
PK戦で順大撃破! 宿敵・関西学大との準決勝へ/全日本大学選手権
5人目のキッカー小出が決めた瞬間、選手たちは歓喜に満ちた。「劇的過ぎて言葉が出ない」(道渕諒平・農3=ベガルタ仙台ユース)。120分を戦っても決着のつかないゲームの勝敗はPK戦に委ねられ、5―4で勝利。「順大の粘りがすごかった」(道渕)と離しても追いついてくる順大の猛追に最後まで苦しめられたが、振り切った選手たちの顔には笑みが浮かんでいた。
勝利を手繰り寄せたのは頼れる守護神だった。GK服部は順大の3人目のキッカーが放った低めのシュートを完全に読み切り、指一本で弾いた。「4年生をこのゲームで引退させられなかった」(服部)。1ゲームで3失点を許したのは今季初で「失点に絡んでいた分、チームを勝たせなきゃいけないという強い責任感はあった」(服部)と、3失点が闘志に火を点けた。もともとPK戦は得意としており、今シーズン中3度PK戦があったが、全てで1度は止めている。試合後も「人生でまだ数回しか負けたことが無い」(服部)と自信に満ちた顔で振り返った。守護神が得意のPK戦で勝利のお膳立てをした。
意地が死闘を呼んだ。延長前半8分、ゴール前左で道渕からのパスを和泉が倒れこみながらダイレクトで押し込み貴重な追加点を挙げる。そのまま逃げ切りを図り、和泉を下げ牛之濱容(法2=アビスパ福岡U18)を出して守りに入るも、延長後半5分に順大がゴール。延長13分には岸本がCKを頭で合わせて公式戦デビュー戦で初ゴールを獲得。「見事にハマって勝利のシナリオになった」と栗田大輔監督も絶賛した得点で、会場は明大の勝ちムードへ。しかし延長15分に、またしても同点弾を土壇場で許す。延長戦で計4点が動く展開に会場は揺れ動き、藤本佳希(文4=済美)も「2回勝ったと思いました」と言葉をこぼした。その後PK戦でなんとか勝利を収めるも、「気持ちと気持ちのぶつかり合いがこの試合を生んだ」(道渕)。強烈な意地の勝負は明大に軍配が上がった。
準決勝の相手は夏の総理大臣杯決勝で優勝の座を奪われた関西学大だ。今大会の準々決勝では流経大に延長戦の末に勝利しており、自信と勢いは増している。しかし日本一へのラストチャンスを準決勝で逃すわけにはいかない。「ここまで来たら気持ち」(山越康平・法4=矢板中央)。順大が脅威の粘りを見せたように、勝利への気持ちが勝敗を大きく左右する。そしてそこには「順大の思いを背負って戦っていきたい」(服部)、「いろんな人の思いを背負ってやりたい」(和泉)と戦った相手や支えてくれた仲間の思いも詰まっている。多くの人の思いを胸にインカレ制覇を目指す。
★岸本 初めてだらけの恩返し弾★
今試合がデビュー戦となった岸本。ピッチに立って3分で決めたヘディング弾は公式戦初出場、初得点、さらにファーストタッチという初物尽くしの1点となった。得点後、駆け寄ったベンチからは「奇跡」との声も上がったが「必然です」と笑顔できっぱり。会場には岸本のお世話係であった昨年度主将の三浦龍輝(平27商卒)も足を運んでおり「大会前にもメールしたり常に頑張れよと言っていたので、結果を出してくれて嬉しい」と、先輩の目の前でドンピシャの恩返し弾を決めてみせた。栗田監督にも「お祭り男」と称される岸本が一発で起用に応えた。
[渡邊弘基・谷澤優佳]
試合後のコメント
栗田監督
「立ち上がり非常に良い入りができて、自分たちが積み重ねてきたサッカーが順大にハマると思っていたので、守備から攻撃に転じようとしていた。正直1―0のゲームで今日は良いと思っていた。(後半は逆に相手にペースを握られたが)長谷川竜也選手と名古選手がダブルで降りてくるので、そこをどう捕まえるかをハーフタイムに修整した。前半のコンパクトなライン設定は間違っていなかったので、あとは前に押し出して、奪いどころで奪いに行くことをもう一回意識付けして後半に臨んだ。でもこんな展開になると思っていなかった。最後のインカレだから魂がこもっており、死闘になるのだと改めて思った。(後半追加点が欲しかったが)土居が一対一を外したり決めるべきところで決められなかった。結果論ではそうなるが、そういうところで決められないとこうなるんだと思う。(攻撃は悲観する出来ではないか)我々のサッカーはサイドからの攻撃だったり、縦パスからのつながりからチャンスは作られていた。さらに精度は求めていくが良いゲームだった。(和泉を下げたのは)単純に運動量が減ったのと、勝っていたので、運動量があって前線からの守備が良い牛之濱を入れた。岸本は元々フィジカルが強く、ヘディングが良く能力の高い選手でお祭り男でもあり、一発屋なのでそこに賭けてみた。そしたら見事にハマって勝利のシナリオになったが、お祭り男がいるからこそで前がかりになり失点してしまった。(PKについて)トーナメントですし、良い準備ができた。3人目の金原のPKは落ち着いて決めましたし、相手にとって効いたと思う。(次戦について)関学大にしても流経大にしてもこれからは問答無用になってくるので、しっかりコンディションを戻してやるだけ」
