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(36)シーズン後インタビュー 佐藤伊吹

フィギュアスケート 2022.02.24

 思いを込めた演技で氷上を彩り、見る者の心を躍らせてくれた選手たち。シーズンを通してそれぞれが味わった思いはさまざまである。新型コロナウイルスの影響にも負けず戦い抜いた今シーズン。その振り返りのインタビューをお届けする。

 

(この取材は2月1日に行われたものです)

 

第7回は佐藤伊吹(政経3=駒場学園)のインタビューです。

 

――今シーズンを振り返っていかがですか。

 「全日本で自分の力が出せて良い成績が残せたということが、シーズン後半にも良い影響を与えたと思います。夏くらいはリンクがなかったりオリンピックで閉まったり、割と自分の中では大変なこともありましが、その中でできることを見つけてやってきたことで結果が出たというのはとても良かったですし、うれしかった1年でした」

 

――難しい状況の中で工夫した点などはありますか。

 「曲かけ練習の数自体もおそらく普通に神宮で練習している時と比べたら少なくなっていたので、その中でも本番でいい演技をするためには1回1回の練習で実際に本番を自分の中でイメージしてやることで取り戻して、試合に向けてやっていくということを考えていました。あとはジャンプの調子がシーズン前やオフの時は良くなかったのですが、貸し切りの数が少なかった分、他のリンクの一般営業の時間に行って、そこで1人で自主練というかいろいろとどうやったら良くなるかを日々考えながら練習していたことがシーズン中のいい結果に結びついたのかなと思っています」

 

――シーズン終盤にかけて調子が上がっていった要因は何だとお考えですか。

 「ブロック(東京選手権)の前や東(東日本選手権)は本番では失敗しましたが、練習ではそんなに悪くなかったので、本番で『あれ』という感じでした。自分の中ではそういった感じだったので、シーズン前に比べたらシーズンに入った時の方が調子自体は良くて。でも本番でできない試合が2試合くらい続きました。そこから本番で緊張をうまく集中に変えられるようにするにはどうすればいいかを考えて練習していました。その中で、練習の時から『曲かけの前にこのジャンプとこのジャンプを確認して曲かけをする。本番になっても前の選手の点数が出る前に、練習と同じようにこれとこれを確認する』というルーティンのようなものを決めました。ブロックの後から東までの丸1ヶ月間本当に同じ動きを徹底して、東を迎えて、東でそれをやったら少し崩れたけどブロックよりはよかったので『あ、これでいけるんだ』と思いました。それが全日本まで続けられたというのが一つ要因というか良かったのかなと思っています」

 

――今シーズンは全日本の枠も少なく激しい争いになったと思いますが、そのプレッシャーはありましたか。

 「シーズン前に調子が良くなかったことや、ブロックで崩れたりしたことなど、そういうことから考えて正直言って東から全日本に行くのは難しいと自分の中では思っていた部分もありました。それでもブロックより悪くなることはないと思っていたので、あまり東の時に枠を意識しませんでした。諦めではありませんが、それが逆にプレッシャーになりすぎなかったのかなと思います。あまり特別と思わないようにしていました」

 

――今シーズンに点数をつけるとしたら何点くらいでしょうか。

 「うーん、95点かな。やはり全日本の結果が良かったことが一番大きいと思います。インカレ、国体がもっと完璧にできればこれが100点になったかもしれません」

 

――SP(ショートプログラム)は2年目で1年目とは違った部分もあったと思います。そういった面も含めていかがですか。

 「1年目は難しいと思いましたし、まだうまく滑りこなせていないなと思ったので、2年目もこれでやろうという気持ちになりました。実際数をこなしたというのもありますし、ステップなどをたくさん練習して余裕が生まれたからこそ、よりジャンプに力を入れられるようになりました。ステップのレベルが去年よりも上がった試合が多かったのは、2年目にしっかりできて良かったなと思ったところです」

 

