ホイッスル
心の中に流れるホイッスルの音。感性を刺激する文章で読者を振り向かせ、社会に警鐘を鳴らすコラムです。ここでは、紙面に掲載できなかった色とりどりな声をお届けします。部員のオピニオンにぜひ目を通してください。
-
本が読めない!
明大スポーツ新聞 2022.01.12読書。最近まで私が苦手な事の1つであったそれは、趣味に変わりつつある。小さい頃から外で遊ぶことが好きで、読書とは無縁で生きてきた。だが不思議なことに、国語は最も得意な科目であった。しかし、読書となると別なのだ。なぜかと考えてみれば、教科書や試験問題の文章量は楽しく読めるのだが、数日をかけて1冊を読み切るという忍耐力と継続力がないからだった。面白い展開に入るまでに息が切れ、だんだんと読まなくなり、最終的に放棄してしまう。高校生までに読み切った冊数を数えれば両手で足りてしまうだろう。しかも、本を読むには「本を読むためだけの時間」が必要だ。そんな時間どこにある。ちょっとした隙間時間ならば暇つぶしはスマホで事足りるし、本よりSNSの方がよっぽど楽しいと思っていた。 ところが大学生になり、どうしようもなく暇な時間ができた。通学時間である。家から和泉キャンパスまでは約1時間半。唯一の救いは家が始発駅に近いため、ラッシュ時間帯でも確実に座れることだ。春学期のうちはスマホを見るか、寝るかで過ごしていた。しかし、あまりにも暇なので今までできなかった読書に挑戦してみた。ここで問題なのが「何を読むか」だ。まず真面目な文学は読み切れない。高校生の時に夏目漱石の『こころ』を読み切るのは苦痛であった。かといって自己啓発本も娯楽にはならない。そこで、映画の原作を選んだ。東野圭吾の『ラプラスの魔女』。帰りの電車で読んでいたら、あっという間に最寄りに着いた。本は時間を忘れさせる。それからというもの、映像化されたミステリー作品を中心に2ヵ月かけて3冊を読んだ。私にとっては大快挙である。次はどんな作品に挑戦しようか。[春木花穂] (執筆日:12月13日)READ MORE -
趣味の源
明大スポーツ新聞 2022.01.1112月10日、午後2時すぎ。昼寝から目覚めた私はふとスマホを開き、スポーツナビのアプリを開いた。真っ先に飛び付いたのは各大学の箱根駅伝エントリーメンバー16人の紹介記事だった。明大のエントリーメンバー、そして他大のエントリーメンバーを入念にチェック。これだけでも1時間を要してしまった。 この日は箱根駅伝を走る選手にとっては運命の日となっている。エントリーメンバーから漏れればこの時点で出走の可能性がゼロになる。力のある選手であってもケガを抱えていては、エントリー漏れすることだって当然だ。このニュースを見るだけで箱根駅伝のスタートが改めて実感する。それと同時に1年の終わりも。 なぜ、私がこんなに駅伝を観るようになったのか。一番の影響は祖父の存在だ。小学1年生の正月に祖父の家に遊びに行った時、テレビでは箱根駅伝の中継が流れていた。当時は駅伝についての知識が全くなかった私であったが、選手がごぼう抜きをするシーンを見るのがたまらず、ついつい夢中になってしまった。毎年、祖父とともに箱根駅伝を見ることが自分にとっては恒例となっていた。 興味本位で見ていた駅伝。今となっては記者として取材を行ったり、記事を書いたりするなど仕事の一つへと変わった。小学生の自分には全く描いていなかった未来だった。 大好きな箱根駅伝がもうすぐ始まる。同時に1年前に「明治惜しかったね」と祖父から送られてきたメールも思い出した。しかし、今年4月に祖父は他界。強い明治を取材する自分を見ることのないまま亡くなってしまった。箱根号の制作の佳境に入っている今。完成した箱根号をすぐに祖父の仏壇の前に置きたい思いでいっぱいだ。[永井涼太郎] (執筆日:12月13日)READ MORE -
#NoBagForMe
