坂野主将 井原前監督捧げる男子エペ個人ベスト8/全日本学生選手権

2015.11.11
 坂野守洸主将(法4=清風)が大熱戦を制した。ベスト8を懸け、根元(拓大)と対戦した3回戦。得点差が常に1ポイント以内という接戦繰り広げ、一本勝負の末に勝利を挙げた。続く準々決勝では一本勝負の末に敗れたが、故・井原健三前監督との約束であり目標としていたベスト8まで残った。

 「本当に何も考えずに真っすぐぶち込んだだけ」。3分×3セットでは勝負が付かず、一本勝負にもつれ込んだこの試合。対戦相手の根元が得点の度に雄たけびを上げ独特のポーズを取るパフォーマーということもあり、12あるピストの中で唯一行われていたこの試合の行方を会場中が固唾を飲んで見守った。
 延長戦開始から23秒。会場がどよめき、根元の雄たけびが上がるもドゥーブル(同時突)。勝負が決したのはその10秒後だった。雄たけびを上げたのは、今度は坂野主将。灯ったのはシングルランプだった。「負けたくない気持ちとここでは負けられないという気持ちだった」。熱い思いが乗った坂野主将の剣は的確に相手を突くと同時に、自身初のインカレベスト8まで届いた。

 土壇場で同点に追いついた。4ー4までポイントがドゥーブルのみと、序盤から接戦を繰り広げた。互いに一歩も引かず第2セット終了時の得点は6ー7。第3セットは、約50秒掛かりようやく1ポイントが入るスローな展開となった。そんな中、シングルで坂野が2連取。8ー7とこの試合初めてリードを奪うも、直後にシングルで取り返されドゥーブルを挟み再び失点。残り40秒で9ー10とビハインドを背負った。だがベンチに入っていた古俣潮里(政経2=新潟)のアドバイスもあり、焦りはなかった。「次の1本しか意識していなかった」と坂野主将。残り14秒でシングルポイントを奪い、同点に追いつくと大きなガッツポーズを見せた。

 先日亡くなった井原前監督に捧げるベスト8入りだ。亡くなる直前に「お前は最後の年にベスト8の壁を破って男になれ」と言われていた坂野主将。最後のインカレで結果を残し、井原前監督との約束を果たした。
 世界が変わった。昨年の全日本選手権では、ナショナルチームの伊藤(NEXUS)に一本勝負の末、9―10で惜敗。その際に井原前監督に「あれを勝っていれば世界が変わった」と言われたという。その時はよく意味が分からなかったが、今回ベスト8の壁を破ったことで言葉の意味が少し分かった。「世界が変わったというか、もっと上に行きたいと思った」。予選通過ではもう満足できない。全日本選手権でも虎視眈々と上位を狙う。

 「井原監督との約束を果たせたことについて素直にうれしく思う」。自らの力で、自らの世界を変えた坂野主将の戦いはまだ終わらない。

[柴田遼太郎]

試合後のコメント
坂野守洸主将(法4=清風)

「4年間で初めてインカレ、関カレでベスト8に入れた。うれしかった。ベスト16は1年生の時から入っていたが、どうしてもベスト8の壁が破れなかった。亡くなった井原監督にも『お前は最後の年にベスト8の壁を破って男になれ』と合宿の最終日飲み会をしている時に言われた。それで次の日に亡くなったので、遺言ではないが、井原監督との約束を果たせたことについて素直にうれしく思う。ベスト8に入るまで一つずつと思っていた。ベスト8に入った時に、最初はベスト8でもいいのかなと思っていたが、やるうちに欲が出てきてベスト8に入ったからにはベスト4行きたい、ベスト4行ったら決勝行って、それに勝ったら優勝できるじゃんという欲が出た。純粋にうれしかったが、できればベスト4に行きたかった。(3回戦について)相手は去年のインカレでも当たっていて普通に勝てた印象だったので行けるだろうとは思っていた。相手がパフォーマーというか、目立つことをして会場を沸かせるタイプ。どうしても全体の雰囲気を持っていかれてしまう。雰囲気に飲まれないように自分は自分ということを意識したが、やはり固くなってああいう試合になった。どうやって会場の雰囲気と戦おうということを意識していた。古俣にレッスンとか取っていてもらっていたので、後ろにずっと古俣に付いていてもらっていた。自分が考えられなくなったり頭が真っ白になったら古俣に何をしたほうがいいのか、自分が考えてやった行動はそれが正しかったのか、客観的に見れる古俣に判断してもらっていた。結構ベンチ頼りにはなっていた。第3セットの時も古俣に『先輩がやっていることは間違ってないです。少しのミスで相手のシングルになっているので丁寧にやれれば今のままで点数取れるので変えなくていいです』と言われてそのまま行った。焦りとかはなかった。むしろ負けてたっけという感じ。次の1本しか意識していなかった。シングルランプが欲しかったので、どうやったらシングルを取れるのかずっと考えていた。最後のポイントはただの気合。負けたくない気持ちとここでは負けられないという気持ちだった。本当に何も考えずに真っすぐぶち込んだだけ。技術的にどうとか、作戦的に仕掛けていたとかはない。(準々決勝について)相手は中がいい後輩。身内とやるような感覚だったのでリラックスして、ベスト8入ったから楽しんでやろうという感じ。この試合は13ー14になってやばいと思っていた。突っ込んだらドゥーブルにされて負けてしまうと思った。だったら相手がしてこないだろうと思っていることをやろうと思って、行くふりして残した。絶対にドゥーブルは駄目なのでビハインドは意識していた。14ー14にしようと考えてやっていた。最後は、後々考えれば足だったなと思う。こっちも熱くなっていた。相手が何を狙っているかを考え忘れた結果。相手が一番得点率高かったのは足突きなので、最後足突きに懸けてくるのは少し考えたら分かる。どうやって突こうということしか考えていなかった。冷静さを欠いた結果。(今後について)去年の全日本でナショナルチームの人に一本勝負の末に負けてしまった。その時に井原監督に『あれを勝っていれば世界が変わった』と言われて、その時は何の世界が変わるんだろうとよく分からなかった。でも今回の大会は監督が亡くなったということもあって絶対監督に言われたベスト8に入ってやろうと思って、ベスト8だけを目標にしてやってきたのにベスト8に入ってベスト4に行きたいと思った。それが世界が変わったというか、もっと上に行きたいと思った。もうすぐ引退だが、全日本も出るんだったら、前だったら予選上がれたらいいなだったが、ベスト8に入りたいな、あわよくば3位、4位、優勝とかしてみたいなという感覚になれた。引退試合になるかは分からないが、できる限り楽しんでやれたらいいと思う」