耐久レース
透き通るような青空に、まばらに浮かぶ白い雲。からりと晴れた秋空の下で行われるのは、我が母校の恒例行事だ。生徒たちはさわやかな風を浴びながら、期待と不安に満ちあふれている――
その名も「耐久レース」。距離にしておよそ30キロ、市をまたぐコースを全校生徒が駆け抜ける。この日のために、9月からすべての体育の授業が長距離走に変更。多い人で200キロほど走り込む。字面だけ見るとかなり前時代的に感じるかもしれない。しかし、これが成り立つのも、田舎、伝統を重んじる校風、男子校の三拍子がそろってしまった賜物だろう。
私自身、野球部に所属していたこともあり、長距離走に苦手意識はなかった。だが、きつさは想像の域を超えてくる。何も知らずに走った1年目。何とか止まらず走り抜いたはいいものの、足が棒になってしまった。ブルーシートに座りたくても足が曲がらない。仕方なく尻もちをつくように座り込んだ。タイムを狙った2年目。20キロ過ぎで両足がつって、動けなくなった。とぼとぼ10キロ歩いて帰り、足の裏の皮はむけていた。そして、慣れてきたはずの3年目。友達と楽しくゆっくり走った。それでも足はつってしまった。
現在、私は競走部担当として、日々選手たちを取材している。箱根駅伝を目指す選手たちは20キロを超えるコースを、とてつもないスピードで走れなければならない。私が1年に1回走るだけで苦しかった距離。それを易々と走り切る。これがどれだけ難しいことか。あの時に走ったからこそ、今、選手たちのすごさをより理解できる。その結果、敬意を込めて取材することができる。あの時「何のためにやっているんだ」と思っていた経験が、今に生きている。そう考えると、辛かった思い出が報われるような気がした。
[飯塚今日平](執筆日:12月15日)
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