五十嵐唯愛 不屈の精神で挑む 悔いなきテニス

硬式庭球
2022.10.10

 「テニスを悔いなく終わらせる」。五十嵐唯愛(政経1=四日市商)は個人、団体で全国制覇の実績を持つ期待のルーキー。その裏には悔しさを乗り越えてきた過去があった。後悔を残さないために実直な性格と技ありのプレーで4年間を突き進む。

 

心技で勝利へ

 緩急をつけたプレーで相手を翻弄(ほんろう)し、ボレーで決める。フラット系の球で絶えず攻めていく一般的なプレーとは異なり「女子では珍しい」と自負するそのスタイルこそ五十嵐の武器だ。

 勝利への秘訣(ひけつ)は精神面にもある。「白黒はっきりしている」。五十嵐は自身の性格をこう評す。一瞬のスキが勝負を分けるテニス。コートの外で輝く決断力が試合での緩急のある攻めにつながっている。

 

悔しさを糧に

 主将として臨んだ高校3年次の全国選抜高校テニス大会(以下、選抜)。責任がこれまで以上にのしかかるこの舞台に向け「部内では一番練習していた」。朝は5時台に起床し1人で朝練。放課後も残ってひたすらテニスに打ち込んだ。

 試合当日、団体決勝では先に2敗し後がない状況だったが、掲げてきたチーム力で大逆転を起こし、四日市商高初の選抜優勝に導いた。だが、五十嵐は過去3度負けていた相手に決勝で再び敗れていた。チームが勝った喜びと同時に、ライバルに敗北した悔しさが残る。それでも前を向き団体戦と並行して行われていた個人戦では、得意の緩急をつけたプレーで勝ち進む。そしてついに迎えた決勝。相手はくしくも団体決勝で敗れた因縁の選手だった。互いに準決勝で3時間を超える試合を終えたばかり。万全な状態ではなかったが、五十嵐は冷静さを失わない。「チャンスがあると思って自分らしいプレーができた」。先にリードを許す展開でも持ち前の判断力を生かし、相手の疲労を逃さず足を止めさせないよう攻め続けた。最終セットは6―1という圧倒的なスコアで勝利。4度の敗戦の末雪辱を果たし、自力で悲願の優勝をつかんだ。

 

最後のテニス

 彼女は明大で16年間のテニス人生に幕を下ろす。残り限られた時間での目標は〝悔いなきテニス〟。幾多の試合で培ってきた自分らしいプレーに加えさらなる進化へ。五十嵐のテニス人生最終章はまだ始まったばかりだ。

 

[高橋佳菜]

 

五十嵐 唯愛(いがらし・ゆいな)政経1、四日市商高。何時間でも弾けるというピアノは友人を見て学んだ。158センチ。