
NEW WAVE 大学スポーツへの可能性
スポーツの可能性は無限大だ。多様性が重視される現代社会、その波はスポーツにも及んでいる。本ページでは体育会などには全く属していない競技の関係者に、大学スポーツ化への展望や課題などを取材させていただいた。従来のスポーツという枠に囚われない、新しい可能性を記事を通して伝えていく。
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麻雀は学生スポーツになるのか? ②学生スポーツへの展望と課題 /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(4)
明大スポーツ新聞 2022.11.18麻雀は果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は麻雀のプロスポーツ化を目的に発足し、今年度で5年目となるM.LEAGUE(以下、Mリーグ)を運営している一般社団法人Mリーグ機構・事務局長の畑敦之氏に取材を行った。第2弾は学生スポーツになる可能性についてまとめていく。※この取材は10月28日に行われたものです。 麻雀は果たして学生スポーツになる可能性はあるのか。畑氏は「(学生スポーツに)なる可能性はかなりあるのでは」としつつも「まずはスポーツであるという認識を持ってもらうところから始めなければいけない」と述べている。eスポーツなど、多様な競技がスポーツとなる現代において麻雀もスポーツとして認められる可能性はある。特に、前回の記事で述べたが頭脳スポーツの世界大会が国際オリンピック委員会(IOC)主導で行われるなど、世界的に見ればスポーツ競技化への階段を着実に上がっていることは確かだ。 スポーツになる可能性はあるとはいえ、学生スポーツとして麻雀を行うにあたっては、厳格なルールが絶対に必要だ。主要な麻雀プロ団体でも、偶然要素をできるだけ排除したルールを適用している団体や、ある程度取り入れている団体など、ルールがプロの間でも定まっていない。「学生スポーツとしての麻雀をどう見せたいのかを考え、みんなが納得できる形で(ルールを)制定できるか」がカギになってくる。また、それに付随してレギュレーションも重要だ。学生スポーツではリーグ戦がどの部活でもよくあるが、麻雀も例外ではない。リーグ戦における1部や2部を設けるのであれば、昇降格などは他の部活と同じように制定するべきである。 「大学という大きな抽象的なものに対しては、やはり全体に対しての規律なるものが必要だと思う」。まだまだ『ギャンブル』としてのイメージが付いて回る麻雀において、学生スポーツになるにはしっかりとした組織体系づくりが必須となってくる。まずはスポーツとして認められなければいけないなど課題は山積みだが、体育会麻雀部ができる可能性は決してゼロではない。 (Mリーグ機構主催で開催された夏休み小学生麻雀大会。Mリーグは下の世代への普及も精力的に行っている) [菊地秋斗]READ MORE -
麻雀は学生スポーツになるのか? ①競技としての麻雀の魅力 /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(4)
明大スポーツ新聞 2022.11.18麻雀は果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は麻雀のプロスポーツ化を目的に発足し、今年度で5年目となるM.LEAGUE(以下、Mリーグ)を運営している一般社団法人Mリーグ機構・事務局長の畑敦之氏に取材を行った。第1弾は競技としての麻雀を深掘りする。※この取材は10月28日に行われたものです。 大学生でも親しみを覚えている人は多いであろう麻雀。近年ではインターネットテレビ『ABEMA』でMリーグが放送されるなど、広く一般的に競技が浸透しつつあるのが現状だ。競技としてのイメージが強い麻雀では、主要なプロ団体も五つ存在し、現在では約2000人以上がプロとして活躍している。各団体それぞれで昇降級制度が設けられたり、タイトル戦があったりするなど、日々シビアな勝負が繰り広げられている。 (Mリーグスタジオの風景。Mリーグは各団体からスポンサー企業に選ばれた選手たちが試合を行う) 麻雀がスポーツと結びつくイメージはあまりないが、知力を競い合う『頭脳スポーツ(マインドスポーツ)』として注目を浴びている。