(32)明スポ記者が聞く! 大学生金メダリスト・川除大輝が見る景色とは
3月14日に閉幕した北京パラリンピックで一人の大学生が快挙を成し遂げた。クロスカントリースキー男子20キロクラシカル(LW5/7、両上肢機能障害)で、日本選手団の旗手を務めた川除大輝(日大/日立ソリューションズJSC)が金メダルを獲得。冬季パラリンピックの日本男子金メダリスト最年少記録を更新しただけでなく、出場全種目で入賞を果たした。まさにパラクロスカントリースキー界の次世代エースとも呼べる。そこで今回、明大スポーツは私たちと同じ大学生である川除のことを大学生世代にさらに知ってもらうために北京大会の振り返りや普段の練習、パラスポーツのことについてお話を伺った。
平昌→北京 成長の4年間
平昌大会は「初めてのパラリンピックで、どういう動きを取っていいか分からなかった」。試合の数日前から緊張が続き、一試合一試合に全力で向き合うのが精いっぱいだった。フォームについても「がむしゃらにやって、体力だけで持っていく考え方だった」と4年前の自分を振り返る。
平昌大会後、今のままでは勝てないと実感しフォームの改善を決心。日本にポールを持たずに走る選手がいないため、海外選手の動画と自分を見比べてささいなことでもまずは取り入れ、試行錯誤を重ね改良した。さらに北京は2度目のパラリンピックということもあり「調整しやすかった」。得意の20キロクラシカルをターゲットレースに定めたことが、金メダル獲得につながった。
パラリンピアンであり大学生
現在21歳の川除は名門・日大スキー部に所属する。寮の周辺や高尾山で練習を行い、日大ではスポーツ科学部に通う4年生でもある。特に高所馴化についての授業は、標高の高い場所で行われるスキー競技にも通じるという。また、普段の様子を伺うと、昨年の東京五輪後のスケートボードブームに乗じてスケートボードを始めたそう。快挙を成し遂げた一方で大学生らしい一面も見せた。
1年次は寮の仕事や授業と練習の両立が「大変だった」と振り返るも、昼食を互いに作り合ったり同期と同じ部屋で過ごしたりする寮生活が「楽しいので(あと1年で)卒業するのが寂しい」。金メダリストパラリンピアンでありながら大学生でもある川除のラストイヤーが始まる。
新たな飛躍へ もっと広まるには……
北京大会で日本選手団の旗手を任せられたことで「それ相応の結果を出さなければならない」。重圧がのし掛かるものの「そのプレッシャーをはねのけて成績を出せば、よりパラリンピックやクロスカントリーを日本中に知ってもらえる」と考えたという。また、まだまだ認知度の低いパラクロスカントリースキーについて「みんなに知ってもらえればいいな」。そんな思いから4年前は断りがちだった取材も受けるようになった。
現在パラウインタースポーツは新しい若い選手の発掘が課題となっている。川除自身も、もともとは健常者と一緒にスキーをしていた中でパラクロスカントリースキーに誘われた。始めたばかりの頃は「健常者の一人だと思って活動していたので、そこで自分が障害者と認めるのが自分の中では悔しかった」。しかし長く続けることで上達し結果も出るようになる。自分の成長を感じ「世界が広がっていく」ことが楽しさの秘けつだと話す。「今は良い経験ができているので、(これから競技を始める人は)その一歩が踏み出せればあとは気楽になると思う。その一歩が少し踏み込みにくいと思うので僕たちのスキーを見てもらって、やってみたいなと思ってもらいたい」。
自らのプレーで新たに観戦する人、競技を始める人を増やすために、さらなる飛躍を目指す。北京を終えた今「次の4年後でも金メダルを取りたい。あとはワールドカップで総合優勝したいというのも目標」。ここまで場学続けてきたからこそ見える景色。多くの人に感動と勇気を与える滑りで、パラスキー界をけん引する姿を見続けたい。
[出口千乃]
◆川除 大輝(かわよけ・たいき)日大。北京パラリンピックで金メダルを獲得。
※写真は本人提供
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