4年生特集(5)苦悩を越えて泥くさく 秋葉真司

 5人目に紹介する秋葉真司(政経4=能代工)は今季に著しくプレータイムを伸ばし、つなぎの役目で奮闘を見せた。「自分の仕事は何なのか」悩んだ期間を越え、たどり着いたのは泥くさく献身的なプレー。インカレでもキーパーソンとして貪欲な姿を見せる。(この取材は11月18日に行ったものです)

――今年度のこれまでを振り返るといかがですか
「今年は一言では表せない年でした。今まではHCとか監督の人たちが導いてくれて、そこに乗っかって進んでいく形で、その中で自分たちが磨いていくだけだったんですね。…というところを、自分たちで一からもがいて、全部作り上げてそこで初めて乗ってスタートしなくちゃいけなかったので、そういう意味では相当つらいことも多くて。チームでぶつかったりもしたんですけど、結局トーナメントでベスト4に入れたっていうのはいい経験にもなったし、逆にいい結果が出たことで自分たちにとって考えさせられる部分も多かったです。リーグ戦を通して5位で終わったのは今現在ではやり切れたのかなと思っていますし、ポジティブに考えるなら、この経験も自分たちにとって成長できた部分なのかなと思いますけど、表現しづらいですね、今年は」

――首脳陣が入れ替わったことがプラスになったこともあるのでしょうか
「選手の自主性が出たっていうのはあります。そこは今までの体制では絶対生まれなかった部分だと思うし、逆にこの環境になったからこそ学べたことはあると思います。あとは、選手同士でぶつかることもあんまりなかったんですけど、そうやってぶつかった分、みんな自分の考えを押し切る部分が多かったのが周りのことを尊重するようになったり、その中で自分の考えを言うようになったり。そういういうのは今までなかった部分だと思うので、そこは良かったかなと思うんですけど」

――秋葉選手としては、今年になってスターターとして出る機会やプレータイムが増えました
「この新体制になって試合に出ることが多くなったので、そういった意味ではうれしい半分、その分『今までベースにいたやつが新体制になってなんであんな生き生きやってるんだろう』って思われる部分もたぶん多かったと思います。でも、それをはね返す分の力は春先は全然なくて。トーナメントも出てたけど自分の仕事が何か分からないし、自分がこのチームのためにできることが何かも分からないし、なんで出ているのかも自分で分からなくなってしまって、それでチームに迷惑かけてしまうこともありました。結局それで、夏の合宿とか練習試合とかも含めてそういうところで自分で1個1個やろうって思って乗り越えて、リーグ戦に臨んで。でもリーグ戦も最初はスターターだったんですけどそれでもまたうまくいかなくて。自分に足りないところは何なのかっていうところばかり考えていました。それが結局得点力だったんですけど、その得点力だけに目がいって自分よがりな形になってしまって。
その中でベンチスタートっていう期間が増えた時に、少ない時間の中で考えたのは「自分がこのチームのために、自分だからできることは何だろう」と。考えてやった結果、自分の仕事はやっぱり泥くさい部分の、リバウンドだったりルーズボールだったり、あとはディフェンスだったり。宮本(滉希・政経2=明成)や今川(友哲・営1=大阪桐蔭)は、身長があって有利かもしれないけど、逆に自分が出た時にその2人にない部分でこのチームに貢献できることもあったと思うし、つなげる部分もあったと思うので。リーグ戦の最後の方はそういった部分をしっかり徹底できてやれたっていうのは、自分の出るべき場所の確立ができたのかなっていう自信にもなりました。そういった意味では、リーグ戦の後半は自信を持ってやれていました」

――「泥くさい部分」という自分の仕事を見つけたのですね
「1年を通してスタートで出ることもあったし控えで出ることもあったし、そういうのを含めてやっと自分自身の、今のこのチームで中でできることっていうのは見えてきたのかなと思います。結局それをやってた結果、勝手に得点もついてきて、自分のもともとやりたかったというか足りない部分だと思っていたことも徐々に徐々に見えてきてる部分もあって、そういった意味では良かったのかなって。今は自信持ってやれてる段階です」