頭脳スポーツとは、思考能力や判断能力など、脳を使って行われるスポーツだ。2005年には『国際マインドスポーツ協会(IMSA)』が創設され、2008年には国際オリンピック委員会(IOC)の働きかけで『ワールドマインドスポーツゲームズ(WMSG)』が開催されるなど、スポーツとしての認知が広がりつつある。麻雀は実際に2017年にIMSAに加盟している。相手の捨て牌や自身の手牌を手がかりに、相手の手牌や山(※①)に何が残っているのかなどを予測するなど、頭脳スポーツの中でもかなり高度な思考能力が求められるのは確かだ。 そんな麻雀だが、もともと雀荘でプレーすることが多いため、敷居が高いイメージを持つ人も多い。しかし今はアプリゲームなどでプレーできるため、麻雀をより手軽にたしなむ人が増えているようだ。また、Mリーグなどの視聴ができるコンテンツも増えているため、『見る雀』と呼ばれる層もできている。2021-22シーズンのMリーグの1試合平均視聴数は100万人、さらに「全人口の4パーセントである500万人がMリーグを認知している」(※②)。元々高かった敷居をデジタルコンテンツの駆使によって、確実に低くすることに成功している。こういった進歩から麻雀を知らない人でも気軽に触れることができるようになっているため、興味がある人は触れてみるのも良いだろう。(Mリーグの対局の様子) 麻雀をプレーすることは、今はまだハードルが高いかもしれない。しかしMリーグは「麻雀に興味を持ってくれそうな全年齢層がターゲット」と、さらにここから一般的に認知を拡大させていくようだ。『麻雀=スポーツ』という概念が生まれるのも時間の問題となってくるだろう。 (※①)牌山のこと。競技者はこの山から牌を取ってきて捨てる。(※②)「Mリーグ」に関するアンケート調査結果を発表より引用。 [菊地秋斗]続きはこちらREAD MORE -
ダーツは学生スポーツになるのか? ②学生スポーツへの発展の展望と課題 /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(3)
明大スポーツ新聞 2022.11.05ダーツは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は競技ダーツの普及に取り組んでいらっしゃる公益社団法人日本ダーツ協会(以下:協会)の萩尾純子会長に取材を行った。 第2弾は、競技ダーツが学生スポーツになる可能性をまとめていく。※この取材は10月7日に行われたものです。 学生スポーツとしての競技ダーツの展望を述べる前に、日本におけるその立ち位置を確認しておきたい。「若い人たちはおしゃれなイメージでダーツをしている。一方で我々の競技会は堅いイメージがある」。試合を行う際のドレスコードなどプレー以外の規定もしっかりしており、カジュアルにできるソフトダーツよりも敷居が高いと思われている。それでも、2013年に東京で行われた国民体育大会では、デモンストレーションスポーツとして種目となった。葛飾区と協力をすることで実現し、大会後も区が推奨スポーツとして競技ダーツに力を入れている。区内では現在10ヶ所でハードダーツが投げられる場所があり、協会主催の大会の協賛のほか、全国規模の大会を誘致し区民にレベルの高いダーツを見せることで技能向上を図る活動もしている。協会と地方自治体がタッグを組む事で、未来のプレーヤーにつながるような取り組みが現在行われている。(公民館でのダーツ講習会の様子) そして、そのさらなる広がりのために、競技ダーツの大学スポーツ化は協会としても重要視している。ダーツと学業の両立をしているような大学生プレーヤーは比較的少ない。そのため、協会は大学の科目にダーツを加え、学生に理解を深めてもらうことを目標としている。「(ダーツを)受講した学生が教員となり、さらに下の世代にスポーツとしてのダーツを伝えていってもらいたい」。この第1歩として、ある大学で新設された健康スポーツ科学部において2年後に科目として新規参入が決定している。「一つ大学で成功を収めれば、その事例をもとに全国に普及していけるよう私たちが努力しなければいけない」。ダーツを取り入れる大学が増えれば、学生の競技ダーツへの関心も高まり、大学スポーツとしての発展も十分に見込めるのではないだろうか。 他にも、大学で行われている地域貢献の点に着目すると、さらにダーツと大学はマッチする。例えば、サークルやゼミでの地域支援活動、子供や高齢者の方との交流会などにおいて「ダーツというツールを使えば、費用もあまりかからず、地域の方たちが世代を超えてプレーできる」。ダーツの『生涯スポーツ』『教育スポーツ』としての魅力は、大学におけるさまざまな活動の幅をも広げる。遊びとしては大学生にとってメジャーなダーツ。しかし、大学スポーツとしての可能性も無限大だ。 [堀之内萌乃] READ MORE -
