小川が全日本で大暴れ 初優勝果たす/全日本学生体重別選手権

2015.10.05
 学生日本一を争う全日本学生体重別選手権2日目。90kgから100kg超級選手のトーナメントが行われ、100kg超級で小川雄勢(政経1=修徳)が全国から集まった強敵たちを次々と破り頂点をつかみ取った。90kg級では、東京学生体重別や全日本ジュニアで上位入賞を果たし頭角を現し始めた野々内悠真(商2=崇徳)が3位に入賞し、さらなる成長の跡を見せた。

 優勝までの道のりは決して楽なものではなかった。初戦に立ちはだかった筑波大の橋高は、今年度グランドスラムの覇者原沢久喜(日大)をも倒した大器。しかし「先に技を掛けていって主導権を取ろう」(小川)と序盤から積極的に攻めていき見事勝利した。2回戦以降も苦戦を強いられたが、林山(東海大)、神谷(筑波大)、砂田(国士大)などの名だたる猛者たちを持ち前の体格で打ち破り決勝まで登りつめた。しかし決勝の相手は小川とほぼ同体格の黒岩(筑波大)。お互い思い通りに技を決めきらない戦いの中、指導を1つずつ与えられゴールデンスコアにまでもつれ込む。「体力がなかったら死んでた」(小川)とすでに体力、気力ともに限界に近づいていた。最後の勝負に出た小川に対し返し技を仕掛けてきた相手を押し込み、有効を奪取。試合終了のホイッスルとともに張りつめていた緊張が解き放たれ、小川は思わず畳の上に寝転んだ。猿渡琢海監督の「スタミナと気持ちだけで勝負してこい」という言葉通り、厳しい山組の中で最後まで戦い抜いた。父の小川直也(平2営卒)と同じく1年生で全日本のタイトルを手中に収めた小川。「シニアでの手応えもつかめた」と学生大会ではとどまるつもりはなく、今後の活躍も大いに期待される。

 日々の鍛錬が実を成した。準決勝、国士大の江畑と11分をも超える大接戦の末、最後は指導負けを喫し敗れたが、3位入賞と健闘を見せた野々内。江畑とは高校時代にも大会で対戦し敗北していた。そのときは実力差があった江畑に「接戦でゴールデンスコアも取って差が埋まってきてる」(猿渡監督)と手応えをつかんだ。毎日の練習を真面目にコツコツと積み上げてきた努力が、今大会の結果につながった大きな要因と言える。今月末の全日本体重別団体メンバーに選ばれた野々内が、どんな活躍を見せるのか。90kg級の大星に注目が高まる。

 来週以降も試合続きとなる。小川、田中源大(政経1=高川学園)が世界ジュニアを控える一方、10月末には尼崎で全日本学生体重別選手権団体が行われる。100kg超級には、明大の大黒柱・上田轄麻主将(政経4=愛知県私立大成)がメンバーに選出され、優勝へ向けてチームが一丸となって突き進む。また、11月の講道館杯出場が決定した小川、田中、橋口祐葵(政経3=延岡学園)、野々内が学生の垣根を超えて実力を試す機会が与えられた。「(全員が)練習の中で自信をつけて試合でその力を発揮するというような選手になってもらいたい」と猿渡監督は選手一人一人の成長を期待する。

[長谷川千華]