和泉
「今日はプレー的には良くなかったので、勝ちはしたけど個人的には納得がいっていない。2回ぐらい決めるチャンスもあったので、僕だけじゃないけど決めなきゃいけない。決めなければこういう試合になる。決めなきゃいけない場面が前後半多かったし、そこはチームとしての課題。個人としても試合を決められるようなプレイヤーになりたいと思っているので、もっと決められたなという思いがある。(得点について)諒平もシュートじゃなくてパスだと思っていたので、あとは触るだけだった。(準決勝について)決勝はどっちが来ても素晴らしいチームだし、本当に死闘になる。どっちが来てもやることは一緒。関学には借りを返したいという思いがあるけど、どっち来るかわからないので、来た方の相手をしっかり分析して、自分たちのやるべきことをはっきりさせて、試合に挑むだけだと思う。試合後、竜也(長谷川)話してくれて、4年間ありがとうと。一緒に戦ってきたし、優勝してくれとも言われたし、いろんな人の思いを背負ってやりたい」
差波優人(商4=青森山田)
「難しい試合になったけれど、最後の最後で勝つことができたのでよかった。簡単な試合になるとは思ってなかったし、90分で決着がつければそれが理想だと思っていたけれどそんなにうまく試合を運べるわけではなく、結果的にこうやってPKまでいったというのは、決めるところで決めることだったり失点を減らすことだったりというのをもっと突き詰めていかなくてはいけないと思った。勝つことだけをみんな考えていたと思う。(PK戦への意識というのは)日頃から練習しているので自信を持っていけるということだと思う。日頃から準備しているので特にはない。(CKから2点入りましたが)CKはキッカー次第だと思うので、僕がどれだけ集中してボールを蹴るかというところが大事だと思う。1点目もそうですし、英陣が決めたCKも、本当に集中して蹴れば中の選手は決めてくれるし、そういうところはキッカー次第なのかなというのは今日改めて思った。(岸本はヘディング強いか)相当強いと思う。今日初出場だったので相手のデータ的にもなかったと思う。練習でも結構すごいヘディング決めていたし何よりあの時間帯、あの雰囲気の中で決めてくれたというのがすごくチームとしても勢いになるし、サブの選手の力というのは大事だなと今日改めて思った。大きな仕事やってくれたので、そこからはあと2日修正してやることが大事かなと思う。(自身のプレーは)長谷川竜也や9番のところだったりというのは自由にさせると順天堂ものってくると思ったので、僕と柴戸のところで守備から入るように心がけた。攻撃にもう少し関わりたかったけれど、守備から入ってしっかりそこをつぶすというのは2人で話して、結果的に勝てたのでそれがよかったのかも分からないですけど。それにプラス攻撃のところでももっと関わっていけたらいいのかなと思う。(次戦について)どちらが上がってきても強いし失うものは何もないので、しっかり残り2日いい準備をしてどっちが相手でも僕たちの力を精一杯出せるようにしていけたらいいと思う」
藤本
「勝ったのは良かったけど、自分たちで試合を難しくしてしまったかなという印象。チャンスが結構あったので、そこで決めていれば終わっていたと思う。難しくしてしまったけど、勝てたのでまた課題としてやりたい。今日は2回勝ったと思いましたからね。勝てると少なからず思っていたので、追いつかれたショックはあった。別にまだ同点でPKで勝てる自信があった。PK戦の前には気持ち大事にしようと話した。蹴る奴は気持ちなので迷わず、今までやってきたこととか、いろんな人の思いを一蹴りにぶつけようという感じだった。次の試合はチームのためにプレーする中で得点を取りたい。チームが勝つためにやりたい」
山越
