新人記者イチ押し選手!2020
未来の明大を担うのは俺たちだ! 1、2年生の体育会選手に焦点を当てた人物記特集です。取り上げられているのは、今後が期待される目が離せない選手ばかり。記事も、今年明大スポーツに入部した新人記者が一生懸命書きました。フレッシュな特集を是非ご一読ください!
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木村卓斗 貪欲に前へ
サッカー 2021.02.162年生ながらトップチーム入りを果たしたSB・ボランチの期待のプレイヤー、木村卓斗(政経2=横浜F・マリノスユース)は、高校時代の反省を活かしチームのために戦うことを第一にプレー。持ち味の球際の強さで、明大の勝利に貢献する。敗北から学ぶ 悔しさから道筋を見いだした。高校3年生になり、迎えた第42回日本クラブユース選手権。この大会は選手たちの進路に大きく関わるため、アピールをしようと個人技ばかりの戦い方に。「チームプレーが全くできていない状態だった」。結果は敗北。痛感したのは、チームのために頑張らなければならないということ。大学生になった今もこの姿勢でプレーし続けている。 新たな環境で 日々の練習、トップチームへの参加が木村を大きく成長させた。自粛期間はトレーナーからのメニューに加えて、坂道ダッシュで心拍数を上げるトレーニング。いつでもトップチームの練習に参加できるように備えていた。「この自粛期間、誰よりも頑張った自信があった」。毎日の積み重ねが実を結んだのは、6月までの自粛期間が明けて2週間後。トップチームの練習に参加することができた。「トップチームに入ることが自分の目標ではない」。木村は前へ突き進む。今年度は17試合に出場。2年生にして存在感を示した。開幕戦ではこれまでほとんど経験がなかったボランチでスタメン起用。ボランチでの視野の使い方やボールの運び方からSBをしていたときには気付かなかったことに気付けるように。「慣れないポジションで苦戦しているが、それを乗り越えるのが楽しい」。不慣れなポジションにも前向きに取り組む。更なる高みへ 勝利にはチームで戦うことが不可欠。明大4年間の目標は、リーグ戦の連覇、トーナメント戦の優勝。サッカー選手として大事な姿勢である〝チームのために戦う気持ち〟を第一に。「自分の活躍で今後も明大のサッカー部は強いと思われるように」。木村は躍進する。[須藤聖広] ◆木村 卓斗(きむら・たくと)政経2、横浜F・マリノスユース。第二外国語はドイツ語を選択。170センチ・68キロ。 READ MORE -
狭間俊至 経験糧につかんだ〝人間力〟
水泳(水球) 2021.02.14〝明中の主将〟狭間俊至(商1=明大中野)。大学デビューとなった公式戦の日本学生選手権(以下、インカレ)で得点を決めた期待のルーキーだ。中学、高校でも全国を経験した男が、スピード感あふれるプレーで、明大をさらなる高みへ押し上げる。 明大の強み 水泳部水球部門は、2017年に体育会へ加入した若いチームだ。スポーツ推薦がなく少数精鋭であり、選手層では他大学に劣ってしまう。それでも明大が全国で渡り合える理由は団結力にある。部員の大半が明大中野高出身であり、長く培ってきた阿吽(あうん)の呼吸で試合を運ぶ。チームスポーツにおいてこれほどの強みはない。そして今年度、高校時代には主将を務め、試合経験も豊富なホープ・狭間が加入した。 重ねた成長 「ただ泳ぐのは面白くない」と、水球を始めた。めきめきと頭角を現した新星は、中学2年次の全国ベスト8に大きく貢献。そして「勉強と部活を両立できる高校に行こう」と、明大中野高の門をたたいた。 高校時代も国民体育大会2位、全国高校総合体育大会(以下、インターハイ)ベスト8と輝かしい成績を残したが、その裏には高校時代の顧問・佐藤太一先生の存在がある。「人としての注意、礼儀も教わった」と尊敬する先生は、毎日朝早くから行われていた練習にも欠かさず顔を出し、指導。水球の技術だけでなく、精神面まで鍛えられた。また、主将の経験も成長の糧に。部員数も多く「なかなか言うことを聞いてくれない」状況下で部員に指示出し。