度のインカレの85㎏から一つ階級を上げ、4月から94㎏級で戦ってきた。4月の全日本学生選抜大会で2位入賞を果たしたが、1位の赤松(法大)には30㎏以上もの差をつけられていた。その後は「勝ちたい」一心で過酷な練習を積み重ねると、記録は順調に伸びていった。7月の東日本インカレでは9㎏差まで詰め寄った。しかし後期に入ると脚や腰をケガするアクシデントに見舞われ、思うような練習ができず。今回も「全部力出し切ったけどかなわなかった」。それでも後悔なく終えた西岡はすがすがしい表情を浮かべていた。
 今年だけでスナッチで13㎏、ジャークで11㎏もの記録を伸ばした西岡。誰よりも練習するその姿勢と、誰よりも強い「勝ちたい」という気持ちで1年間部を引っ張ってきた。「後輩たちの中には才能あるやつもいっぱいおるし、やる気があるやつもおる。あとはやるだけなので、後悔せんために明日からでもやってほしい」。西岡の思いは後輩たちに託された。

 下級生が期待に応えた。同じく94㎏級に出場した松本康貴(政経2=常翔学園)。スナッチ6位で3点、ジャーク4位で5点、トータル5位で4点と計12点を稼ぎ、チームに大きく貢献した。反省点はスナッチ1本目を落としたこと。「成功していたらもっと勝負ができた」。一方でジャークでは「かなり満足」と手応えを感じた。3本目の169㎏を挙げ自己ベストを2㎏更新。同じ階級の西岡に練習を見てもらうことも多い。今大会ジャーク1位の西岡の背中を追い掛け、全国の舞台でジャーク4位という結果にたどり着いた。次の目標は「4月の選抜大会で3位以内に入ること。遠慮せずにがつがつと」。新たなスタートに「2年生主体とも言えるように頑張っていきたい」と意気込んだ。

[3日目]
 最終日は+105㎏級に上野祐脩(政経2=東京学園)が出場。スナッチ140㎏を挙げたものの2本目で腰を痛めジャークを棄権、記録なしに終わった。「1本目がすごく軽くていける日だと思った」と手応えをつかんだが「2本目で腰の骨がつぶれる感覚があった」と蓄積されていた腰への負担がこの大舞台で現れた。2本目は何とか挙げ切ったものの3本目は引くことができず。9月に行われた東日本学生個人選手権後にスナッチのフォームを変え、そこから11㎏も記録を伸ばしたが腰に負担がかかることがあだとなった。1年間伸ばし続けてきた記録の目標はこのインカレ。気合も入っていただけに「伸びても結果が出せなかったら意味がない」と悔しさがこぼれ出た。それでもこの1年間で記録を伸ばす方法は見いだした。あとは「プラスアルファでケガしないようにケアすること」。来年度こそ、インカレの舞台でリベンジを果たす。

 目標としていた上位入賞には程遠く、表彰台に立ったのは西岡のみ。一方で収穫もある。本多達雄監督が「下級生も伸びてきている」と話すように、2年生の松本や後藤が自己ベストを更新するなど存在感を示した。インカレ出場メンバーに限らず多くの選手が記録を伸ばしている。「優勝できるメンバーをつくっていきたい」(本多監督)と、成し遂げられなかった目標が新チームに託される。
 インカレを境に4年生は引退する。「つらい時期のほうが多かったけど、先輩のおかげで成長できた。後輩から学ぶことも多かった。ありがとうって言いたい」(大皿健太・法4=明石南)。後輩たちの成長を感じている分、彼らへの期待も大きい。「覚悟決めてやってほしい。活躍できるようになってほしい」と西岡がエールを込める。その思いは語らずとも、下級生の心にしっかりと届いているはずだ。再び、挑戦の1年がスタートした。

[板橋洋子・谷澤優佳・星川裕也]