「(試合を終えて)死闘だったけど勝ててよかったし、勝ちが次につながると思う。相手の執念を感じたし良いチームだと思ったし、サッカーは最後まで何が起こるかわからないと思った。最後なんでどこのチームも気持ちを感じる。DFとして3失点目は守り切らなきゃいけないし、悔しさが残る。PKは練習していたので、練習通りするだけだった。(後半の守備について)前半はまず良かったが、後半で決められるところで決められなくて難しいゲームになってしまったのだと思う。失点のシーンも簡単なことでやられてから崩れたのかな。(普段の順大とは異っていたのでは)リーグ戦の時は長谷川竜也がいなかったので、怖さも今とは違うし、全然違った。(次戦について)どっちが来ても死闘になると思うが、ここまで来たら気持ちだと思うので、気持ちで負けないように次の水曜日までに良い準備をしたい。(同点に追いつかれた時はどういった声掛けを)気持ちを落とさないで点を取りにいこうと話していた」
小出
「試合早めに決めたかったけれどしんどかった。前半無失点で終わって1点リードというのはよかったけれど、結構押し込まれてるシーンがあったので修正しなきゃやばいなと思っていた。いつも練習しているセットプレーの中で目の前にボールがこぼれてきたので押し込んだみたいな感じ。公式戦初めての得点だった。リーグ戦でも点決めるけどオフサイドみたいなのが多かったので、初めてちゃんとした点決められてよかった。(守備としては)焦りはなかったしいらいらもしなかったけれど、できれば深い位置まで自分たちのDFラインがペナルティーエリアくらいまで入っていたのでもしかしたら事故起こってしまうかなと思っていた。もう少し前線からはめにいったりしないとなと思っていた。初めてくらいの試合内容で、取って取られてが3点続くというのは初めてだったので、相手も必死ですごいなという面もあったし、そういった中でもDFラインの押し上げだったり最後に相手のシュートを打たせてしまうとかこぼれ球の反応という細かい細かいところで相手が上回っていたのかな。それがあれだけ失点してしまったのかなと思うので、そこは振り返って切り替えて修正していきたい。(PK最後のキッカーで)大臣杯でも5番目というのは経験していたし、外したらもういいやという気持ちで思い切り、悔いないように蹴ったので入ってよかった。(市船から和泉とは一緒だが最後にという思いは)日本一にさせたいですね。また自分らの代でも連覇というのを、高校時代は成し遂げられなかったので、それを成し遂げるためには今年優勝して次自分の代で、というのがある。そういう気持ちも強いので、まず今年4年生のためにしっかり優勝したい。(今季PK戦で3勝ですが)延長戦入った時点でPKでも問題ないというくらいのメンタルでやっているので、PKも練習しているのでそういった面では自信になってるかなと思う。(点取ったり取られたりの展開だったが心境というのは)点取られたりしてしまった時は少し落ち込むというか一喜一憂してしまう場面もあったけれど、その後すぐ終わったことは仕方ないという気持ちでできたのでそれはよかった。最終的にも勝てたし本当に大きかったと思う。しょうがないから自分らのサッカーやり続けて受け身にならないでという声掛けはみんなしていた。(次戦について)どっちが上がってきても厳しい試合になると思うので、あと中2日しっかりいい準備して試合に臨みたい。大臣杯の借りという面もあるし、どっちかといったら関学上がってきてほしいという思いがある」
服部
「いつもサイドハーフとかでうまく押し上げてハメるが、正直あまりうまくいってなかった。でもクロスを上げさせなかったり、シュートを打たせない部分では徹底してできたと思う。(3失点について)全失点に悔やむところがあるが、1失点目は股を抜かれ、ステップワークのところで相手との駆け引きに負けた。2失点目は僕が飛び出す所とヤマ君のカバーが曖昧になってしまい、連携からの失点。3失点目はラインの押し上げが遅くて失点して、ディフェンスラインのミスからの失点だった。しょうがない失点ではなかった。(PK戦について)失点に絡んでいる分、4年生をこんなゲームで引退させられなかった。僕の中でも今年自分が飛躍できたのも4年生のおかげだと思っているので、しっかりPKは止めようと思った。(PKを止めたのは)読みました。いつも角度と歩数で予想している。3本同じ方向に飛んで2本触っていて、1本しか止められなかったのは悔しいが、PK戦は得意。人生でまだ数回しか負けたことが無いし、自信はある。特に今日は失点に絡んでいるので、チームを勝たせなきゃいけないという強い責任感はあった。(追いつかれ続けたこと)堅守が売りの明治ですし、僕が試合に出て3失点は初めてのことなので、悔しさが今はにじみ出てきている。試合中は『3失点かー』としか思わなかったが、いつも2失点で抑えていたチームが3失点なのは改善しなきゃならない。でもみんなが同じベクトルを向いているので、こういう試合に勝ち進めるんだと思う。(次戦について)どっちが来ても死闘になるのは間違いない。流経大とはリーグ戦とかでバチバチやっているし、関学大に至っては決勝で負けているので準決勝で負けるわけにはいかない。あの悔しさは今でも忘れられないし、このメンバーで優勝しないと。順大の思いを背負って戦っていきたい。(岸本のゴールについて)普段からはしゃいでいて盛り上げ役だが、ずっとIリーグで頑張っていて、今の金原もそうだが、下からの底上げが最後になってグッと来ているので、チームの良い力になっていると思う」
