
(19)塚原巧巳 楕円を追って未だ6年、異色の最重量スクラマー
譲れないもの
「スクラムを絶対に押されない。きれいなボールをBKに供給する。明治はFWのイメージなのでそこで絶対に負けてはいけない」
不動の右プロップ・塚原が掲げる「責任」は、男の力と意地のぶつかり合い、スクラム。
「重さがあるので外(1番側)に押すことができる。そこを起点にみんなが押して行く」
125㎏の体躯を生かした圧巻のパワープレーは、まさしく重戦車そのものだ。11本のマイボールスクラムは、全て譲らなかった。12月20日に行われた大学選手権セカンドステージ第2戦、相手は同じくFW戦を得意とする流経大。年越しに向けチームがヤマ場と位置づけていた大一番も、蓋を開けてみれば52―14の快勝だった。
「スクラムでターンオーバーできたのでよかった。シーズン深まるに連れて精度が高まっている」
圧巻だったのは、前半終了間際のヤンボール。敵陣ゴール前で猛プッシュを仕掛け、ペナルティーを誘発。PGから相手を突き放した。敵の強みをつぶし、自らの流れに持ち込んだ好ゲームだった。
畳から楕円へ
そんな塚原がラグビーと出会ったのは、高校2年生の時だった。16年連続で花園出場を決めている名門・國學院栃木高校には、小3から始めた柔道のスポーツ推薦で入学。しかし、わずか1年で退部した。
「柔道を辞めた時の担任の先生がたまたまラグビー部のコーチで、部員も多いクラスだった」
重量階級の選手だった塚原はコーチやクラスメイトの誘いを受け、新境地・ラグビーへと足を踏み入れた。
決意の上での競技転向も、初めは苦難の連続だった。
「柔道をしていた時はグラウンドを走ったりすることがあまりなかった。そこがきつかった。最初はどういう風に動いたらいいかも全然分からずに苦労したし、そもそもルールを覚えるところからだった」。
そんな中でも楕円にのめり込んでいった塚原は、恵まれた体格、そして柔道経験を生かしたプレーで頭角を表していった。
「スクラムは上半身の動きが重要で、柔道の時の上半身の強さが生かされている」
当時から、自慢のプレーはやはりスクラム。今につながるルーツはここにある。
大食漢、進化
今季、例年以上のフィットネス練習を敢行したラグビー部。それでも「練習をして体重が落ちることはない。強みです」。はにかみながらも塚原は話す。寿司50皿を食したこともあるチーム随一の大食漢は、もはや頼もしさすら感じさせる。選手権での日本一を最高の瞬間にしてみせる「柔道部を辞めて、ラグビーがきっかけで‥。ラグビーでここまで来られた。とても大事なもの」
風格をまといし生粋のプロップは、静かに先を見据えている
「(今までの競技人生で嬉しかったことは)まだないですね。大学日本一になってそれを言えるようにしたいです」
規格外の男は、頂点までの残り3試合も押して、押して、押しまくる。
[小田切健太郎]
◆塚原巧巳(つかはら・たくみ)政経4 国学院栃木高出 182cm・125kg。
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