ダーツは学生スポーツになるのか? ①ダーツの魅力とは /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(3)
明大スポーツ新聞 2022.11.05ダーツは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は競技ダーツの普及に取り組んでいらっしゃる公益社団法人日本ダーツ協会の萩尾純子会長に取材を行った。 第1弾は『生涯スポーツ』『教育スポーツ』『競技スポーツ』の観点からダーツの魅力に迫っていく。※この取材は10月7日に行われたものです。 ゲームセンターやダーツバーなど…。娯楽としてのイメージが強いダーツだが、そこには三つの『スポーツ』としての魅力が隠されている。一つ目に紹介するのは『生涯スポーツ』としての魅力。青少年にとっては集中力や持続力、自律神経の向上などの効果が、高齢者にとっては認知症予防効果などが挙げられ、健康という面からも長く楽しめるスポーツだ。また、体に障害のある方でもダーツはできる。マグネット型や吹き矢型など、工夫のこらされた用具を使うことで、健常者と同じように楽しめる。ダーツは年代ごとにさまざまな観点からのメリットを持ち、障害の有無など関係なく幅広い年齢で楽しめる競技である。 (マグネット型のダーツ)(車いすに乗った方でも平等に楽しめるダーツ) 二つ目の魅力は『教育スポーツ』という側面にある。3回投げてその合計得点を計算するのがダーツ。「算数が苦手な子もダーツを通して計算が速くなっている」。子供たちが簡単にダーツを楽しめるほかに、得点計算をすることで子供への学習効果も期待される。また、個人競技というイメージを持たれがちだが、他のチームスポーツと同様に「コミュニケーションツールにとてもいい」。実際、公立では初のダーツ部がある東京都杉並区立富士見丘中学校では部員が卒業後、指導員資格を取得して母校でダーツを教えている。指導員が地元で開催される体験会にボランティアとして参加するなど、ダーツが将来の担い手の育成や地域貢献活動の定着にもつながった結果だ。部員や指導員とコミュニケーションをとる中で、青少年の精神的な成長も促すことができ、教育的な視点からもダーツの魅力は明らかとなっている。 (子供向けの手裏剣型のダーツ) 最後は『競技スポーツ』としての魅力だ。競技ダーツは、日本で一般的によく目にするプラスチック製のソフトダーツではなく、海外で主流のハードダーツを使い行われる。ダーツの先端が金属の針になっており、的に関しても麻素材のものになっているのが特徴だ。「ヨーロッパでは(スポーツとして)ダーツが盛ん」。ダーツの発祥地・イギリスではどこにでもダーツがあるほど親しまれている。また、プロの世界も充実している。ロンドンで開催されている『PDC ワールド・ダーツ・チャンピオンシップ』という大会は「ダーツのエンターテイメントのトップ」と呼ばれており、賞金総額は3億7500万円とかなり大きい。コーラーによる試合演出もあり、かなりの盛り上がりを見せている。プレーヤーだけでなく観客も含め、海外では多くの人が一つのスポーツとして惹きつけられている。(競技会の様子) 遊びとしての印象が先行しがちなダーツだが、その『スポーツ』としての魅力は底知れない。「ダーツは3世代スポーツ」。ダーツを一つのツールとして、家族で出掛けるのもいいだろう。あるいは、友人と競い合ったり、ダーツをきっかけに新たな友人を作ってみるのはいかがだろうか。 [堀之内萌乃]つづきはこちらREAD MORE -
eスポーツは学生スポーツになるのか? ②学生スポーツへの発展の展望と課題 /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(2)
