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野畑美咲 大分から世界へ飛び立つスナイパー

射撃 2022.10.08

 高校1年次に射撃を始めた野畑美咲(商1=由布)は1年半ほどで日本の頂点に立った。周囲からのプレッシャーを抱えながらも、射撃が好きという気持ちを原動力に世界へ挑む。

 

射撃との出会い

 野畑が射撃を始めたのは高校1年だ。第1志望の高校に合格することができず、第2志望であった由布高校に進学。そこでは父が強豪の射撃部で顧問をしていた。小学校でバレー、中学校で卓球を経験していたが、「新しいことに挑戦してみるのもいいのではないか」という思いから射撃部に入部。そこから日本一への挑戦が始まった。

 射撃を始めた頃から同級生よりも高い点数を撃ち、周囲からセンスがあると言われることも多かった。しかし、彼女はそれだけで日本一に上り詰めたわけではない。コロナの影響で学校がないときも、父が射撃場を開け練習に励んだ。また「普通の高校生ではできないような経験もさせてもらった」と、多くの遠征や大会を経験。いくつもの努力を積み重ねて着実に腕を上げ、高校2年次の全日本選手権では見事日本一に輝いた。高校3年次には国公立大学への進学を目指すコースに所属。忙しい部活動の傍らで勉強にも力を入れていた。しかし一般の大会に出場する明大射撃部の選手が目に留まる。姉の野畑伽奈(商4=大分雄城台)を追いかける形で、明大に進学を決めた。

 

世界へ羽ばたく

 大会に出場するたびに結果を残し、競技人生は順風満帆のように思えるが、時には苦しい思いをすることもあった。ドイツで行われたジュニアワールドカップに出場した際に、自分の思い通りに射撃ができなかった。いつも通りの点数を出せていたらファイナルまで残れていた。緊張に打ち勝つため、練習時から銃や時計の置く向きまで完璧にそろえ、いつも通りを心がけるようにしているはずだった。しかし国内ではほとんど負けなしである自分が世界を目の前に思うようにいかず、国際大会の難しさを実感。また、周囲からの期待がプレッシャーとなり「もし外したらどうしようと頭の中で考えてしまうことが増えた」。持ち味の攻めの姿勢は、もともとやっていたバレーや卓球の経験のたまものだ。しかし最近の大会では守りに入った射撃をしてしまうという新たな課題が生まれた。しかし野畑は自分の強さの秘訣として「マイナスな発言をしないこと」を挙げる。メンタルの強さが最大の武器だ。そしてやはり野畑の見据える場所は2年後のパリ五輪。「金メダルを獲りたい。でも一番は自分の射撃をすること」と謙虚に目標を掲げる。「大学卒業後も射撃を続けていきたい」。高校1年の射撃との出会いが、野畑の人生を大きく決定づけた。次なる狙いは世界だ。

 

[尾﨑陽菜]


 ♥野畑 美咲(のばた・みさき)商1、由布高。オフは友達と東京観光をしている。158センチ


(写真は本人提供)


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