――先ほど下級生の名前も出ましたが、「自分の仕事が分からない」となった時、それを打破した具体的なきっかけがあったのでしょうか
「(リーグ)1戦目の青学大戦(記事はこちら)…だったんですけど、宮本が抜けて、そこに自分が出るってなった時に、ふと自分で覚悟を決めたというか、あの時に勝手に浮かんだのが、宮本は確かに身長あるんですけど、じゃあ俺ができることは何だろうって。ある意味諦めたと言ったらあれですけど、俺にももちろんできないことはあるし、それを諦めようと思ってやった結果、逆にそれがいいふうに出て。あの青学戦は自分自身も楽しかったし、チームも勝てたし、いいバスケットをチームとしてもできたと思うし、そういった意味では自分の見えた試合はそこで、それがきっかけだったのかなと思います」

――今年は頭を悩ますことが多かった年とも言えるのでしょうか
「そうですね、やっぱり自分のことも考えなきゃいけないんですけど、4年生なのでチームのことが最優先でしたし。選手たちで考えることが多かったので、その中で4年生という立場でチームを最優先にしなくちゃいけないってなった時に、勘弁してくれみたいなときもあったんですけど(笑) だからそういう考えることが多かった年ではありますね」

――昨年から言っていた「トップでやりたい」という念願をかなえた中で、先ほどの「今までベースにいたやつが…」というようなマイナスな言葉が出て驚きました
「そうですね、ずっと上がりたいと思ってやってたんですけど。やっぱり自分が弱かったというのもあるんですけどケガが多かったりとか、体調を崩したりとか、弱さが3年間ずっと出てたので。前任の方もトップに上げてはくれてたんですけどそのたびにケガしたり。結局自分の弱さだったと思うんですけど、まさかここまで引きずるとは(笑)思ってなかったですね」

――今年の4年生の中では秋葉選手はどのような立場なのでしょうか
「自分たちの学年は比較的仲がいいというか何でも話せる学年だったので、なんとなく自然とそれぞれ役割分担があって。例えば啓(税所・情コミ4=興南)だったらキャプテンとしてまとめるようにしてて、去年から試合を経験してた吉本(健人・法4=藤枝明誠)と、伊澤(実孝・政経4=愛知産大工)はコートで見せてくれるんでそこは安心してて。で、海斗(黒崎・営4=新潟商)が結構いろんな考えを持っててくれるんで吉本と海斗が副キャプテンとして啓を支えて…ってなった時に、自分は何ができるかなと思ったんですけど、結局は後輩の意見を4年生に自分の声として、そうだなと思ったことも含めて、伝えることが役割みたいな感じでした。自分は比較的後輩から声が上がってくることも多かったので」

――4年目を迎えるにあたって持っていた意識はありますか
「4年目としてはどういったチーム作りをしようっていうのは、ここまで苦労しないとは思っていた部分もあるんですけど、なんか1個1個の壁がでかすぎて、それだけにひたすら向かってただけで。目標としては『インカレ優勝』というのは絶対にぶれないようにやっていこう、とは4年生としても話してて全体にもミーティングでずっと話してたので、そこに向けてチームとして壁に向かってひたすら耐えて耐えてチームがどうにかまとまって、っていうことをしてた、なんかそんな感じです、」

――4年間を振り返って、大変だったことはありますか
「やっぱり今までの3年間はいろんなケガして、何回もトップに上げてもらってるのに何もできないで、結局ずっとインカレは応援席にいることが全部だったんです。やっぱりあの代々木第二のあの雰囲気の中でプレーしたいってずっと思い続けて、結局そのまま3年間を過ごしてたので、そうですね、そういった意味では、きつかったって言ったらあれですけど。その現状に満足しちゃって負けそうになってた自分もいたり、全部が全部腐らずやったかといったら腐った時期もあったと思うので、その時の自分は良かったかもしれないですけど、今考えればその時期きつかったなって思いますね」