明大スポーツ新聞 2022.10.19eスポーツは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は2018年にeスポーツの振興を目的に設立された日本eスポーツ連合の広報・戸部浩史氏に取材を行った。第2弾は、eスポーツが学生スポーツになる可能性や、なるにあたっての課題などをまとめていく。※この取材は9月29日に行われたものです。 eスポーツが大学スポーツになる可能性あるのだろうか。実は、現状として「展望は非常に明るい」という。「日本の学生スポーツでは高校生の方が注目されがちだが、国際的に見ると大学生の方が注目されている。そのため、大学生世代のeスポーツの発展が日本にとっても非常に重要である」。eスポーツの国際的な組織では現在、ユニバーシアードで正式に競技種目になることが前向きに話し合われている。昨年度には日本eスポーツ連合が大学生日本一を決める大会として『Japan University eSPORTS Championship:U-Champ. ~日本学生eスポーツ競技大会~』を開催した。ゲームタイトルの選定などで調整することは多いが、大学生向けの大会は既に存在しているため、可能性は大いにあるだろう。(『Japan University eSPORTS Championship:U-Champ. ~日本学生eスポーツ競技大会~』の様子) 一方で普及に向けた課題の一つが「ゲーム」に対する古いイメージだ。「eスポーツもゲームやネットの依存症と結びつけて考えられてしまうことは多い」。他のスポーツと違い、幼い頃からゲームの練習をさせることにまだ抵抗がある世代もまだ存在する。日本eスポーツ連合は「健全なイメージが定着するためには時間が必要」としつつも、ゲームイベントなどでの啓発や、各種ガイドラインの制定などをして安全に楽しんでもらえるよう取り組んでいる。また、安全性の強調と並行して、より楽しいものだと伝えていくことも重要だ。実際に野球やサッカーのプロ選手がeスポーツをプレーすることで、リアルの野球やサッカーのファンがeスポーツに対してポジティブなイメージを抱くケースも数多い。こういったことからも見方は大きく好転していっている。「さまざまな機会を通して、eスポーツのメリットである五つのレス(①参照)を伝えていかなければいけない」。(日本eスポーツ連合は子供たちも安全に楽しめるイベントの開催など、環境づくりにも取り組んでいる) 「(学生がeスポーツをする上で)危惧することは特にない。どんどんプレーしていってほしい」。大学スポーツになる可能性は十分にあるものの、日本ではまだ発展途上のeスポーツ。「数年したらブームが終わってしまう可能性もある。文化として根付かせることが自分たちの仕事」。エンタメとしては生涯スポーツになり得るが、競技スポーツとしての適年齢は10代後半~30代前半と幅は狭い。世界で戦える選手を育てるためにも、学生からの盛り上がりは不可欠になってくるだろう。 [菊地秋斗]READ MORE -
eスポーツは学生スポーツになるのか? ①eスポーツの魅力とは /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(2)
明大スポーツ新聞 2022.10.19eスポーツは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は2018年にeスポーツの振興を目的に設立された日本eスポーツ連合の広報・戸部浩史氏に取材を行った。第1弾は近年注目を集めているeスポーツの魅力に迫っていく。※この取材は9月29日に行われたものです。 2022年アジア競技大会(開催は来年度に延期)において正式種目と認定され、情報化時代の新たなスポーツとしてますます脚光を浴びるeスポーツ。瞬発力や戦略性がシビアに求められるのが特徴的な競技だが、一方で新しい生活様式に合う競技としても現在注目を集めている。eスポーツは『エイジ(年齢)レス』『ジェンダー(性別)レス』『ハンディキャップ(身体的な差異)レス』『エリア(環境や場所)レス』という四つの特徴を有しているが、新型コロナウイルスがまん延した際に着目されたのが『コンタクト(接触)レス』だ。「相撲などのスポーツ競技の中には肉体がぶつかり合うものがあるが、eスポーツは肉体的な接触がほとんどない。接触による怪我の可能性は極めて低く、安全を担保しながら行うことができる」。離れていてもオンラインで競技することが可能で、ここが通常のスポーツとは大きく違う点である。