チームをまとめることに苦心したが「自分一人じゃなく、全員の意見に耳を傾ける」。結果、まとまったチームは全国の舞台で躍動。インターハイの準々決勝でも、強豪相手に拮抗(きっこう)した試合を繰り広げるまでに成長した。 期待の大器 大学入学後は、9月のインカレでスタメン起用にふさわしい初ゴール。緊張の中、先輩から言われた「思いっきり打て」を有言実行し、大器の片りんを見せた。大学での目標は「先輩に頼らなくても、自分でシュートを打てる選手になること」。そのために、武器のカウンターに磨きをかけていく。人間力を備えた新戦力は、4年間で技術面もさらに高め、チームの中心へ。勝利のために、ゴールを目指して泳いでいく。 [飯塚今日平] ◆狭間 俊至(はざま・しゅんじ)商1、明大中野高。趣味は音楽を聴くことで、ONE OK ROCKをよく聴く。180センチ・73キロ。READ MORE -
木村颯太 終わりなき成長
競走 2021.02.14関東学生対校選手権(以下、関カレ)1部復帰を狙う明大競走部に追い風が吹く。木村颯太(法1=明星学園)が関カレ2部・U―20全国競技大会(以下、U―20)200メートルで優勝を果たした。ルーキーイヤーを華々しく飾った走りが紫紺を再び輝かせる希望となる。 始まり 「もともと、そこまで足が速いわけではなかった」。小学校の運動会のリレーではメンバーに選ばれたり、選ばれなかったり。彼が陸上人生を走り出したのは中1の時。長距離に力を入れている中学で、短距離の選手でありながらも3000メートルや5000メートルの練習を行っていた。この練習で持久力を向上させつつ、短距離の練習でスピードに磨きをかけた木村。その相乗効果が一線を画す選手へと彼を成長させた。その後中3で200メートルの全国中学校体育大会標準を切り、全国の舞台へ駆け出した。 高い壁 高校では全国で活躍する選手に。高2の全国大会で200メートル2位になり、初めて全国の舞台で入賞を果たした。それでも顧問に掛けられたのは「ここで満足していたら一気に落ちぶれるぞ」という言葉。インターハイ優勝と20秒台を目標に、常に前を目指し練習に励んだ。そして迎えた最後のインターハイ。200メートルに出場し、結果は21秒03で3位。優勝は逃したものの「よく頑張った」。顧問と熱い握手を交わした。「20秒台と優勝」。高校で成し遂げられなかった目標を再び掲げ、彼は明大の門をたたいた。 未完成 「絶対優勝してやる」。高3次のU―20は本来の力を発揮できずに4位と悔しい結果となり、それから1年間この大会に向けて取り組んできた。コロナ禍の影響で練習相手も練習場所もない中、恩師の教えが力に。「自分で考える選手になれ」。自宅付近の100mある道を往復して肺を追い込むなど毎日工夫して練習した。そして自身の強みであるピーキングをここぞとばかりに発揮し、21秒20でU―20の頂点に立った。それでも「20秒台を出せていない」と結果に満足してはいない。課題の150メートルを過ぎてからの後半の走りを改善すべく、高校まで全国の舞台でしのぎを削り合ってきた木村稜(政経1=乙訓)と共に切磋琢磨(せっさたくま)している。飽くなき向上心を胸に、さらなる高みへと走り続ける姿に今後も目が離せない。[大橋直輝] ◆木村 颯太(きむら・ふうた)法1、明星学園。Mr.Childrenのファンで、好きな曲は『innocent world』。165センチ・62キロREAD MORE -
池戸将太郎 目指すは不動の司令塔