明大スポーツ新聞 2022.01.11コンビニでアルバイト中、生理用品がレジに並んだ時は当たり前のように茶色の紙袋に入れてお渡しする。本当に隠す必要はあるのかと思いながらも「生理は隠すもの」。そんなふうに生理の話をタブー視する文化に、謎が深まっていく。 中学時代の思い出はただ一つ。「生理に苦しめられた3年間だった」。コミュニケーションに難があった当時、学校にも家の中にも自分の居場所はなかった。生理は4カ月以上も来ず、いざ来るとあまりの鈍痛に何度も死んでしまいたくなった。だけど、相談できる人もいない。やっと手に入れたスマホで、助けを求めた検索エンジンに表示された言葉は「体が未熟なうちは、生理が異常なことがよくあります」。つまり、今は諦めろというのか。私は、この痛みから救ってほしかっただけなのに。 大学生になっても状況は改善しなかった。さすがにもう病院に行っても許されるのではと、電車に乗って、あえて遠くの婦人科へ。恐る恐る説明し、低用量ピルを処方してもらった。説明書には「月経困難症の方へ」という言葉。私のこの苦しみに、ついに名前が付いたんだ。この痛みは、当たり前じゃなかったんだ。やっと解放された気がして、帰りの電車の中で涙ぐんだ。 「私の体はおかしい」と、もっと早く気が付いていたら……。生理は成長の過程で訪れる生理現象であり、決して忌むべきものではない。症状の程度は人それぞれだが、異常な生理を放置すると病気や不妊症につながってしまう。本人も、その周囲ももっと知識を蓄えるべきだ。なのに、いまだにその話題には「言いにくさ」「理解されにくさ」が付きまとう。長年染み付いた「隠す文化」を突然オープンにするのはとても難しいことだが、もしあなたがそのような相談を受けたら、決して否定せず、親身になって寄り添ってあげてほしい。[金井遥香] (執筆日:12月12日)READ MORE -
耐久レース
明大スポーツ新聞 2022.01.11透き通るような青空に、まばらに浮かぶ白い雲。からりと晴れた秋空の下で行われるのは、我が母校の恒例行事だ。生徒たちはさわやかな風を浴びながら、期待と不安に満ちあふれている―― その名も「耐久レース」。距離にしておよそ30キロ、市をまたぐコースを全校生徒が駆け抜ける。この日のために、9月からすべての体育の授業が長距離走に変更。多い人で200キロほど走り込む。字面だけ見るとかなり前時代的に感じるかもしれない。しかし、これが成り立つのも、田舎、伝統を重んじる校風、男子校の三拍子がそろってしまった賜物だろう。 私自身、野球部に所属していたこともあり、長距離走に苦手意識はなかった。だが、きつさは想像の域を超えてくる。何も知らずに走った1年目。何とか止まらず走り抜いたはいいものの、足が棒になってしまった。ブルーシートに座りたくても足が曲がらない。仕方なく尻もちをつくように座り込んだ。タイムを狙った2年目。20キロ過ぎで両足がつって、動けなくなった。とぼとぼ10キロ歩いて帰り、足の裏の皮はむけていた。そして、慣れてきたはずの3年目。友達と楽しくゆっくり走った。それでも足はつってしまった。 現在、私は競走部担当として、日々選手たちを取材している。箱根駅伝を目指す選手たちは20キロを超えるコースを、とてつもないスピードで走れなければならない。私が1年に1回走るだけで苦しかった距離。それを易々と走り切る。これがどれだけ難しいことか。あの時に走ったからこそ、今、選手たちのすごさをより理解できる。その結果、敬意を込めて取材することができる。あの時「何のためにやっているんだ」と思っていた経験が、今に生きている。そう考えると、辛かった思い出が報われるような気がした。[飯塚今日平](執筆日:12月15日)READ MORE -
実家っていいな
明大スポーツ新聞 2022.01.10皆さんはこの年末年始、帰省しましたか。親戚が集まる機会を設けたり、参加したりしましたか。このご時世で賛否両論あるとは思いますが、お小遣いと時間に余裕があるなら、帰って会った方がいいのではないかなと思います。ちなみに私は帰りました。地元と実家が大好きなので(笑) 一人暮らしをしていると、静まり返った部屋でふと考え込むことがある。「私はあと何日家族と一緒に過ごせるのだろうか」「祖父母には何回顔を合わせることができるのだろうか」。持ち合わせの少ない脳みそをかき集めてシンキングタイム開始。年が明けたら就活と卒論をこなし、最後の大学生活を謳歌するだろう。卒業したら、毎日仕事に追われる日々が始まる。何年かすると結婚をして別の苗字になり、子育てに一生懸命になっていたらきっと一息ついた頃にはおばちゃんまっしぐらだろうな。となると一生のうちで、自分の親と過ごす時間は、これまで一緒に過ごしてきた時間よりもずっとずっと短い。 高校一年生の頃から東京に憧れ「絶対に東京の大学生になってやる」という思いだけで上京してきた。別に一人暮らしがつらいわけではないが、大学生になって3回目の新年を迎えた今、家族の存在の大きさに改めて気付かされた。 実家っていいな。美味しいごはんにポカポカお風呂、あったかい布団が待っているだろうな。帰る場所があって、そこで私を迎え入れてくれる人たちがいる。そう考えると無性に帰りたくなった。彼らに「ただいま」を言うために。 [西脇璃緒] READ MORE -