――昨シーズンは全日本でSP落ちを経験しました。今シーズンはやはりSPに力を入れて取り組んだ感じでしょうか。

 「それはめちゃめちゃそうです。実際今年の全日本の前も、6回SPをかけて1回FS(フリースケーティング)をかけるくらいの割合でした。本当にSP落ちをせずにFSを滑るという自分の中での大きな目標があったので、そこは今までと同じ練習をしていたら駄目だと思って、何か変えなければいけないと思っていました。それで圧倒的にSPに集中して練習したらさすがにできるのではないかと単純に思って、そこを変えてみた感じです。実際全日本のSPが終わった後は『やばい、これはFSやってなさすぎた』という気持ちでいっぱいでした(笑)」

 

――FSは振り返っていかがですか。

 「ブロックであそこまで崩れたことがなかったので、若干東の時も前回(ブロック)の記憶がよぎって不安になることもありましたが、構成を少し落としたことで気持ち的にも余裕ができました。構成を落とすのは一瞬は悩みましたが、これからのシーズンのことを考えるとあの選択をして良かったなと思っています。 (安定感と挑戦しなければ点数が出ないというバランスは難しいところですね)はい。基礎点が低くなるし、私はとても高いジャンプでもないですし、ジャンプで大きな加点が取れるわけでもないので、ジャンプの部分で点が取れなくなってしまうのではないかという心配はありました。でも結果的にそれが安定感につながってノーミスにつながったという感じですね」

 

――全日本で念願だったノーミスの演技をして、その時にどんなことを感じましたか。

 「全日本が終わって思ったことは、本当に努力は裏切らないというか、頑張ってきて良かったと思いました。頑張ってきたことはやはりいつかは結果として返ってくるということを感じました」

 

――自分との戦いが続く中で支えになっていたものや原動力はありますか。

 「私の中で全日本という舞台は今年で5回目でしたが、何回出ても特別な舞台だなという自分の中でのイメージはずっと変わっていなくて。そこでの雰囲気だったり、みんなが応援してくれたり、多くの人が見てくれる中で滑るということが結局1年間を通して自分のモチベーションになっているなと思います」

 

――改めて、佐藤選手の中で全日本は具体的にどんな風に特別なのか教えていただけますか。

 「何が違うんだろう(笑)物理的には会場が本当に広いし、上を見ても観客席が広すぎるし、カメラの数も違うし、そういったところから特別さを感じるというのはもちろんのことです。それに加えて全国トップクラスの人しか出られないというレベルの高さですかね。周りのレベルや雰囲気が特別感を出しているというか、そういう空気があります。カメラの数には圧倒されますね」

 

――引退が近づいていますが、それを意識することはありますか。

 「ありますね。3年生に入ったくらいからです。全日本には出られていますが、あまり成績を残せていないままここまで来て、あと2年と思ったら本当に時間がないし、限られたチャンスをどうモノにするかというのを考えることはありました。練習の時にちらつくこともあります。もうカウントダウンが始まっている感があるので、後悔しないように練習しなければいけないなと思っています」

 

――リンクも大学も同じである樋口新葉選手(商3=開智日本橋学園)が五輪出場を決めました。刺激を受けたりすることはありましたか。

 「全日本に向けて新葉が頑張っているのも見てきたので、全日本での緊張やプレッシャーはやばいだろうなと思いました。それに比べれば自分は何も懸かっていないので、緊張しなくても平気だと気楽に思えました。新葉がとても頑張っていたので、やはり4年に1回の五輪出場が懸かった舞台でしたし、特別な試合を戦っているんだと私も刺激を受けました」

 

――ラストシーズンはどういう1年にしたいと考えていますか。

 「今シーズンを超えたいなと思っています。それで終われたら最高かなと思っています」

 

――最後にファンの方々に向けて一言お願いします。

 「いつも応援ありがとうございます。今シーズンは初めてSPとFSでノーミスができました。皆さんの声援がたくさん聞こえて、それがとても助けになったので、本当に感謝しています。来シーズンは最後になると思いますが、今シーズンを超えられるような演技をすることと、みんなに感謝の気持ちを伝えられるような演技をすることを目標にして頑張りますのでこれからも応援よろしくお願いします」

 

――今シーズンを表す言葉を『過去最高』にした理由を教えてください。

 「過去最高の点数と成績を残せましたし、成長幅も過去最高に大きかったと思ったからです」

 

――ありがとうございました。

 

[加川遥稀]

 


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