
小川が全日本3位 シニアでも手ごたえ/講道館杯全日本体重別選手権
己の柔道を貫いた。昨年は1回戦敗退と成績を残すことができなかった小川だが、今年は違った。1回戦を難なく突破した小川は、2回戦で最初のヤマ場である石井(東京中央競馬会)との対戦を迎える。石井は2011年に講道館杯を制し、今年の全日本選手権で5位という結果を残す実力者。体格で相手に劣っていた小川だったが、試合前の練習では石井を想定した組手練習を徹底し、試合でも自らがこだわる組手で接戦を繰り広げる。試合時間2分半を切ったところで、石井が仕掛けてきた大内刈に対し返し技で渾身の一本勝ちを収め、見事勝利した。勝利が決まると思わず「よっしゃ」という喜びの声とともに手を叩いた。
準々決勝は昨年王者の岩尾(京葉ガス)との対決。開始30秒ほどで勝負に出た小川だったが、反撃の機会をうかがっていた岩尾に小外掛で返され一本勝ちを許してしまった。そのまま3敗者復活戦、3位決定戦へと進む。
3位決定戦での相手は昨年小川が1回戦で敗れた高橋(新日鐵住金)。「昨年の自分を超える」(小川)と雪辱を誓い挑んだ。同体格、ケンカ四つの相手に対して序盤から内股などの技で積極的に攻めていく。また、組手の攻防や高橋の投技にも踏ん張り、力負けすることはなかった。試合時間1分半過ぎ、腰が引けた相手に対し回り込んで、強引に払い腰へ持っていくと、最後は巻き込み綺麗な一本勝ちを決めた。試合後は「優勝を目指してやってきたので満足はしていない」と小川。全日本優勝への道はまだまだ始まったばかりだ。
新たなスタート地点となった。今大会初出場の三村暁之(政経2=崇徳)と野々内悠真(商2=崇徳)は大会を終えて、来年へ向け「全日本学生体重別優勝」という明確な目標を表明。2回戦で今大会準優勝の西潟(旭化成)に敗れた田中も「来年は出る全ての大会で優勝を目標に、海外でも活躍できるように」と自身のゴールを再確認した。また、主将を橋口に引き継いだ上田は「最終目標は全日本選手権で優勝、オリンピックで金メダル」と卒業後の活躍も大いに期待される。オフシーズンを迎える中でも、それぞれの選手が目標を立て、新たなステージへと上がっていく。新主将橋口率いる明大の今後の躍進に目が離せない。
[長谷川千華]
試合後のコメント
猿渡琢海監督
「橋口は流れはすごくよかった。2回戦も相手の反則による勝ちですごいラッキーな勝ち方で、優勝してもおかしくないという流れだった。負けた竪山との試合では、1つのミスが敗北につながった。そういうミスが徹底されて行かないと、同じような負けを繰り返していくと思うし、今の橋口の弱点でもあると思う。代替わりして橋口がキャプテンで、周りを見ながらチームを強くすることと自分が強くなること。キャプテンっていうのは、部員に背中を見せなきゃいけない。背中を見せるってことは、人一倍強くなきゃいけないし、誰よりも強くなければいけない存在。柔道は強いけど、精神面の弱さがあって負けている。彼がこれからやっていかなきゃいけないことは、精神面の強化であって、はっきりした目標設定。私生活も見直して、また来年のこの大会に出て優勝してほしい。また、彼がそういった行動をとることによって、全体も引っ張られていい方向になってくる。具体的な目標、能力的には日本一になれるものを持っている。彼自身がどの大会に優勝するかという目標設定をしっかりして、そのための練習というのをこなしていかないといけない。学生飛び越えて講道館杯で優勝します、というような目標を立てるのであれば、その目標に合わせた練習をしていかないと。3位決定戦では、精神面で自分に負けていた。橋口の昔からの悪いところは、1日の中で1回負けたら気持ちがぷつんと切れてしまって、戦えるような状況じゃなくなることが見られる。世界選手権の代表になったら必ずメダルを取らなきゃいけないっていう中で、1回負けても銅メダル目指すっていうのは出てくる。1日2回も負けられないぞっていう精神でいかなきゃ。橋口は3年だけど副キャプテンで置いてきて、中心人物ではあるし軽量級の中ではリーダーシップ持ってやってきたと思う。これからは全体のリーダーとして頑張ってほしい。(2日目)重量級3人、上田、小川、田中。3位になった小川は、1回戦は順調に勝てたし、自分の組手をできてた。その次も石井が一つのヤマ場と見ていて、競った試合になると予測をしていて、そういう練習をやらせながら挑んだ。試合の中で雄勢は妥協せず、自分の組手の形にこだわった結果一本勝ちにつながったのかなと。精神面だけで戦ったと思う。すごいたくましくなったなと感じたし、今後につながる内容だった。その次に岩尾に負けた試合は、不用意に技に入っていったところを相手に返されて負けた。大内刈に入った瞬間の体勢だったり引手の持ち方だったりが不十分な形で、本人も手探り状態でちょっと腰が引いたような体勢でいって返された。小川の不十分な組手が、負けた原因かな。