
【山岳部】壁を愛する明大生、ヒマラヤ山脈に挑む
昨年度、創部100周年を迎えた明大山岳部。創部100周年登山として、今秋東ネパールの未踏峰アニデッシュチュリ(6960m)にOB学生混成隊で挑む。本企画では、山頂を目指す明大山岳部の姿をお届けする。
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海外登山直前インタビュー 川嵜摩周
山岳 2023.10.13いよいよ創部100周年登山が始まる。今秋東ネパールの未踏峰アニデッシュチュリ(6960メートル)に挑む明大のOB学生混成隊。本インタビューではそれぞれの選手の意気込みと思いをお届けする。 (このインタビューは9月13日に行われたものです) 第2回は川嵜摩周(政経4=札幌南)のインタビューです。 ――海外の山に登ることになったきっかけや、なぜ海外の山を選んだのか教えてください。 「別に日本にも山はあるので海外に行かなくてもいいじゃないかと思うかもしれないですが、日本の山と海外の山の違いは、まず気象条件がどちらかというと日本の方が悪いです。でもやはり大きな違いとしてはスケールの大きさで、壁の大きさが全然違うというところです。日本の山だと、例えば富士山だったら3776メートルありますが、そのうち壁が何メートルあるかといったらほぼ0に等しいです。では他の山の壁、例えば、錫杖岳(しゃくじょうだけ)とか、笠ヶ岳という山に大きい壁がありますが、その壁は何メートルかといえば、いっても300メートルとか200メートルくらいです。ネパールに行ったらどのくらいあるかというと2000メートルの壁があります。10倍です。だから、日本だと1日で登り切れる壁が、海外だと壁の中で何泊もしないと上まで行けないような壁が出てきます。後は標高が高いというのもあって、富士山だと大体3700ぐらいですが、ネパールに行ったら7000メートル以上の山もたくさんあるという感じです。今回はその7000メートルぐらいで、しかも壁も800メートルあるという感じです。国内では味わえない高さと標高がありますね」 ――壁が200メートル、300メートルでも長いように感じました。 「めちゃくちゃ長いです」 ――川嵜さんとしてはそれ以上に長いところを求めていきたいということですか。 「そうですね。やっぱりよりでかいところに行きたいと思います」 ――壁を登るだけで何日もかかるとのことですが、同じ壁ではないですよね。 「そうです。同じ壁は壁なんですけど、セクションって言うんですけど、結構たくさんのセクションに分かれているんです。例えばこういう山があったとしたら、ずっと同じのぺっとした壁じゃなくて、例えば頂上付近に懸垂氷河っていうんですけど、ハンギンググレーシアといって雪が壁にくっついていて、これが落ちてきたらもうこの辺りにいる人たちはもう全員死ぬみたいなエリアがあったりして、いろいろな部分があるんですよ。この辺りはすごく筋が縦に走っていて登りやすいルートだけど、こっちはハンギンググレーシアが危ないとか、あと氷がある場所とか、あとすごく岩がたくさんある場所とか、場所によって全然違っていて、今日はもう岩ばっかり登る日とか、今日は氷の壁をひたすら登る日とか、ハンギンググレーシアから逃げて、こっちにルートを取るとか、めちゃくちゃいろいろなセクションがあるので、アイスクライミングもできないといけないし、雪をこいで登るみたいなのも必要だし、ロッククライミングもできないといけないし、全部できないと登れないという感じですね。全部の力がないと、登っていて急にアイスとかが出てくるので、下から見ててよくわからない部分はアドリブというか、出てきたやつをどんどんこなしていきます。ここは氷河帯、クレバスといって、ここ落ちたらもう助からないようなところになっているので、そもそも壁に行くまでのところもめちゃくちゃ難しいという感じですね」 (写真:挑む壁への熱い思いを語る川嵜)――今回の登山でもそういったセクション全てを経験することになるのですか。 「そうですね、全セクション行かないと頂上まで行けないので、全部写真を下から撮って見ながら写真を拡大したりして、大体ここはこういうところだよねというの見るんですけど、見切れないところは現地判断、行ってみてという感じですね」 ――海外の山に挑むということで、普段から準備していることはありますか。 「そうですね、やっぱりいろいろな要素があるんですけど、例えば今回だったら、7000メートル弱なので高所になるんですね。なので、まず高所に対する体を鍛えないといけないので、体のヘモグロビンの数を増やすということと、毛細血管をできるだけ細部まで行き渡らせるという体づくりをしないといけないので、そういったトレーニングを普段はしています。それで、岩が出てきたら今度はロッククライミングができないといけないので、クライミングジムに通ってトレーニングしたり、岩山に通ってクライミングしたりしています。