試合後のコメント
猿渡琢海監督

「監督としても素直に嬉しいし、本人もすごく自信になったと思う。ただ、試合の中身としてはまだまだ修正しないといけないところ、たくさん課題が見えた。今月末は小川は世界ジュニアもあるし、11月には講道館杯もある。それまでにもっと強い小川で次の試合に挑ませたい。(修正部分)まず一つは組手。自分の形になったときはものすごく強いけど、相手の奇襲というか相手に研究されてるからその小川にさせない組手を相手がしてきたときの対応。(瞬間の対応を)まだまだ頭で考えながらやってるので、相手がやってきた動作に対して体で反応するような稽古が必要。戦略という部分も小川なりに考えた上で戦ってたと思う。頭を使った柔道ができていた。体の反応は引き出しが足りてない。たくさん引き出しを持っていれば相手がやってきたことに対してすぐ体が勝手に反応するっていう状況になる。その一つ一つ細かい部分を教えながらアドバイスしながらできれば大丈夫かな。(一番最初のヤマ場)一回戦から。今日の強い選手の一人だったので、小川も慎重にやってた。勝てるだろうなという部分は僕も思ってた。一本勝ちは一回だけ。当たった選手が強い選手が多くて、小川のブロックに固まってた。接戦接戦で気力と体力だけで戦ってた。だから強い選手を倒して優勝したというのは本当にすごく自信になったと思う。重量級の学生の中では第一人者になれたかな。春に比べては、確かに腕力は強くなってる。試合前小川と組んでみて練習したけど、パワーは強くなってるし、技術も上達もしてる。組手も技も。少しずつ一歩一歩成長してる。大きな変化はまだまだ感じられないかな。今年一年、世界ジュニア講道館杯を戦った上で来年に向けて変化が出てくるのかな。(優勝の一番の要因)気持ち。折れなかったし、自分のやらなきゃいけないことをしっかり貫き通した。組手にしても攻め方にしても徹底してた。メンタルに関しては本当に強かった。(決勝でゴールデンまで持ち込んだ)決勝で一つだけアドバイスした。『スタミナ勝負だ』と。『スタミナと気持ちだけで勝負して来い』とだけ伝えた。試合終わった瞬間寝転ぶなんてあまりない。今日は相当疲れたと思う。それでも優勝できてよかった。(優勝後は)『おめでとう』とグータッチした。(野々内の3位)野々内はすごく頑張った。野々内は、高校時代は江畑と同い年で準決勝でやった時はかなり差があったけど、その差もあの接戦でゴールデンスコアも取って差が埋まってきてる。その埋まった差をさらに乗り越えて、今日壁となってしまった江畑を今後は破ってもらってさらに強い選手になってもらいたい。野々内はコツコツ練習もやるし、あいつの柔道が普段通りの練習通りの柔道を試合で出せた。今後も期待ができる選手でもある。(世界ジュニア)二十歳以下の日本の代表として戦うわけだから、そのカテゴリーの中ではチャンピオンになって帰って来てほしい。ジュニアレベルではあるけど、世界レベルでもあるからそこでしっかり戦って世界の舞台を経験することが大事。(小川の大きな課題)投げる技を身に着ける。自分の柱となる得意技を身に着ける。今の最大の課題だな。筋トレは柔道で腕張ればそれがトレーニングにもなるし、体の柔らかさは小川にはある。筋肉つけるのはまだまだ先でもいいかな。実際筋トレしなくても結果はついてきている。小川が講道館杯で成績残せれば今度はシニアの強化選手に上がるから、そうするとヨーロッパの大会だとかシニアの大会に出ることが多くなって学生の大会を卒業するかもしれない。まだまだそのレベルには達しないので、もし来年この大会出場するなら2連覇目指して戦ってもらいた。逆に田中が悔しい思いしてるから、次は絶対優勝するんだという気持ちで練習してくると思う」

小川
「(1年生で優勝)あまり1年生というのはあまり気にせず、自分のできることを精いっぱいできたので良かったかなと。(積極的に攻めていた)1回戦からずっと強い選手と当たっていたんですけど、その中でも向こうの方が上手だと思っていたので、自分から先に技を掛けていって主導権を取ろうと思っていたので。それが今日の優勝という結果につながったと思います。(指導差での勝利も多かった)指導差というのが今の自分の力の精いっぱいという部分でもあるので、それが投げられるようになってくると自分の力が付いてきたんだなということだと思います。指導差というのは今日は多かったですけど、悪かったところを直してまた上を目指してやっていこうと思います。(決勝でポイントを取った技は)あれは自分が大外に持っていこうとしたところ相手が払い巻きにきたところをかみ合ったという感じ。GSに入ったので、相手もどこかで勝負に来るだろうとは思っていたのでそこでかみ合って良かったです。(GSも多かった)正直決勝前は座っててしんどいなと思ってました。(大学に入って体力はついたか)そうですね。体力がなかったら今日は死んでました。(監督には)試合後にはおめでとうと。(世界ジュニア、講道館杯に向けて)講道館杯はもう東京大会で決まっていたので今日は優勝しようと思ってやってきて、今日学生の大会で優勝できたのでシニアでの手ごたえもつかめたかなと思います。(世界ジュニア、講道館杯では田中との再戦も)そうですね。源太は今回負けちゃいましたけど、また一緒に切磋琢磨して頑張りたいと思います」