(『第18回アジア競技大会』ではデモンストレーション競技としてeスポーツが行われた) そして、それに付随してコミュニケーション能力が強化できるのが魅力的なところ。eスポーツにはチームとして戦う大会や協力してクリアを目指すゲームタイトルも多いため、コミュニケーションを取ることが必要になってくる場合が多い。こういった特徴に目を付け、最近では高齢者の福祉施設におけるコミュニケーションツールとしてもeスポーツが取り入れられている。「高齢者の中には普段から他者とのコミュニケーションが少ない人もいる。『頑張れ』と応援したり、『危ない』と声を発するだけでも脳の回復に貢献するケースがあると聞いている」。福祉利用ではないが、『エイジレス』の特徴を活かしたケースとして、秋田県では日本初のシニアプロゲーマーチームが活動をしている事例もある。 過疎地域や隔離場所であったとしても継続してコミュニケーションを取れることから、地域振興に役立てようとする動きも。2019年に茨城県で初めてのeスポーツ全国大会が開催されると、各地でeスポーツを用いたイベントが急増。地域に元から根付いている産業と掛け合わせることで、さらに活性化できる期待がある。実際に海外では都市対抗のリーグ戦が設置されるなど、Jリーグなどと同じようにeスポーツのクラブチームが創設されるケースも存在しているほどだ。海外では他のスポーツ競技と同様の扱いを受けていることも多く、これからの日本もさらに地域と密接に関わっていくことが予想される。(eスポーツイベントが全国で開催される先駆けとなった『全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI』) 老若男女、身体能力の差などを取り払ってプレーすることができる魅力があるeスポーツ。その市場規模は2018年の約48億円から年々増加し、2023年には1700億円を突破すると予想されている。『コンタクトレス』という特性も加わり、ウィズコロナの時代が続く中でも新たなコミュニケーションツールとしても期待ができそうだ。 [菊地秋斗]つづきはこちらREAD MORE -
ダンスは学生スポーツになるのか? ④Dリーグ・神田氏から若者たちへのメッセージ /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(1)
明大スポーツ新聞 2022.10.14ダンスは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は『世界中すべての人に、ダンスがある人生をもたらす』をミッションに掲げ、10月2日より第3シーズンが開幕したD.LEAGUE(以下、Dリーグ)を開催する株式会社Dリーグ・代表取締役COOの神田勘太朗氏(法卒)に取材を行った。 第4弾は取材の中で神田氏からいただいたメッセージをインタビュー形式で紹介する。※写真はすべて株式会社Dリーグ提供。なお、この取材は9月13日に行われたものです。 ――大学でダンスをしていくとなると学問と両立していかなければいけない現実があります。ダンスは幼い頃からそれ1本でやっていくイメージがありますが、そういう方が多いのでしょうか。 「多いは多いですが、大学からダンスを始めても圧倒的にうまくなる方もいます。自分は他の会社でもダンス大会を開催していまして、大学の部門で審判をしている方に聞いたら『自分は大学生の時に始めて、国技館のステージに立つくらい練習しまくった』と言っているんです。その人は今やもうプロとして活躍しています。なので、歴の長さよりも密度の問題だと思いますね。1日2時間くらいを週に2回、それを10年よりも1日10時間を365日で2年間練習する方が早いんですよ。要するに環境の置き方だと思うので、大学生からというのがそんなに不利に働くとは思わないですね。何かあると歴とかで逃げちゃう人もいると思うんです。でも、すごい人はあっという間に習得していきますから。何かを捨てて集中した人しかもらえないギフトだと思っています。どうしても大学生だと遊んでしまうじゃないですか。でも、それらを全て捨てて集中している子もいて、そのような子は他のことをしてもしっかりしていると思います。大人になればなるほど堕落していく自分の気持ちを、奮い立たせて目標に向かって愚直に進むこと。このように人間のシンプルな本筋を捉える人は、どの道どこでも成功できると思います」 ――これは、ダンスに限らない話に聞こえますが。 