――2年生の新人戦前は思い悩んでいたことがあると聞きました
「そうですね(笑)懐かしいですね。
最初は本当に今年の状況と同じなんですけど、スタートで出てて、そこからどんどん1年生が出るようになって全然自分が出れなくなって、出ても何もできなくなり。で、自分が何すればいいか本当に分からなくなって。その時にどこかと練習試合したときだったんですけど、塚本さん(清彦前HC)に「お前の仕事は何なんだ」みたいなことを言われたんですよね。それをダイレクトに言われて、まさにそれを悩んでるときだったので、もう自分の中で爆発しちゃって。新人戦に入るまでは全部悩んでましたね、2年目の新人戦は。ケガはそれこそなかったんですけど、自分はなんで出てるんだろうって。結局全然試合に出れなくなって、思い悩んだんです。でも2回戦の専修戦で、なんか塚さんに「お前はリバウンドだけやってればいい」みたいなことを言われて。結局、そうやって仕事を言ってもらったんで、それだけ考えてやったら、他のプレーもついてきて、得点取れるし、思い切りプレーできてるし、流れつなげたし。今思えば、今と全く同じですね。なんか今と全く同じことがその新人戦期間も起きて。結局その繰り返しなんですかね…(笑)まあ新人戦の時もそうでした」

――目標にしているスタイルを教えてください
「一番の究極は、格好良く言ったら勝負師みたいなことです。なんていうんですかね、どこのチームにも得点を取るやつがいたり、ディフェンスできるやつがいたり、大きいセンターがいたりというのはあって、どこに行っても通用するプレーヤーもいいと思うんですけど、自分はそのチームにだけ必要とされるプレーヤーになりたいなと思って。そのチームの中で仕事ができる、そのチームの中でここが必要とされているところをプレーできるプレーヤーになりたいなって言うのが、自分の究極です」

――それは明大でいうとどういった部分になるのでしょうか
「今のチーム体制だったら、泥くさい部分。リバウンドだったりルーズボールだったりとか、ディフェンスをしっかりしつこくやるだったりとか。今は4ポジで出ることが多いので相手は自分より大きいんですけど、それに対して嫌がられるようなディフェンスをしたり。オフェンスはまだまだなんですけど、リーグの終盤で外でスリー待ってたらパスを回してくれるチームメイトが多かったのでそこを期待してくれてるのかなっていうのをだんだん感じてきて、そこをしっかり決め切ることも含めて自分の仕事だと思ってて、打つ本数は少ないですけど、そのシュートをしっかり決めることもそうだし。そういう絶対にこっちに流れがほしいときに出ている時間帯が多かったので、そこでしっかり相手が嫌がることをして、こっちも引き寄せるって言うのが自分の仕事の目指すところです」

――最後のインカレですが、これまで応援席で見てきた分、思い入れもあるのでしょうか
「そうですね、自分が憧れてきた場所だったので。やっぱり2年前の(記事はこちら)あのサッカー部が応援している前でプレーしたいって思ったのもそうですが、すごい単純なことなんですけど、みんなの前でプレーするのってやっぱり気持ちいいだろうし、あの舞台で自分はどれくらいできるんだろうっていう自分への投げかけでもあると思うんです。まあそれは置いといて、ただ単に自分が憧れてきた場所でプレーできるチャンスが今あるので、すごく思い入れは深いですし、思う存分やりたいなと思います」

――インカレに向けて、チームはいい練習ができていますか
「うーん、まだまだだとは思います。正直、もっと指摘し合って、もっとピリピリしたムードの中でやらなくちゃいけないというのが本来、だと思うんですけど、でも今のチーム状況を考えると、果たしてそれが正解かといったらそうでもないかもしれないです。この状況下でいい練習というものの究極はたぶん誰も分からないと思うんですね。でもできる部分はあると思うので、今日の練習だったらターンオーバーが多かったりとか。今日は比較的にみんな声が出てたのですが、ただ継続する力っていうのはうちにないんで。リーグ戦を通してもこの間の試合は良かったのに、今週は全然違うチームみたい、っていうのが何回も何回もあったので、それを補えるのはやっぱ練習だと思うので、継続性という意味では課題なのかなと思います」