あとは下の雪の場所をこいでいかないといけないので、冬山とかの荷物を背負ってしっかり歩き切る体力みたいなのをつくったり、何が出てきても対応できるようにするという感じです」 ――ヘモグロビンの数を増やすということや毛細血管の細部まで行き渡らせるためにはどのようなトレーニングをするのですか。 「簡単にいうと、ゆっくり長く走るトレーニングなんですけど、自分の最大心拍は200ぐらいなんですけど、じゃあ200ぐらいに対して、今の運動が最大心拍の何パーセントにあたるのかというのを調整して、心拍が上がっちゃうとヘモグロビンとかは酸素がないと生きてけないので死んじゃうので、大体僕だったら65パーセントぐらいの心拍、130とかそのくらいで保ったままひたすら長い間運動するとヘモグロビンがどんどん増えてきます。 でもそれだけやっていたら今度は心臓が弱くなるので、たまには最大心拍ぐらいまで上げて一気に落とすということやると、今度は心臓が強くなります。なので、そのトレーニングの割合を調整しながらトレーニングしてます」 ――普段山に登るときは身体的にしんどいものですか。 「日本の山しか行ったことないのですが正直、富士山で息がしんどいと思ったことはないですね。 7、8月とか、(ガイドとして)ほぼ毎日富士山に登っていたんですけど、富士山に登って降りてきたら、次のバスがもう来ていてそのお客さんと一緒にまた登るんですけど、そうやってもうひたすら登って降りてやっていましたが、特に苦しいとかはなかったです」 ――それは川嵜さんだからということですか。「多分、慣れなんですよね。ずっと高所にいるというか、低酸素状態にいると、慣れてきて、だんだん高所仕様の体になっていくという感じです」 ――今回挑むアニデッシュチュリにはどのような思い入れがありますか。 「思い入れとしては、2018年に同じ日本のチームの青学大がトライしていて、そこで青学大のトライしていた人が今青学大の監督でいろいろな話を聞いたのと、あと、青学大で今主将をしている子と結構仲いいというか後輩で、よくトレーニングを一緒にしたりします。この青学大はこの氷河が悪くて敗退してるんですけど、本当に難しかったという話をしていて、でも『ぜひ登ってきてくれ』って言われたんです。自分たちより先にトライしたニュージーランドの2チームとか、青学大のチームとか、先にこの壁を見つけて登ってる人たちにはしっかり敬意を持って登りたいです」 ――他の山も検討していたのですか。 「もちろん他の山も候補にはあって行こうとした山もあるんですけど、やっぱり未踏峰がいいというのがありました。未踏峰って、ネパールの場合はヒマラヤンデータベースという政府が管理しているデータベースがあって、そこで山の名前を検索すると、何メートルまで登られたみたいな記録が全部出てくるんですよ。なので、正式にこの山が登られたかどうかというのがもうネパールで管理されています。正式に未踏峰といわれる山に行きたかったので、そうなると結構限られてくるんです。今100未満ぐらいあるんですけど、でも未踏峰って登られてない理由が、登りたくなるほどでもない、ただの丘みたいなやつとかだったりします。あとは、標高が低いとか、そこに行くまでにあまりに遠すぎてもう行くまでに1ヶ月かかってしまうとか、あとは難しくて登れないというパターンなんですけど、大体未踏峰の8割9割はそんな登りたくもないような山なんですよ。それで、そのリストの中で登りたいって思うような壁があるルートの山が2、3個しかなくて、(アニデッシュチュリが)そのうちの1個でした。そのうちの他の候補の山は海外の有名人がブログで上げていて、公式な記録じゃないけど許可取ってないけど登りましたみたいなブログが出てきて、あれこれ登られてるじゃないかと。でも政府的には認めてないから非公式なんですけど、でも登られてると分かってしまって、それだとなんか行ってもな、みたいな感じになりました。でもここ(アニデッシュチュリ)は本当に登られてないです」 ――いい山が見つかって良かったです。 「そうですね、これ登ったらネパールで次に登りたいって思うのはあと1、2個しかないんですよね。この次はインドがいいです」 ――なぜインドがいいのですか。 「インドはまだまだたくさん登られてないかっこいい壁があって。しかも山もやっぱりかっこいいですよね」 ――どのような観点でかっこいいと思うのですか。 「岩質も花こう岩で結構赤っぽくていいんですけど、パッと見たらインドの山はやっぱりかっこいいですよ。形がシャキン、みたいな。やっぱり尖ってたほうがいいじゃないですか」 ――山を好きになったきっかけは何ですか。 「正直山じゃなくてもなんでもいいんです。ただ合法的に登っていいでかいものがあれば登りたいみたいな感じです。もちろんいいよって言われたら、リバティタワーも登りたいんです。ただ、やったら怒られるじゃないですか。山だったら登っても怒られないし、なんなら登ったらおめでとうって言ってもらえるしという感じですかね」 ――なぜ登りたいと思うようになったのですか。 「なんですかね。本当に昔からなんですけど、マンション見たら、あ、登りたいと思う人で、多分それは1歳とかの時に、家の中に幼児用のジャングルジムがあったんです。