私の強みとは
明大スポーツ新聞 2021.12.16「自己紹介を300字程度で書いてください」。ゼミの入室課題。気合を入れて臨んだものの1問目から頭を抱えた。明スポに入ってから文章を書くのはうまくなったはずだった。しかし書いてきたのは他者のことばかり。自分のことになると書く手が全く進まなかった。 「父は日系カナダ人です」。幼少期から自己紹介のたびに言ってきた。「すごい」。そんな声に少しの優越感に浸る。しかし実際はすごくなんかない。「じゃあ英語話せるの」。大嫌いな質問が飛んでくる。途端に得意になっていた気持ちは萎んでしまう。英語は人並み以下だし、海外に住んでいた経験もない。すごいのは少し特殊な国籍だけ。いつからか自己紹介が恥ずかしく苦手になった。 「埼玉県出身です。趣味は野球観戦とギターを弾くことです」。つまらない自己紹介ができ上がっていく。他に書けることは明スポのことくらい。「硬式野球部を中心に取材しています。選手の人間性が素晴らしくて……」。駄目だ。気付いたら記事になっている。結局他人ベースのことしか書けないのだ。 自分は他者のおかげで成り立っているのだなとつくづく実感した。私の良さを伝えるには、関わってきた人の良さを伝えなければいけない。特に私は人一倍誰かの影響を受けやすかった。高校の講演会では毎回感動していたし、受験期は常に友人に刺激をもらって勉強していた。取材でも必ずその選手の生き様や考え方に感銘を受けてしまう。それくらい私が関わってきた人たちは魅力的だった。それが私の強みなのではないか。自分の力で得た強みではないが、これに勝る強みはない気がした。 私はこれまで書いてきた薄っぺらい文章を全て消し、真っ白な枠内に再び書き始めた。「私は周りの人に大変恵まれた20年間を生きてきました」。[西村美夕]READ MORE -
見方
明大スポーツ新聞 2021.12.15学校前の階段を降り、校門の前でタッチパネルに生徒証をかざす。学校の敷地内に足を踏み入れたとき、急に目に止まった。『ワンサ』。「なんだこれ」。率直に疑問を抱いた。その文字はどっしりとした趣でトラックに佇んでいる。見てから数秒後、頭が文字を認識した。『サンワ』。「あっ、なるほど」。謎が解けた私は、すっきりした気持ちで授業の教室へと向かった。 あの時私がすぐに理解できなかった理由は明白だ。それは文字を左から右に読んだから。通常、横文字は左から右に読む。だが、時にトラックの文字には右から左に読まないと理解できない逆向き表記で書かれているものがある。理由は走行するトラックを進行方向から見たときに読みやすくするため。私が学校でトラックの文字を見たときは、すぐにそのことに気付かなかったので理解が遅れてしまった。 ある一つの視点から物事を見て意味がわからなくても、違う視点から見てみると意味を理解できることはよくある。これはスポーツにおいても当てはまると思う。例えば選手の一つの行為。試合を見ているときには不可解な行動も、取材をしてその選手のバックグラウンドを知ると理解できることがたくさんある。なぜあのときあんな表情をしていたのか。なぜあの時あのプレーをしようと選択したのか。 明スポに入って半年以上が経過し、一度で自分が見たものが全てではないことに気が付いた。選手の心情、選手の持つ過去、それを知って初めて理解できることがある。そのことをわかったうえで、選手や競技について発信ができていたらうれしいなと思う、今日この頃だ。[安室帆海](執筆日:11月17日)READ MORE -
仕事
明大スポーツ新聞 2021.12.15最近、アルバイトを始めた。デパートのアルバイトで、シフトの入っている日は毎日スーツを着て仕事へ行く。白いシャツを着て、黒いスラックスを履いて、真っ青なネクタイを締める。鏡を見て「ヨシ!」のひと声。そうして仕事に行く。昔からの憧れだった。 父はネクタイを締めない。スーツも滅多に着ない。父は職人だ。スーツではなく、作業服を見にまとい、毎朝仕事へ行く。自分は、そんな父が嫌いだった。子どもの頃、「普通のお父さん」といえば、サラリーマン。スーツを着て、電車に乗り、職場ではパソコンとにらめっこ。そう思っていた。でも、自分の父はみんなと違う仕事。「普通」じゃない。そう考えていた。 高校生になったある日、父から、仕事の手伝いをお願いされた。作業現場に道具を運ぶ仕事だ。ご飯を奢ってくれると言うので、こくりとうなずき、行くことに決めた。