「(ダンスに)限らず、ですね。ついつい友人に誘われたら飲みに行くじゃないですか。僕はやりたいことが明確にあったので、流されないタイプでした。しなくていいやの1日、あるいは数時間が1年で考えるとまあまあな時間になる、その分集中していれば誰よりも差がつきます。僕よりもすごい経営者を越えるには睡眠時間を削ってでもやるしかないです。大体の人は睡眠や遊びの時間を削らないようにしていると思っています。でも、同じようなことをしようとしたら抜けるはずがないじゃないですか。誰かを抜くには何かを捨てないといけないので、そのような当たり前のことをやる意志の強さですよね。心が折れるのが普通だと思っています。ただ高みを目指していると折れないので、高みをどこまで目指しているのかの濃度です。絶対世界一を取ると決めたら、取るために何をしたらいいのかを考えなければいけない。口で言っていることとやっていることが違う人がほとんどです。結果を出している人は愚直に掲げた目標に向かってやっているだけな気がすると、大人になればなるほど周りと比べて気付きます」 今回取材を受けてくださった株式会社Dリーグ・代表取締役COOの神田勘太朗氏 「僕、明大の時に会社の前身となる個人事業を設立しているんです。周りが就活する中で僕は起業しました。就職が決まっていた人たちは、そこの会社のこれがやりたいということで就職したのではなく、『大手で安定したい』や『親を安心させたい』など、目的が僕からすると不純に見えてしまいました。でも、彼らからすると〝安定=幸せ〟のような形に持っていったのだと思います。ただ、やりたいことは別にあるはずなのに、そうやって就職されていたので『それ嫌だな、俺ダンスで生きていきたいから会社作るわ』と言って、経営者になりました。その時は学生で起業みたいなのはあまりなかったので、まず個人事業主からスタートすることにしたんです。卒業した2ヶ月後に、個人事業主から会社へ登記しました。周りからすると(起業は)リスクだったと思います。ただ、僕からすると周りの方がリスクだった。『そんな大きな会社入って何すんの』と聞いたら『ない』。そもそも遊ぶことや休むことしか考えてなくて、入れたからラッキーくらいにしか思っていなかった。今Dリーグにいる社員の人たちは、基本的に強い意志を持ってきているので、就職できたからという理由で入っている人はいないです。ダンスで世界を変えたい、自分が頑張ってダンスを変えたい、などの強い思いで運営しています。自分に課されたことと設定したものをどうクリアするか、高速でPDCAを回しているような形ですね。もちろんその中でも壁がいくつもあるのは当たり前で、その壁をどう突破できるかという悩みは尽きないと思います」 ――実際にダンス界とかに入ってみることで、生きていく中で大切なさまざまなものが育まれそうだなと思いました。 「そうですね。スポーツ的、カルチャー的側面などがありますが、社会勉強や人生設計、さまざまなことが含まれている気がします。ただ他の競技でもそうで、やはり精神的に鍛えられている人たちは強いです。一線で活躍している方は他の事業に転換しても一定の結果を出せる人もいるし、スポーツしかやってないから仕事できないでしょと言われてもかなりできたりするんですよね。精神的な支柱もあるのかなと思います」 ――ありがとうございました。 この取材では、神田氏が自身の覚悟やこれまでの軌跡を我々学生に伝えてくださった。ダンスを本気で取り組んでいる学生も、それ以外のことで現在努力している学生にも、ぜひこの言葉を心に刻み込んでほしい。 [菊地秋斗]READ MORE -
ダンスは学生スポーツになるのか? ③ダンスのスポーツ競技化への課題 /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(1)
