(111)箱根駅伝事後インタビュー⑨/杉本龍陽

競走
2022.01.04

 箱根駅伝(以下、箱根)は、残酷だ。わずか26秒に泣きシード権を落とした昨年度。再起を誓って臨んだ今大会だったが、結果は総合14位。またも箱根は明大の前に立ちはだかった。今回は、悔しさをにじませる選手たちのコメントをお届けする。

 

 今回は6区を走った杉本龍陽(政経3=札幌日大)のインタビューです。(この取材は1月4日に電話で行われたものです)

 

――6区を走り終えた時の心境はいかがでしたか。

 「やはり悔しいという気持ちが一番でした。一斉スタートした中では絶対に1番で襷を持っていきたくて、山梨学大がギリギリ前で見える位置でスタートしていたので、追い付きたいという気持ちがありました。駿河台大と中学大には先に行かれてしまって、山梨学大も結局追い付くことができなかったので悔しいです」

 

――後半は伸びたのでしょうか。

 「そうですね。ラスト3キロの平地に入ってからは結構上がったのかなと思います」

 

――それは力をためていたというよりも粘ったのですか。

 「全然ためてはいなかったです。途中から本当にきつくて、恐らく下りに入る一つ前の定点までも時間がかかっていたと思います。ですが、最後は佑樹さん(山本駅伝監督)からも『前の見える位置で渡そう』と言われて、富田(峻平・営3=八千代松陰)が少しでも走りやすいところで渡すために、力を振り絞りました」

 

――現在の足の状態はいかがですか。

 「前田舜平前主将(令3政経卒)から、『走った後1週間ほど歩くのもままならない』と言われて僕も覚悟したのですが、現段階だと走るのは少しきつくても歩くことはできているという状況です」

 

――復路のスタート地点に佐久間秀徳選手(商4=国学院久我山)と共にいる姿がありましたが、何か言葉は交わされましたか。

 「佐久間さんも6区を志願してずっとやってきて走れなかったわけなので、『任せた』というふうに言ってもらいました」

 

――6区の候補が何人か挙がる中で、走ると決まった時の心境はいかがでしたか。

 「走りたい人も多くいて、僕の同部屋の漆畑くん(瑠人・文3=鹿児島城西)も6区の候補だったので、やはり選ばれたからには自分がしっかりと走らなければいけないという気持ちがありました」

 

――小田原中継所の襷リレーで、富田選手が大きな声で声掛けをしているのが印象的でしたが、その声は届きましたか。

 「ちなみに何も聞こえませんでした(笑)。僕自身がもうその時はきつかったので、後からみんなに言われて映像を見返してみたら、富田がすごく叫んでいるなと思いました(笑)。僕自身も富田に襷を渡して、背中でも押して『頑張れ』と言おうと思ったのですが、襷をもらった瞬間、富田がすぐにいなくなってしまって。手を伸ばしたのも恐らく届かなかったと思います(笑)。その前に力尽きました」

 

――その後の選手たちの走りは見ましたか。

 「はい、帰りながら見ていました。富田が最初の方から区間上位で走っていると聞いて、さすが富田だなと思いました。後続の選手もシード権獲得に向けて精いっぱい追っている様子が伝わってきました」

 

――山本駅伝監督が以前の取材で、「杉本選手が気持ちの面で成長したから、今年度結果を残してきたのだろう」とおっしゃっていましたが、ご自身ではどう思いますか。

 「自分自身あまり強くなりたい思いがなかったのですが、春先あたりでタイムが出てからは陸上が楽しくて、そこからずっとタイムを出したいと思ってやってきました。予選会では初めてチームと一緒に走れたことも楽しかったですし、一方で全日本大学駅伝は走れなくて悔しい思いをしました。そのようなところから気持ちの成長といいますか、モチベーションにつながっているのかなと思います」

 

――やはり1、2年次との気持ちの変化から駅伝出走などの結果につながりましたか。

 「そうですね。佑樹さんからもずっと『お前は欲がない』というふうに言われていたので、最近はやっと自分の中でも欲は出てきたのかなと思います」

 

――来年度がラストになりますが、それに向けての意気込みはいかがでしょうか。

 「今回の箱根で悔しい思いをして、この借りを返せるのは箱根でしかないと思うので、それに向けて1年間自分がやれることを考えたいです」

 

――ありがとうございました。

 

[覺前日向子]