そこで返された技、返された組手っていうのをしないように調整、修正していく。(今大会に合わせた練習)ベースの組手はできつつあるので、今回は2回戦でやった石井の対策であったりその次の岩尾を想定した相四つを相手の投げ方を重点的にやってきた。3位に入っているので4月の体重別にも入ってくると思うし、そこにつながったというのは大きな収穫。強化すべき点は、大きい相手、自分と同じような体格の相手との相四つの組手。組手からの技。3決では投げて勝てたけど、あれは下手すれば審判に指導を取られかねない組手だった。ちゃんとした組手で投げられるように強化していきたい。上田は、社会人になって自分でなんでも研究したり分析したりしなきゃいけないので、この大学生中に確認、それから分析研究して。それで問題点が解決できないのならば、相談してきてくれればいいし、なんで勝てなかったかというのをもう一度反省してもらいたい。次を勝つためにももう一度今の状況を分析してもらいたい。源大は1回戦目から自分の動きでできたし、気合も入っていたので思いっきり戦えていた。試合内容に関しては満足している。試合前は、思い切りやって来いと(伝えた)。この試合に勝たなきゃお前は代表になれないんだっていう気持ちを持って戦えと送り出した。ゴールデンスコアまで五分五分の戦いをして、少ししたところで勝負にいったところ相手の技で投げられてしまった。少し体力差があるのかなという感じ。体力アップ、全体的なレベルアップをしないといけない。田中に関してはフィジカル面の強化と今持っている技の強化。組手で組み勝つ場面もあったし、タイミングも合った状態で技に入れていた。そこを投げきれなかったっていうのはフィジカル面の弱さ。まずは世界を見るよりも国内を見る。国内の試合の中で、小川と田中が決勝やるくらいを目標に。小川が今は3位で一歩リードしてるけども、まだまだ小川にもやらなきゃいけないこと、身につけないといけないことがたくさんある。そこは武器となるものを備えさせる。田中のほうが体格面で劣る部分がある。このシニアで戦う中で小さい。背が高い相手と戦った時に手を伸ばしてあいての懐に入らないと技に入れない。細かい部分の組手っていうのを身に着ける。田中のほうが苦労すると思うけど、身に着けてしまえば戦える。現にそれで強くなっている上川もいるし、体小さくても世界に出て行って戦えてるОBもいるから頑張ってほしい」
河原正太助監督
「今日の野々内君は、最近は安定感が出てきて、試合に出ても投げれらて負けるというのが少ない。けど、まだツメの甘さが、最後の最後出てしまう。そこを直せば来年、再来年3位以内に入れる選手になれると思う。練習良くするし、まじめなのでこつこつやってることが試合に出てきてる。努力型なので地道に成長してる。全日本ジュニアで負けて、全日本学生で勝って、負ける厳しさ、悔しさも勝つ喜びも経験してる。楽しみ。課題は技出しが遅いのと、安定というか波がない。常に同じペースで、安定が裏目に出ている。そこをもう少し攻めれるよういなれば見てて安心できるようになる。守りベースで柔道しているので、攻めながら勝てるように。指導を2個も3個も取って相手が焦ってくるところに投げるっていう。(練習では)組手だったり、相手の崩し方であったり、相手によって使い分ける戦い方、基本的なことを言ってる。その中で自分がやりやすいやり方を見つけてやってると思う。基本的なことをベースにやってる。持ち方であったり、姿勢であったりは学生全体にも教えてる。(明大は)勝負しきらない。団体戦で言えば、ラスト1分で負けてるのに、必死感が、最後の最後まで取りに行ってやろうという気持ちが(相手に)負けてるというのは思う。次の選手にバトンタッチするのに勢いがないし、ダラダラやってしまうと。それなら、だーといって負けて、次お前がんばれよっていったほうが頑張れそうな気がする。そういう必死感を持ってやってくれると活気が出ていい感じになると思う。練習もたらたらせず、もっと切磋琢磨、みんなでやり合うくらいの気持ちでやってほしい。練習相手はライバルでもあるし。野々内は必死にやってる。そういった選手を見て、全員が必死にやってほしい」
上田
「高橋選手に通算で3回も負けているのでもう少し考えないといけないです。苦手意識はあるんですが、そこを克服しないといけないです。一つ得意技、内股をやってきて、それをもっと出せれば。監督からは乗り越えないといけない壁だと言われました。(小川が3位)結構いつもいい刺激をもらっていて、田中も含めてこうやって同じ所属になったことはいい巡り合わせなので、これからも一緒に強くなっていきたいです。(主将としての一年)周りの4年生から助けられた一年でした。(大学での柔道生活終盤だがここまで振り返って)体と精神面が成長できたので実業団でももっと成長したいです。(今後の目標)最終目標は全日本選手権で優勝、オリンピックで金メダルです。まず今月海外でグランプリ・チンタオがあるのでそこで優勝したいです。(明大柔道部の良さは)強くなれる環境があります。自分の努力次第でいくらでも強くなれる環境だと思います」