ラグビー 2021.02.13素早いパスで攻撃を組み立てる。スタンドオフ池戸将太郎(政経1=東海大相模)の持ち味は正確なパスとキック。今シーズン関東大学対抗戦(以下対抗戦)でいきなり紫紺を着るもその座を手放してしまった。悔しさをバネに来年度こそスタメンを確固たるものにする。 打倒桐蔭学園 父親の影響もあり幼い頃からラグビーを始めた池戸。高校は「桐蔭学園を倒したい」と東海大相模高に進学する。全国屈指の強豪を常に意識して練習に取り組んだ。そして最後の県大会決勝を迎える。勝てば全国高校大会(以下、花園)の切符をつかむ大一番の相手は桐蔭学園高。3年間の集大成とも呼べる試合で主将としてチームを引っ張るも、敗北を喫する。結局一度も目標はかなわず、花園の舞台にも立てなかった。「自分が3年間やってきたことがまだ足りなかった」。悔しさを胸に池戸は大学での雪辱を誓った。 開幕スタメン シーズン直前に行われた慶大との練習試合。池戸はAチームで起用されると、積極的に意思疎通を図り試合をコントロール。「ゲームマネージメントを頭で考えつつプレーできた」。ルーキーながら物怖じしないプレーで、一躍スタメン候補に躍り出る。 そして迎えた対抗戦初戦の立大戦。池戸は負傷した山沢京平(政経4=深谷)に代わり紫紺の〝10〟を背負う。「プレッシャーを感じたが、思い切ってやろう」。試合では得意の素早いパス回しや意表を突くロングパスで相手ディフェンスを翻弄。勝利に貢献しMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)にも選ばれるなど、上々のデビュー戦を飾った。 悔しさを胸に その後の試合もスタメン出場を続けた池戸。だが次第に課題も露呈し始めた。特に感じたのがディフェンス。「コンタクトの部分やスピードが高校とは違った」。相手が強くなるにつれ徐々に表れたフィジカルの差。タックルをしても止められない場面も増える。その結果慶大戦以降はリザーブにも入れず。対抗戦優勝はスタンドで見届けることに。「あの場に立って優勝を味わえず悔しかった」。 今年度得た収穫と課題、そして悔しさをバネにさらなる飛躍を目指す。「体作りをしっかりして来年度は春シーズンから試合に出たい」。〝ブルーヘッド・ヒートハート〟恩師でもある高校の三木雄介監督から教わり大切にしている言葉。この言葉通り冷静な頭と熱き心で、さらなる飛躍を遂げる。 [牛嶋淳太郎] ◆池戸 将太郎(いけど・しょうたろう)政経1、東海大相模高。寮近くにあるタマゴランドのオムライスが好き。180センチ・88キロ。READ MORE -
中山律希 前向きに、ひたむきに さらなる高みへ
ラグビー 2021.02.13ラグビー歴はわずか5年。中学時代から本格的に始めたラグビーだが、その才能はすぐに開花。高校では全国高校大会(以下、花園)出場、高校日本代表選出とスピード出世を果たしてきた中山律希(政経1=天理)。関東大学対抗戦では早くも紫紺をまとい、破竹の勢いで旋風を巻き起こす。 闘球の道へ 「ラグビーやってみないか」。中学校に入学したての頃、監督に誘われ入部。小学生の頃から続けてきたサッカーを辞め、本格的にラグビーに取り組み始めたのは中学2年生から。当初は「何となく動いておかなきゃという感じでやっていた」。しかし、すぐに頭角を現す。初めて出た試合では、3トライを奪う活躍ぶり。この試合をきっかけに「このスポーツ楽しいなって思えた」。腕前は上達していき、選抜にも選ばれるように。「嬉しかった」。気が付けば、ラグビーの世界へと引き込まれていた。 栄冠と悔恨 高校は奈良県の名門・天理高に進学。天理高の練習は、とにかく走らされ「地獄みたいだった」。また生活面での制限も厳しく、高校生活はラグビー一色だった。 高校2年次には花園の舞台を経験。「のびのびとできた」。持ち前の突破力でその存在を全国に知らしめた。そして、最終学年で迎えた奈良県大会決勝。相手は、天理高と並んで奈良の2強と呼ばれる御所実高。前半、10ー10で折り返すも、後半に攻め込まれ点差を広げられる。試合終了が近づくにつれて「みんなが泣き出して、実感が湧いてきた」が、決して最後まで諦める姿勢を見せなかった。しかし、無情にもノーサイドの笛が鳴り響く。最終スコアは10―22。最終学年での花園への道は絶たれた。 テレビで見る花園。部員たちと見ながら「俺たちも出たかったな」。この悔しさを原動力に、大学ラグビーという新たなステージを駆け抜けていく。 ひたむきに 中山は4年間のテーマとして「ひたむき」を掲げる。この姿勢は、天理高のラグビーから得た。ホイッスルが鳴るまで体を張り、走り続ける。天理高には、大柄な選手が少なかった分、最後まで戦い抜くといった精神的な部分を鍛えられてきた。大学では「試合中に頼られるような存在になりたい」。ひたむきな姿勢で、明大に新たな風を吹かす。 [宇野萌香] ◆中山律希(なかやま・りつき)政経1、天理高。第二外国語はフランス語を選択。「響きがよかったので(笑)」。169センチ・105キロ。READ MORE -