明大スポーツ新聞 2022.10.14ダンスは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は『世界中すべての人に、ダンスがある人生をもたらす』をミッションに掲げ、10月2日より第3シーズンが開幕したD.LEAGUE(以下、Dリーグ)を開催する株式会社Dリーグ・代表取締役COOの神田勘太朗氏(法卒)に取材を行った。 第3弾はダンスが学生スポーツとして普及するにあたっての課題を突き詰め、そして今後可能性はあるのかなどの展望も同時に伝えていく。※写真はすべて株式会社Dリーグ提供。なお、この取材は9月13日に行われたものです。 ①で紹介したようにスポーツ性が高いダンスジャンルであるブレイキン。しかし、五輪競技化したことでダンスはスポーツ競技との違いにぶつかる。それは、男子と女子という性別によりカテゴリーが分けられる点だ。ダンスにはそもそも男女の垣根などない。そのため「完全なるスポーツ競技に定められた場合こうなるんだな」と、これまでのダンスカルチャーとスポーツカルチャーとの違いを感じているという。ダンスをスポーツとして捉えた場合どのように理解するべきかはまだ定められていないが、そこをDリーグではエンターテインメントとスポーツの掛け合わせというように捉えている。「これからの20年後30年後にはこの考え方が当たり前に浸透しているようなスポーツ競技になってくる」。 他には、審査基準の点でも課題がある。かっこいいやかわいいなど、個人の心の感性による部分をどこまでルールや審査基準として言語化できるか。そして、きちんと選手や観客にその判定に納得感を持ってもらえるか。「みんなで作り上げているので、聞く人がいない」。スポーツ競技化して間もなく、見本にできる先行スポーツもない。そのため、ゼロからルールも審査基準も作り上げている途中なのだ。「新しい時代を切り拓いているスポーツ」。それゆえに、ぶつかる課題だ。 さて、ここまでダンスやDリーグの魅力、ダンスのスポーツ競技化への課題を紹介してきたが、ダンスは果たして大学スポーツとして発展していくのだろうか。「高校のダンス大会で推薦を取ったダンサーが明大のダンス部に所属をして、プロリーグなどにいくということになる時代は自然と起きてくるかもしれない」。今はサークル単位で、ある程度趣味の延長上である大学でのダンス活動。大学スポーツとして発展していくには、体育会の部活としての発展も大事になってくる。そのためには「六大学野球大会のような大会を作っていく必要があるのかもしれない」。他の大学のダンスサークルには、数百人規模の所もあり、ストリートダンスに限って言えば大学生に限らず全体で推定約600万人いると言われている。もし六大学野球大会のような大学ダンス大会ができれば、大学スポーツ自体がもっと盛り上がる契機になるかもしれない。 [堀之内萌乃] つづきはこちらREAD MORE -
ダンスは学生スポーツになるのか? ②世界で唯一のダンスリーグ・Dリーグとは /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(1)
明大スポーツ新聞 2022.10.14ダンスは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は『世界中すべての人に、ダンスがある人生をもたらす』をミッションに掲げ、10月2日より第3シーズンが開幕したD.LEAGUE(以下、Dリーグ)を開催する株式会社Dリーグ・代表取締役COOの神田勘太朗氏(法卒)に取材を行った。 第2弾は昨年度から始まったものの、すでに多くのファンを獲得しているDリーグの魅力を紹介していく。※写真はすべて株式会社Dリーグ提供。なお、この取材は9月13日に行われたものです。 2021年1月に誕生したDリーグ。生まれたばかりのこのリーグへの注目度は高く、10月2日からはGENERATIONS from EXILE TRIBEを公式アンバサダーに据え、22―23シーズンが開幕した。「ダンス業界を知るきっかけとなるものという意味でプロリーグという構想が立ち上がった」。そもそもDリーグが発足したきかっけは、ダンス業界をきちんと一般の人にも認知してもらいたいというところから。サッカーや野球などの既存のプロリーグを参考にしながら考えられた。そして、その中でも見てもらうための工夫として、ABEMAなどの配信サイトを通じて簡単に無料で視聴できるようにしたという点がある。「若い子たちの世代を中心に見てもらいたかった」。若者のテレビ離れを意識し、スマホさえあればいつでも見られる環境を最初から整えた。 その他に、Dリーグならではの試みとしてオーディエンス投票がある。「僕たち一般の人がフィギュアスケートを見ても他の採点競技を見ても『なんでこのようなことになるの?』と感じることがあると思う」。オーディエンス投票を取り入れることで、観客自身が審査に参加するような仕組みになっている。