橋口
「トレーニングはいつも通りやっていました。コンディションは悪くはなかったですけど、負けてから気持ちを切らしてしまった。準決勝は監督とかみんなに言われたんですけど、組み手を変えたんですけど、持続性がなかったです。追い込むまでは完璧まではいかないですけど良い柔道ができていたので、あれを続けていれば勝てたかなと思います。(3位決定戦は)情けないですね。スタミナ切れというか相手の技に対して踏ん張り切れなかったです。(昨年の講道館杯からの成長は)成長がないから昨年と同じ結果なんだと思います。自分が弱いということを自覚してまたゼロからやっていくしかないと思います。(来年度の主将としては)キャプテンといっても弱いので、自分が一番練習するしかないし、結果と行動で示していくしかないと思います」
野々内
「負けた試合はもったいなかったです。最後の数秒のミスがこういう結果になりました。先に指導を取られて、次に取り返して、そこで気が緩んだかもしれないです。技を掛けられて耐えましたが、その後に寝技で動けなくなりました。1回戦に関しては体力の差で勝てました。最初に指導を取って体力勝負で勝てました。(講道館杯に向けての取り組み)自分は一本勝ちが少なかったので、得意技の内股で投げられるような練習をしました。監督からは一本で決めれるように言われていました。試合でできていないので、来年は一本勝ちできるようにしたいです。今年は東京都予選の準決勝で勝ったら代表というところで負けて、全日本ジュニアも3位に入れば代表のところを準決勝、3位決定戦で負けてという前半でした。でも全日本学生では講道館杯の出場権をつかめました。出たかった試合ですし、どうしても今年出たかった試合でした。来年につながる経験をできたと思います。他の試合を見ても組手や試合時間の使い方などは実業団の選手はうまいなと感じました。(来年の目標は)学生優勝と講道館杯ベスト8です」
三村
「いいパートだったけど、不意にかけた技で返された。講道館杯は初めてで、アップの時に緊張してた。いけるところまでいきたいと思って、できたら優勝とか。でもできなかった。力不足だった。全日本ジュニアは3位で、高校生に負けて悔しい思いをしてそこで頑張ろうと思った。もちろん来年も講道館杯に出て、優勝を目指したい。大学生活あと2年しかないので、できる限り結果残したい。全日本学生体重別でも。相手を投げれる技を身に着けたい。内股や大外刈り」
小川
「優勝を目指してやってきたので満足はしていないです。反省点はあったので改善していきたいです。世界ジュニアに行っていて帰ってきてから中々自分の思うように体をコントロールできずに直前まで苦しみました。時差ぼけや体重です。体重は練習しても落ちなくなって、汗が出にくかったりしました。左足首のケガもあったりしました。練習で動きやすい感覚でやれなかったです。試合の2、3日前にやっと調子が良くなってきて間に合いました。苦しい中でも1、2回戦はいいスタートを切れました。(準々決勝)岩尾さんは高校の先輩でした。負けたのは自分の力のなさです。そこを受け止めて、その後に敗者復活戦があるから切り替えようとしました。(3位決定戦)高橋さんとは昨年の1回戦でも戦って負けました。昨年の自分を超えるという意味でも、対策というよりは正面からぶつかっていこうと思って挑んで最後勝てました。最後の技は狙ってはいなかったです。前回よりはできたかなと思う部分はありましたが組手も負けていたので、勝ったとはいえまだ強さは向こうの方が上です。最後も強引にたまたま投げれた感じなので。(父の直也氏からは)いつも言われますが我慢して頑張れと言われていました。準々決勝はあっさり決められてしまったので、まだ我慢できなかった部分があります。次は月末のグランプリチェジュです。試合が続くのでうまく調整します。これからまだ試合があるので、目の前の試合を1つ1つ勝つことが目標
です」
田中
「シニアの試合で思い切っていこうとやりました。試合の流れは良かったです。2回戦で優勝候補の西潟さんとやって、思っていたより自分の柔道ができました。止まったら投げられるので動いていこうとやりました。監督からは試合前に全力を出してこいと言われました。試合後は来年は勝つぞと。技が単発になっているので連続でかけられるようにしたいです。講道館杯は初出場でした。こういう大会でも普通に戦えるようになっているので、来年はもっと上を目指します。(小川が3位)来年は自分ももっと上に行きたいなと感じました。3位になる力を持つ練習相手がいるので僕も頑張ります。来年は出る全ての大会で優勝を目標に、海外でも活躍できるようになりたいです」
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