ギリギリのところで踏みとどまった。１点ビハインドで迎えた試合時間残り６秒。松本勇監督がタイムアウトをとり、最後のプレーを指示。ベンチの選択は「樹（吉野）に打たせる」。この試合16得点を挙げていたエースに全てを託した。しかし、王者返り咲きのために、初戦は絶対に落とせない日体大も吉野に激しくプレッシャーをかけ、シュートの間合いを取らせない。それを見た吉野は相手ディフェンスが前がかりになっているスキを突き、素早くかわし相手を抜き去る。最後は試合終了のホイッスルと同時にキーパーとの１対１を決め、この日17点目となるゴールで引き分けに持ち込んだ。

　「勝てた試合を落とした」（池田稔主将・農４＝藤代紫水）。終了間際の同点劇にも、選手に喜びの色はない。開始からシーソーゲームが続いたが、前半途中にリードを奪うと、３点リードで迎えた後半は序盤からさらに差を広げ、最大７点までリードを広げていた。しかし、一つの退場から一気に１点差まで詰め寄られ、さらには逆転まで許してしまった。そこからの同点劇には、追い付いた喜びよりも勝ち切れなかった悔しさが残った。

　ミスで崩れはしたが、ディフェンスと速攻で試合を支配する時間をつくり、多くのメンバーが出場しながら試合をつないだ。次戦は早大との対戦と、強豪との対戦が続くが「重たいとは思っていない」（池田主将）と気合は十分だ。春に下しているイメージの良い相手だけに、快勝で今後のリーグ戦に弾みをつけたい。

［松井嚴一郎］

試合後のコメント
松本監督
「勝ててた試合だった。後半の退場から流れが変わってしまった。東（謙佑・法４＝法政二）とか４年生が少しいいところを見せてはくれたけど、やっぱり練習をほとんどやれてないのでミスが出てしまう。あとは１年のミスもある程度は仕方ない。今年はとにかく走り負けないように、ということで夏の合宿もかなり厳しく長めにやってきた。だから速攻に関してはかなりやってきた。今日も前半から結構速攻出てたのでそこは良かったけど、もっとバランスが良くなるといい。あとはディフェンスを相当やった。前半に14点取られたけどそれも結構速攻でやられただけのが多かったので、ディフェンスは良かったと思う。ディフェンスを強く上ではキーパーがもう少し取れるといい。樹（吉野）が本当にすごくなってきてる。完全にエース。ジュニアの大会にいってから一回り大きくなったし、自信がついてる。フェイントもかなりキレるようになった。今日もかなり点を取ってくれてるのでそこはもう樹（吉野）に任せてる。今日もかなりマンツーマンにつかれたけどそれはもう想定内。それ前提で練習はしてきた。そこでセットで点を取れるかどうかというところ。そこで今日は東がやってくれたり、工藤（龍毅・政経２＝桃山学院）と松本（崇雅・政経１＝岩国工）が頑張ってくれた。１年生は全体的に上出来。今日はつまらないミスがいくつかあったので、そこをなくして、うまく切り替えられるようにしていけば。あとはとにかくバックチェックをやってしっかりセットで守る。速攻がここまで速いのは日体くらいしかないので。今日良くなかった分は明日やりたい」

池田主将
「勝てた試合を落としたって感じ。もう少し離せるところで離さないといけなくて、逆速攻で連続失点してまった。ただ前半の速攻はすごく良かった。練習でやったことがしっかりできていた。あとはミスの修正。ミス多かったので明日に切り替えて。そういうときにキャプテンがしっかりして流れを食い止めないといけない。樹（吉野）のマークが厚くなったときにサイドとか他のところで点を取らないといけない。シュートとかもキャプテンがしっかり決めないといけない。今日の試合を勝ち切りたかった。やっぱり日本一を目指してるチームなので、競った試合を取りたい。ディフェンスは東とか戻ってきて良くはなってきている。後半にだいぶロングシュートをやられたけど、下とかに打たれてしまっていたので、ディフェンスで当たらないといけないところだった。（最後同点に追い付いたのは）上から打つという指示だったけど、相手も詰めていてアウトが空いていたので、吉野がよく判断してやってくれた。目標は日本一なので当然リーグも優勝を狙っている。秋は春負けた分を取り返したい。今日はミスが多かったので明日に切り替えていきたい。強いところとの連戦も重たいとは思ってないので」