道渕
「(試合を終えて)劇的過ぎて言葉が出ない。順大の粘りがすごかったので、この粘りを順大から学んで次に生かしていきたい。自分たちのチャンスで決めきれなく、1点差で追いつかれる試合になったので、決定力は上げていかなきゃならない。2点差にできていればこんな試合にはならなかった。勝ったからよかったが(延長戦は4点が動いたが)なかなかないですよね。気持ちと気持ちのぶつかり合いがこの試合を生んだんだと思う。(アシストはパスか)あれはパスですね。竜司君が声出していて、自分は見ていなかったけど、信じて出したら感覚でいてくれよかった。(同点になった時はどのように声を掛け合ったか)まずは逆転されないこと、チャンスがあれば勝ち越し点を狙っていこうと声を掛け合った。(途中出場する時に、どのような気持ちでピッチに上がったか)流れが悪かったので、監督からは『打開してこい』と言われた。自分のストロングである突破力やクロスを出していって得点に結びつけようと思っていた。あと守備もちょっと下がっていたので前から行くスイッチを意識して入った。(次戦に向けて)関学か流経大どっちがきても厳しいと思うが、個人的には関学に来てほしい」
岸本
「準備からヘディングのイメージしていて、コーナーになった瞬間絶対くると思って、自分結構身長低いのでマーク付かれる時も身長低いというか余り者が付いてきた。そこでチャンスと思って、ヘディングしてよかった。ヘディングしてボールの行方があまり見えなかった。みんなが喜んでたので入ったんだと思って僕も喜んで。ヘディングの時はいつもそんな感じ。当たった感覚はあったけれど入った感覚はあまりしなかった。みんなが喜んでたのですごくうれしくて爆発した。悠太くんがブロックしてくれて僕のマークも全然いなくてフリーの状態だった。別世界に入ったような。気付いたらヘディングしていた。いつもそういう感じだけれど、今日は結構特別に、入った感覚はあまり分からなかった。初公式戦で初物尽くしだったので今日。そこで決められてよかった。初出場、初得点、ファーストタッチ。小学校から結構ヘディングに自信持っていて小中高とコーナーは絶対上がっていたので、ヘディングが特長。(3失点目)僕が行かなくてよかったところで少し前に出ちゃって、道渕くんが『行くな』って声掛けたけれど聞こえなくて裏取られてしまった。最後スライディングしてコーナーにしたけれど、そこから失点した。コーナー後も最初18番のマークに付いていたけれど、牛之濱がクリアーして前に落ちて誰も行かなかったので少し僕が前に出てしまってそこで18番が少し空いてしまって、悠太くんもライン上げようとしたけれど一人残っちゃったみたいでそれでオフサイドラインかからなくて、ちょうど空いちゃった状態で決められたので、いろいろ課題が見つかった試合。守備面では対人とかは得意だけれど、SHをどう動かしたりとかはまだ課題が残るのかなと自分では思っているので、そこを直していきたい。そこも含めてポゼッションとか足元とかちゃんと見つめ直してやっていきたいなという感じ。(インカレの舞台というのは)リーグ戦も出たことないし初の公式戦で、大学入って大きな舞台で試合したことなかったので今日出てみて思ったことが、外から見ていたら勝ちたいという気持ちはあったけれど出てからの方がもっと強くなって、出たらもう何が何でも勝ちたいという気持ちになって、インカレとかはそういう気持ちにさせてくれるんだなと思って楽しんで、また出たいですね、楽しかったので。高校時代最後は選手権出られなかったけれどインハイはベスト8までいった。大舞台もちょっとは経験している。そういったところでプレーできるのはとても楽しいので好きです。(ベンチからは奇跡だとの声も上がっていたが)いや、必然ですね。もう自分しかない。(ゴールのイメージを持って入った)SBで入ったけれど監督はセットプレー狙えって感じで、守備よりは攻撃面で期待されていたと思う。ヘディングは元から得意なのであまり練習はしていない。むしろ足元とかに課題があるかなと思う」
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