(27)早大投手陣に見いだすわずかな好機 〝粘り強く〟が勝負のカギ/東京六大学春季リーグ戦 後半戦展望

硬式野球
2023.05.12

 第5週が終わり、佳境を迎えた令和5年度春季リーグ戦。3連覇の大偉業に挑む明大は2カードを残した現時点で、6勝1敗1分の首位と絶好の位置につける。次節の相手は5季ぶりのリーグ戦制覇に向け、後がない3位・早大。優勝を懸けたこの大一番を展望する。

 

 近年は苦しいシーズンが続く早大だが、昨秋は2位と健闘し、続く今季も快進撃を見せている。開幕カードとなった東大戦では2戦合計23得点で連勝。立大戦も前評判の高かった立大投手陣を攻略し、勝ち点を獲得した。しかし、前節の法大戦は初戦を取りながら、4回戦に及ぶ激闘の末勝ち点を落とした。早大は明大戦で勝ち点を落とせば優勝の可能性は消滅。今季の明早戦は早大にとっても大一番となる。

 

 昨秋から続く躍進の原動力となっているのが、主戦の加藤だ。春にプロ志望を表明した右腕は昨春から先発として台頭し、秋には最優秀防御率のタイトルを獲得。チームを2位に押し上げた。直近の法大戦では2試合に先発し15回と3分の2を自責点1とまさに絶好調。そんな加藤の最大の武器は正確な制球力だ。投球フォームを見ても他投手に比べ並進する時間が長く、球持ちが良い。制球が安定している分、配球は外角に偏りがちだが、ピンチでは強気に内角を攻め、打者の懐を突く。この投手の投球で最も注目したいのは〝直球の使い方〟だ。加藤の直球は常時140キロ前後とリーグ内でも特段速いわけではない。しかし直球を投じる際と大差ない投球フォームでキレのいいカーブやチェンジアップを投げ分けるため、打者は追い込まれるとどうしても変化球をケアする必要がある。その結果加藤がクイック気味に投じた直球に振り遅れてしまう場面が多く見られる。昨年度明大は2度対戦したが、いずれも好投を許しており相性は微妙。1回戦は明大主戦・村田賢一投手(商4=春日部共栄)とのマッチアップが予想されるため、加藤の疲労はあれ、ロースコアの展開になるだろう。加藤攻略がこのカードのポイントになることは間違いない。

 

〈参考:加藤 対明大成績〉

・令和4年度春季リーグ戦 明早2回戦 明大1―2早大 ○9回1失点

https://meisupo.net/news/detail/13710

・令和4年度秋季リーグ戦 明早1回戦 明大2―0早大 ●7回1失点

https://meisupo.net/news/detail/14238

 

 そんなエースの踏ん張りに呼応するかのように好調を維持しているのが野手陣である。第5週終了時点でチーム打率は.301とリーグトップ(明大は.288で2位)。さらには打率上位3傑を熊田、中村将、尾瀬で独占。これに山縣、印出、小澤も加わりスタメン野手8人中6人が打率3割越えと手がつけられない。打線は1番から左打者と右打者がジグザグに並んでおり、試合終盤の継投が難しい厄介な打線。守備面では昨季二塁を守った熊田が遊撃に再転向。山縣との二遊間に捕手の印出も含め、リーグ戦経験のある実力派の選手でセンターラインが固まった。それが功を奏し、安定した試合運びができるようになったのが今季の早大だ。全体を通して明大投手陣がこの強力打線に対していかに踏ん張ることができるかがこのカード最大のカギとなるだろう。

 

 ここで大一番・早大戦のスタメンを予想。今季はほぼ不動のオーダーで戦う両チームなだけに、野手はこれに近いメンバーが名を連ねるだろう。2回戦の早大先発には東大2回戦で好投した鹿田や法大戦2試合で先発した清水大ではなく、今季3登板の速球派・中森を予想した。鹿田や清水大は法大戦で打ち込まれ、状態の良い田和も4回戦で負傷降板かと見られる降り方をしている。ならば昨春は6試合に登板した経験と苦しい台所事情を鑑み、中森今季初の先発に起用するのではないか。抑えの伊藤を先発に持ってくる可能性もあるが、コンディションが万全でないと報じられている。また昨季伊藤を先発に立てて明大に大敗したことを踏まえても先発起用は考えづらい。一方の明大は空き週を挟み、休養十分。村田、蒔田稔投手(商4=九州学院)の両右腕の先発と見て間違いない。1回戦は村田である程度回を稼ぎ、投手起用に余裕を持った状態で2回戦に挑むというのが明大ベンチの青写真か。

 

 近年最高の戦力を誇る早大だが、つけ入るスキがあるとすれば投手陣だろう。法大戦では4試合を戦い、加藤が先発以外の試合で課題が露呈した。今季の早大は加藤が先発した試合の防御率が1.02と安定しているのに対し、他の投手が先発した試合は4.72と不安がある。さらに早大は法大4回戦から中3日で明大戦を迎える過密日程。投手運用は厳しく、このカードが長引くほど中継ぎ陣の充実した明大有利の展開になると考えられる。いずれにせよ、疲弊した早大投手陣の状態を考えると、序盤の失点を抑え、粘り強く終盤勝負に持ち込めば大いに勝機があるだろう。早大戦のキーマンは3番・遊撃手の宗山塁内野手(商3=広陵)だ。宗山は大の早大キラー。昨年度放った6本の本塁打の内3本は早大戦で放ったもの。特に昨季の早大2回戦では、5打数5安打2本塁打7打点と神がかり的な活躍を見せた。今季は他大学バッテリーの厳しいマークに遭い打率.273と本来の実力を発揮できていないだけに、早大戦での活躍に期待したい。

 

 21年前の秋季リーグ戦。明大は今季と同じく水曜の法大戦を落とした直後の早大に連敗を喫し、優勝を逃した。今度はその借りを返す番だ。

 

[上瀬拓海]