白いTシャツの上に青いベストを着て、青いワークパンツを履いて、真っ青なブルゾンを羽織る。カバンの持ち物を見て「ヨシ!」のひと声。そうして現場へ向かう。正直、いままで父の仕事を見たことも、考えたこともなかった。ただサラリーマンではない、ということで普通じゃないと思っていた。むしろ、仕事という仕事なのか、とすら思っていた 現場に到着して父の動作を眺める。いつもの父と違う。目つきが違う。作業服姿の父は、「仕事」をしていた。正直、「職人なんて…」と思っていたが違った。自分の誤りに気づいた。サラリーマンだけが仕事人じゃない。誰しも自分の仕事に誇りを持って、責務を真っ当にこなしているのだ。家に帰って言葉が浮かんだ。その言葉は直接伝えられていないけど、ここで言おう。今までごめんなさい。そして、いつもありがとう。 [藤井直也] (執筆日:11月17日)READ MORE -
暇つぶし王
明大スポーツ新聞 2021.12.15 大学に入学してからの唯一の悩み事。それは大学が遠過ぎることだ。4月の私はいずれ慣れるだろうと思っていた。甘かった。何なら通学にかかる時間が日に日に伸びてきているようにも感じる。通学にかかる約1時間半。ここを考慮せずに明大への進学を決意した訳ではない。進路選択の時期には、親からも「1、2年生のキャンパス、遠くないか」と心配された。その時の私は、大学生にとっての1時間半の意味を理解していなかった。部活に励んでいた頃には朝練習のため6時に起きることが当たり前。受験期も早朝に起きて勉強することが多かった。1限が対面授業だとしても耐えられるという謎の自信があったのだ。大学に入学して半年以上が経過した今、1限の対面授業は敵である。 高校生の私がなぜ1時間半の通学に耐えられると思っていたのか。それは、通学時間に授業課題をやったり、読書で教養を蓄えたりして時間を有効活用できると考えていたからだ。実際のところ、①寝る ②ボーっとする ③漫画を読む ④ 電車広告を読む これを永遠に繰り返している。怠惰の限りを尽くしているが、とても本などを読む気にはならない。特に1限のある日は少ない睡眠時間を電車内で補わなければならないのだ。 キャンパスの近くで一人暮らしをすればこの無駄な1時間半問題は解決する。だが、もし私が一人暮らしをした場合、半年後には見事なゴミ屋敷が完成しているはずだ。一人暮らしがダメとなると、解決策は見当たらない。キャンパスが変わるまで、あと1年と少しの辛抱だ。いっその事、暇つぶしのプロ(電車部門)を目指して今日も鍛錬に励もう。それでは、おやすみなさい。 [澤尚希](執筆日:11月17日)READ MORE -
自信持ってください
明大スポーツ新聞 2021.12.15私は人の目が怖い。他人にどう思われているのか気になって仕方がない。だから自信を持てない。身長が高いことがコンプレックスで、視線を向けられているような気がしてしまうことも理由の一つであると思う。だから歩く時は下を見てしまうし、両耳をイヤホンでふさいでいる。 「自信持ってください」。塾講師として働いている私は、ある日生徒にこう言われた。何個も年が下の男の子に励まされる。なんて情けないのだろう。そんな自分が恥ずかしく、嫌になる。とっさに返す言葉が見つからなかった。 その日の帰り道、自分で自分を見つめ直してみた。「あ、また下向いてる」。意識しないと気が付かなかった。もう体に染み込んでしまっている。今まで何度「自信持ちなよ」と言われただろう。部活をしている時も、受験の時も、服を選ぶ時も、友達に何かを提案する時も…。気が付けばどんな場面でもその言葉が付きまとっていた。自分の意見に自信を持つことのできない私は、ついには友達に「私の行きたい所ばかり付き合わせてごめん」と謝らせてしまった。逆に気を遣わせて、一体私は何をしているのだろう。 相手の目を気にしすぎて自分自身がつらくなる。しかしそのせいで相手にも気を遣わせることになる。まさに負の連鎖である。配慮することと相手の目を気にすることは大きく異なるのだ。それなのに私はその二つを一緒くたにしてしまっていた。配慮は欠かせない。しかし、目を気にしすぎると自分の信念が無くなってしまう。考え方を改めないと。 生徒の子のおかげで自分を見つめ直すことができた。いきなり自分を変えることはできないけれど、まずは姿勢を正して歩くことから始めよう。いつか自信に満ち溢れた自分自身でいられることを目指して。 [清水優芽](執筆日:11月17日)READ MORE