安部柚作 大学駅伝での活躍を目指す成長株
競走 2020.10.12百戦錬磨の長距離ランナーへ。安部柚作(法1=国学院久我山)は東京都高校総体5000メートル優勝、2度の全国高校駅伝出場と輝かしい実績を持つ。目標の箱根駅伝出場に向けて課題のロードレースを克服し、上昇中の明大に新風を吹き込む。 強気のレース 「明大の同級生には負けたくない」。そう口にするほど生粋の負けず嫌いだ。陸上人生の軸でもあるその性格を象徴する大会がある。高校3年次の東京都高校駅伝。前年は4位に終わり、全国大会への連続出場が4年で途切れた。当時の「負けるという感覚がなかった」という慢心が敗北の苦汁を喫するきっかけとなった。その経験が彼の勝利への思いをより一層強めた。 1年越しのリベンジへ目指すは優勝のみ。「何が何でも勝とう」。誰よりも強い意志を持って1区のスタートラインに立った。1カ月前の台風の影響で会場が得意のトラックへ変更に。積極的なレースで終始先頭集団に食らいつく。残り1周でラストスパート。持ち味のトラックレースでの強みを存分に生かし、区間賞を獲得した。後続もトップを譲らず、2年ぶりの優勝で全国大会への出場を決めた。安部の区間賞がチームを勢いづけたことは間違いない。 ロードの強化 ロードでも輝きを。東京都高校総体5000メートルでは3年連続で入賞。高校2年次では準優勝、高校3年次では優勝するなどトラックレースにはめっぽう強い。その反面、ロードレースでの対応力が課題だ。 苦い経験がある。高校3年次の全国高校駅伝で、重要区間の1区を任された安部。チームは優勝を狙っていたため、出遅れは絶対に許されない。しかし「ロードに対応するための脚力は落ちていた」。不安は的中し、先頭集団についていけず。トップと1分30秒差の区間28位と出遅れ「陸上をやってきて一番悔しい」レースとなった。 大学での目標は「箱根駅伝に出てしっかり自分の役目を果たす」ことだ。「ロードレースに対応できる筋力や体幹は付けたい」。課題克服に向けて意欲的な姿勢を見せる。負けず嫌いの男が全国高校駅伝の悔しさを晴らす機会は必ずやってくるはず。一味違った安部の姿に注目だ。[永井涼太郎] ◆安部 柚作(あべ・ゆうさく)法1、国学院久我山高。趣味は映画鑑賞で好きな映画は「ハリー・ポッター」シリーズ。171センチ・50キロ。READ MORE -
太田龍之介 世界へ羽ばたく紫紺の“龍”
サッカー 2020.10.12超新星が現れた。太田龍之介(政経1=ファジアーノ岡山U―18)は、前期リーグ戦8試合に出場し4ゴールを挙げ、1年生ながらチームを牽引している。185センチの体躯が生みだすポストプレーが持ち味だ。大学では得点力も開花させている。 躍動する西の龍 PA外正面、鋭いターンでDFをかわし左足一閃。ボールはゴール右下へと突き刺さった。前期リーグ第2節立正大戦で「動きもしなやかで、これからが楽しみ」と栗田大輔監督も期待を寄せるルーキー・太田がその名を関東に知らしめた。前期リーグ戦は主にスーパーサブとして出場。1年生ながら得点ランキングでは6位に位置し下馬評以上の活躍を見せた。 苦難続きの過去 「小学校時代がピークだった」。全国大会出場にナショナルトレセン選出。将来に期待された逸材は中学進学とともに雲隠れした。セレッソ大阪U―15へ加入早々の足首のけがに始まる7度の故障。満足にプレーできない日々は、サッカーを続ける意味を見失わせた。そんな太田をつなぎとめたのは「親の支え」だった。未経験者ながらもサッカーを勉強し息子の練習や通院に付き添い続けた父は「自分にとっていちばんのコーチ」。家族の応援に応えプロになるため、テストを経てファジアーノ岡山U―18に入団する。