――継続性というと、特にインカレは連日行われますね
「やっぱトーナメントで1回負けたら終わりなので、もっと継続性のある練習をしなくちゃいけないのかなって思いますね、集中力のある。声を出すのもそうですし、プレー面でもそうですし、一人一人のメンタリティの部分もそうですし。平日はいつも6時半から練習なわけで、そこに向かう気持ちをみんな持ってきてるかといったらまだそうでもないと思いますし、その練習に全力注いでるようになってないのも事実なので。でもそういった部分は、正直自分も今まで下級生の時にできてたかって言ったらそうではないので、それを自分たちが背中で見せて、来年だったり再来年だったり、下級生が上級生になった時にあの人たちがこうやってたのかなって気付けばそれで、今気付かなくてもいいと思ってます」

――インカレですが、1回戦は富士大学から始まります
「富士大は自分も東北出身としては、顔を知ってるやつとか、東北として同じ地区の人たちが多いという意味では絶対負けられないです。自分が東北から関東に出てきたっていう部分ではプライドもありますし、個人として絶対負けられないというのはありますね」

――2回戦以降の対戦は日体大、青学大と関東勢が続くのではないかと予想されますが
「正直今すごく勢いがあるので、怖いのは事実ですね。日体が怖いのは事実です。でも自分たちの今までやってきた1線目2線目をしっかり守るとか、1個1個のディフェンスをしっかりやれば怖さもないと思うし、勝てない相手では全然ないと思います。やっぱりディフェンスをずっとみんなで言い合ってやってきたので。あっちは勢いがあるので我慢する時間帯は多いと思うんですけど、そこを我慢する力はリーグ戦の終盤、ガードが特に見え始めた部分があったので。その時間にどうにか考えようともがいていたガード陣も會田(圭佑・法3=市立柏)だったり拓実(齋藤・営2=桐光学園)だったり、そういった部分で成長できた部分があったので、そこを自信もってやってくれれば、大丈夫なのかなという感じです。青学は、リーグ戦で2勝したっていうのは忘れてやらないといけないなと思ってます。青学のやつらも3回目は勝ちますよと言ってたきたりもあって、でも負けるわけにはいかないので。青学戦は2年前(記事はこちら)も準決勝でやってて、今回とは違うんですけど、そこで青学に勝つっていう先輩たちのあの格好いい姿を見てるんで、そうなるようにしないとですし、やっぱ2回戦は大田区なので、代々木でもっとプレーしたいですし、大田区で負けるわけにいかないじゃないですか」

――ではインカレに向けて意気込みを一言お願いします
「優勝します! 優勝したいですね」

――最後に、チームメートへ掛けたい言葉はありますか
「いろんなことがあったんですけど、この同期だから自分はやってこれたと思うし、成長できたと思うし、バスケットに集中できたと思います。下級生にも感謝です。下級生がいなかったらバスケできないし今のチームは絶対成り立ってないし、下級生の成長もあったからリーグ戦を5位っていう結果にもなって、今のチームがあると思います。本当にそういった意味ではこのチームだからこそ、こんなにバスケットに集中できてると思うし、大好きなバスケットをできてると思うし。このチームで良かったなというのはずっと思っているので、同期も含め後輩も含め、本当に感謝です。後輩たちには一番感謝しなくちゃいけないと思っています。自分たちもいろんな間違ったことで引っ張ってきたこともあった思うんですけどそれにいろいろ文句を言いながらもついてきてくれて。最後インカレ、4年生として今のチームではラストなので、最後は本当に力を貸してほしいなと思うし、感謝してるってことは伝えたいと思います」

――ありがとうございました。

◆秋葉真司(あきば・しんじ) 政経4 能代工高出身 185㎝・78㎏ 
登録ポジションはSF(スモール・フォワード)

[渡辺由理佳]