自分ごとにしてダンスを学び、リテラシーが高まることでダンス業界への理解が深まることを期待している。また、試合形式にもこだわりがある。初年度より企業の参画をしやすくすることや、企業にダンサーが所属し、年俸契約を結ぶなど、他の競技と同じプロリーグの形を作る狙いのもとチームごとの対戦形式を採用。全12ラウンドの獲得ポイントを競い、その上位4チームが決勝ラウンドに進出できるというショーコンペティション形式を取った。ただ、これから始まる新シーズンからは、各チーム総当たり戦のリーグ方式に移行する。これには前述の狙いのほか、チーム同士を比べることで観客の審美眼をさらに磨かせたいという意図もある。「好きなチームはこれだけど、今日はこのチームがよかったとみんな言えるような美的感覚を磨いてほしい」。昨シーズン優勝を果たしたKOSÉ 8ROCKS決勝でKOSÉ 8ROCKSと対戦したavex ROYALBRATS 10月2日より、ついに22―23シーズンが始まった。視聴者の1票が勝敗を左右する異例のリーグ戦。「自分が見ても分からない」ではなく、自身の直感を信じてぜひ観戦してみるのはいかがだろうか。 [堀之内萌乃]つづきはこちらREAD MORE -
ダンスは学生スポーツになるのか? ①ダンスのスポーツとしての魅力に迫る /NEW WAVE ~学生スポーツへの可能性~(1)
明大スポーツ新聞 2022.10.14ダンスは果たして学生スポーツになる可能性があるのか?今回は『世界中すべての人に、ダンスがある人生をもたらす』をミッションに掲げ、10月2日より第3シーズンが開幕したD.LEAGUE(以下、Dリーグ)を開催する株式会社Dリーグ・代表取締役COOの神田勘太朗氏(法卒)に取材を行った。 第1弾はパリ五輪で正式種目となったブレイキンをはじめとしたダンスの魅力を紹介していく。※写真はすべて株式会社Dリーグ提供。なお、この取材は9月13日に行われたものです。 ダンスというとみなさんどんなものを思い浮かべるだろうか。ストリートダンス、コンテンポラリーダンス、社交ダンス…。一口にダンスと言っても、たくさんのジャンルがある。が、これらすべてに共通することがある。それは、ジェンダーギャップがほとんどないという点だ。「多様性と言われている時代の中で、ダンスの文化はそもそも最初から性差別をしていない」。Dリーグを見てみても、男女混在チーム、女性だけのチーム、男性だけのチームが存在し、そのそれぞれが互いに競い合っている。そこには性別の壁のほか、LGBTQも関係ない。「ダンサーというコミュニティベースで語ると、改めて女性だからという見方をしたことがなく、男性だからというのもない」。かっこいいダンスがかわいいダンスに勝ることもあれば、その反対もある。また、男性でも女性のようにしなやかな踊りをできる人もいれば、女性でも男性のようなかっこよさを出せる人がいる。表現という枠の中で考えれば、そこに性差など考える余地はない。女性だけのチームで構成されるI'moonジェンダーの枠を超え男女混合で構成されるMONOLIZ男性チームで構成されるRAISERZ 適年齢というものもあまりない。Dリーグにおける最大の年齢差は、51歳と17歳の34歳差。若手のフレッシュさのある表現と、ベテランの経験値が高い表現。どちらも、一方にはない魅力を持っている。「脳は老いるかもしれないが、心は老けない」。このような年齢層の幅もダンスの魅力の一つだ。 その一方で、パリ五輪で正式種目になったブレイキンは、また違った点で人々を引きつけるだろう。それはダンスの中でも特に活発な身体活動を伴い、競技的である点だ。自分が踊れる表現の幅を広げるために一つ一つの技術を練習し、初めて聞く曲に合わせて即興でその磨いてきたダンスを組み立てる。「その場で何を出していけるかというところでぶつかり合う」。そのため、他のジャンルよりも瞬発性が大事になってくる。また、ダンスについてよく知らない人でも分かるような大技がある点も、このブレイキンの競技性を強める特徴である。Dリーグ唯一のブレイクダンスチームKOSÉ 8ROCKS 老若男女問わず楽しめ、ジャンルごとにそれぞれ異なる魅力を持つダンス。ブレイキンの五輪種目化だけでなく、義務教育でのダンス必修化などにより、今後これまで以上に身近なものになりそうだ。 [堀之内萌乃] つづきはこちらREAD MORE