それで、それをひたすら登ってたんです。幼稚園に入ったら、木登りとか登り棒ばかりしていて、小学校入ったら木登りをずっとやっていて、なんか登るのが日常的だったので、その流れなんじゃないかなと勝手に思っています」 ――山登りを続けていく中で挫折しそうになった経験はありますか。 「そうですね、今まで何百日と山に行きましたけど、本当にきつくて無理だと思ったのは1回だけです。その1回が、大学1年生の時の1泊2日の登山だったんですけど、6月ぐらいに初めて夏山に行くみたいな。新人合宿は、雪がある残雪期の山なんですけど、それが終わって、初めて夏山登山に行くとなった時に、荷物を大量に背負わされて、それで灼熱の中 水もあんまり飲ませてもらえなくて歩いたんですけど、その時に本当に辛すぎて、エネルギー不足で足に力入らないのに歩かないといけなくて、それがきつくてきつくて、なんかこの場から、この世界から消えてなくなりたいみたいな、歩きながら思いました。心はもう本当死にたいと思って、だけど死ぬ気力もないし、俺は終わったみたいな絶望を感じました。でもその1週間後ぐらいに、皇居が1周5キロメートルなんですけど、皇居8周してみたんですよ。めっちゃきつそうじゃないですか。40キロメートルで、しかも皇居ってくそつまんないじゃないですか。でも、やってみたら意外とできて、あ、なんかメンタル強くなってきたかも、もう少しやってみるかみたいな感じで、その後はもうきついきついって思うことは全くなかったです」 ――最後に今回の登山に向けての意気込みをお願いします。 「本当に安全に下りてくるというのが大事なんですけど、でもやっぱり登りたいっていう気持ちがあります。命は懸けないですけど、懸けないっておかしいですけど、でも、本当に死なない程度に限界までやってみて、何としてでも登りたいという気持ちです。そうすれば来年以降、自分がやりたい登山が徐々にできるようになっていくのかなと思います。まだスタートラインなので、登り切らないとやっぱりどんどん進んでいかないので、いつまでも登れないようじゃダメだなと。ちゃんと登り切りたいです」 ――ありがとうございました。 [布袋和音]READ MORE -
海外登山直前インタビュー 川嶋すず菜
山岳 2023.10.13いよいよ創部100周年登山が始まる。今秋東ネパールの未踏峰アニデッシュチュリ(6960メートル)に挑む明大のOB学生混成隊。本インタビューではそれぞれの選手の意気込みと思いをお届けする。 (このインタビューは9月13日に行われたものです) 第1回は川嶋すず菜主将(農2=大町岳陽)のインタビューです。 ――最近のスケジュールはいかがですか。 「海外に行く行かないに関係なく、普段の部活をやっています。階段を登るトレーニングや、部活がない日はランニングなどをしています」 ――唯一の上級生としての負担等はございますか。 「今2年生で初めて主将をやっていて、チームをうまくまとめるというのは自分も初めての経験なのでうまくまとめるられるかなと大変だと思う時もあります」 ――海外の山に登ることになったきっかけを教えてください。 「山を選んでくれたのは先輩ですが、行くことが決まってから、今回の遠征に参加して得られる経験を、自分が4年生になった時などこれからに一層生かしていきたいと思って参加したいという風に伝えました」 ――具体的なトレーニング内容をお聞きしたいです。 「トレーニングの内容は、荷物を重りみたいな感じにしてリバティタワーの階段を登ったり、後は15キロメートルくらい走ったりしています」 ――雪山に関して心配とかはございますか。 「今回行くところは日本の山より高い場所で、自分が行ったことないところなので高山病が少し心配です。高山病にならないように予防策として呼吸を意識するといいということを教えてもらったので、そういったところを意識して登りたいです。また、滑りやすくなったりするので、歩き方とかも転ばないように気を付けたいなと思っています」 ――今回の登山で達成したい目標があれば教えてください。 「今回私が参加できるということになって先輩や一緒に来てくださるコーチの方々と一緒に登れるので、先輩方の行動からいろいろなことを学びたいです。後は、初めて海外の山に行くので日本との違いと自分が見たことない景色をたくさん見てきたいなと思います」 ――現在の課題は何だと思いますか。 「体力がないなというのが一番の課題かなと思っています。海外に目標ができたので、できることをやろうと去年よりもモチベーションが高くなってトレーニングを頑張っています」 ――山登りの魅力は何だと思いますか。 「結構登っている時はしんどいなと思うんですけど、山頂とか高いところで綺麗な景色が見れた時は頑張って良かったと達成感がすごいところだと思います」 ――最後に今回の登山への抱負をお願いします。 「自分ができることを全力でやってたくさんのことを吸収してこられたらいいなと思っています」 ――ありがとうございました。 [ジンセウン] READ MORE