最後のプリンスリーグ中国では8ゴールをマークした。しかしプロ契約への試金石となった大会では「情けないほど何もできなかった」。ノーゴールに終わりプロ契約は勝ち取れず。大学は「父の住む関東で、いちばん強い明治」。親孝行のためプロに、という強い思いを胸に明大での挑戦を始めた。 目指す先は世界 苦境が新たな武器を与えた。フィジカルで負け歯が立たなかった、明大への入部当初。自粛期間を活用し課題だったインナーマッスルを鍛えた。「相手のパワーを吸収して、当たり負けない」。しなやかな体の使い方が太田をトップチームに押し上げ、ルーキー初得点を生み出した。 野望は大学から世界へのさらなる飛躍。名門インテルの伝説的な選手である大先輩・長友佑都選手(平17政経卒・現マルセイユ)は超えるべき目標だ。目指す先はまだまだ遠い。それでも「明治で培う〝人間力〟にサッカーがついてくる」。悔しさを糧に紫紺の龍は世界へ羽ばたく。 [土屋秋喜] ◆太田 龍之介(おおた・りゅうのすけ)政経1、ファジアーノ岡山U―18。憧れは大迫勇也選手とロベルト・レヴァンドフスキ選手。185センチ・72キロ。READ MORE -
田邊太一 おごらない勝利の立役者
バスケットボール(男子) 2020.10.10あらゆるポジションをこなす高身長FW、田邊太一(情コミ1=福岡大大濠)は、攻守にわたって活躍するユーティリティプレイヤー。高3次の全国高校選手権で準優勝を経験。決勝ではチーム最多得点を挙げている実力者だ。 失われた自信 小学2年次にバスケと出会った田邊。中学時代はジュニアオールスター福岡県代表に選ばれるほどに成長する。そして全国屈指の強豪・福岡大大濠高へと進学。新天地での活躍に意気込むも、現実は甘くなかった。中学とは違い、集まってくる選手も全国レベル。主力の試合にもあまり絡めず自信を失ってしまう時期もあった。それでも「辞めたいとは一度も思ったことがない」。田邊は腐ることなく練習を続けた。 劣等感の打破 彼が3年生になった年の初めての福岡一高戦。同地区の名門校との試合の中、あることに気づく。自分のドライブで相手と渡り合えているのだ。さらには苦手としていたディフェンスでも上手く立ち回れるようになっていた。「この試合で自分が通用すると思い、自信がついた」。日本一常連校では練習から緊張感が違う。バスケに対して非常に意識の高い環境に置かれた田邊は、確かに成長していたのだ。体格や技術だけではない。「試合前の緊張も一切しなかった」と精神面でも強くなっていた。そして、後の大舞台で真価を発揮することとなる。 続いてゆく道 高3次の全国高校選手権。勝ち進み迎えた決勝戦、対するは彼を変えたきっかけでもある福岡一高であった。この年8回目の対戦。相手からすれば自分はマークの薄くなる穴であることを自覚していたので「自分が点を取らなければ勝負にならない」。決心を固めた彼はなんとほぼフル出場を果たしチーム最多得点をマーク。大会中で最高の活躍を魅せた。惜しくも準優勝であったものの、実力を遺憾なく発揮できた男に悔いはなかった。 それから10ヶ月が経った現在。大学バスケを取り巻く環境は未だコロナのあおりを受けている状況。「経験を積むという面でもまずは試合に出たい」。田邊は主力の選手と日々技術を高め合っている。こんな今こそ、自分のペースで着実に。まだあわてるような時間ではない。 [菊地秋斗] ◆田邊 太一 (たなべ・たいち)情コミ1、福岡大大濠高。福岡県出身。試合前はおにぎりかあんパンがマスト。190センチ・74キロ。READ MORE -
鈴木幸恵 家族の応援を胸に 目指すは頂点
バドミントン 2020.10.10どんな球でも食らいつく。身長が高いわけではない。角度のある重いスマッシュが打てるわけでもない。そんな鈴木幸恵(農1=常総学院)が生み出したのは強靭(きょうじん)な守りのプレー。大学では力強いショットも身に付け、攻守に進化した姿で明大を勝利に導く。 家族の支え 小学1年次に友達に誘われ軽い気持ちで始めたバドミントン。才能はすぐに開花した。小学次で関東大会に出場し、中学次には全国大会を経験。華々しい活躍の中、県の強化練習会で後に高校の監督となる常総学院・磯部和弘監督に出会う。「自分が一番吸収しやすい教え方だった」。さらなる成長を求め強豪・常総学院へ進学。このまま順風満帆な競技生活が続くはずだった。だが、そんな生活にも陰りが現れる。高校進学とともに始まった寮生活。それまでの9人家族のにぎやかな暮らしから一変し「辛かった」。そこに追い打ちをかけたのが、厳しい練習と結果が出ないという焦り。そんな時、家族からの応援メッセージが鈴木を救った。「頑張って」。たった4文字の言葉が折れかけていた心をもう一度立ち上がらせた。「自分のためだけでなく、家族のためにも頑張りたい」。 主将の葛藤 「お前なんかキャプテンやめろ」。磯部監督から放たれたのは衝撃の言葉だった。思ったことをすぐに口にできる性格や、主体的な行動を買われキャプテンに抜てきされた鈴木。壁となったのがメンバーの主体性の無さだった。バドミントンは個人競技。個々のレベルを上げなければ勝ち上がることはできない。磯部監督は選手自身に答えを導かせるためにあえて厳しい言葉を投げつける。葛藤の日々が続いた。だが、その期間が自分を見つめ直す契機に。その後鈴木は何度も話し合いを開き、目標を共有。チームは同じ方向を向き始めた。残念ながら目標には届かなかったものの、主将として最後までチームを引っ張り続けた。 大学での目標は日本一になること。決して高くない身長でも負けないよう生み出した粘りのプレー。大学ではさらに粘り強さに磨きをかけつつ、攻撃的なプレーにも挑戦する。高校次にかなわなかった頂点へ向け、快進撃は始まったばかりだ。[宮本果林] ♥鈴木幸恵(すずき・ゆきえ)農1、常総学院高。一人暮らしを始めてから料理に興味を持つ。最近作ったのは豆腐ハンバーグ。157センチ。READ MORE -
下條乃將 芯を曲げずに 箱根を目指す
競走 2020.10.10勢いづく競走部の未来を担う人材・下條乃將(情コミ2=東京実)。昨年11月に1万メートル30分を切って主力候補の仲間入りを果たし、今年の2月にはハーフマラソンに初挑戦。ここでも好調な記録を残した。今季の活躍にも期待がかかる有力ランナーだ。 夢の始まり 入部当初は目立たない存在だった。「箱根で山を登りたい」。山の神・柏原竜二(富士通)の走りに突き動かされ、がむしゃらに走った中高時代。大きなけがもなく過ごし順調にレベルアップしてきた。それだけに故障の続いた大学1年目は苦境の年となってしまう。「初めての挫折を味わった」。時には周りが実力を付けていくなかで、夢がかすむことも。 だが彼には頼れる存在がいた。明大を選ぶきっかけともなった中学時代からの恩師だ。「今でも頻繁に連絡を取っている」と相談を重ねて焦らず練習を重ねていく下條。着実に自己ベストを更新し、徐々に周りとの差が縮まるように。「まだスタートラインに立てただけ」。駅伝出場への本当の戦いはここから始まる。 魂を込めて 「自身のトレードマーク」。こだわりが強いと自身も認める性格。その象徴の一つがハチマキだ。大学陸上では身に着ける人は珍しいものの「集中力を高めるためのツール」と、下條は心の支えとして必ず巻いている。刻まれている言葉は自らが調べて選んだ座右の銘〝一走入魂〟。「一つの走りに魂を込めて」。思いの詰まったハチマキが、彼のレースでの活躍を引き立たせる。 憧れへの道 目標の選手像を聞くと、名前を挙げたのは鈴木聖人(政経3=水城)。前回の箱根で明大をシード権獲得へと導いた立役者だ。彼の背中を見てきて「レースで結果の残せる選手」を目指すように。陸上を始めた時から夢に掲げてきた箱根5区での出走。しかし、前回の鈴木の快走を見て「山を登るのは簡単なことではない」と再認識するように。鈴木の存在は明大で走るうえで超えるべき高い壁だ。それでも「山を登りたい」気持ちは変わらない。憧れの舞台に向けて。〝ハチマキランナー〟の走りは止まらない。 【出口千乃】 ◆下條 乃將(しもじょう・だいすけ)情コミ2、東京実高。好きなアーティストは春茶。グッズを持つほどのファンだという。173センチ・54キロREAD MORE