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(24)全日本選手権事前インタビュー 山隈太一朗

フィギュアスケート 2021.12.20

(この取材は12月13日に行われたものです)

 

山隈太一朗(営3=芦屋国際)

――体調なども含めて、今の調子はいかがですか。

 「いいと思います。特に悪いところもなく、しっかり追い込めているので。体調もとてもいいと思います。ジャンプはやっとかみあってきたなという感じですね。1年間ずっと頑張ってつくってきたものが少しずつ形になり始めてきていて、大分それがまとまってきて…という感じです」

 

――現在の出来はどのくらいですか。

 「80、90はいってるのではないでしょうか。多分そのくらいいけていますね」

 

――調整がうまくいったということでしょうか。

 「今回に関してはあまり調整しようとは思っていなくて。結果的に今うまくいっているというだけで『いつまでにこうして〜』など綿密に計画を立てていた訳ではないです。(シーズンを通して)常にうまくいこうとしていて、それがやっと形になってきたという感じです。結局調整というものは準備段階の自信に関係があるものなので、出来上がったと思うことはないです。今回はまず体をどこも怪我していないというのが一番大事だし、そこは自分がちゃんとケアに費やしてきたり、コンディションの管理を徹底してきている証拠かなと思います」

 

――ユニバーシアードが中止になった時の気持ちを教えてください。

 「呆然という言葉が一番合っていたかなと思います。ショックや怒りという感情も湧かないみたいな。自分が中止という現実を受け入れるのを拒否していたんだと思うし、普通に信じられなかったです。懸けてきた思いがすごく大きかった分だけ、それが無くなって『ショックだなあ。辛いなあ』という感情も起きないくらい呆然、といった感じでしたね」

 

――その呆然の状態はどれくらい続きましたか。すぐに立ち直ることはできましたか。

 「いや、立ち直れていないですね。別に立ち直ろうともしなかったし、前を向こうとも思っていないので。それは今も変わらないし、やはりユニバーシアードのことを考えてしまって、切り替えようと思っても中々切り替わらないです。今だってそれはきついですから。まあユニバーシアードは大会として終わったことといえばそうで。終わってしまったことを考えたりだとか、それを糧にとかそんなことを言ってもしようがないなと思うので。目の前にあったものが無くなって次のものが来ている、ただそれだけです。だから『そこから切り替えて頑張りました!』というのではなく、頑張り続けたという感じですかね。ユニバーシアードに向けて頑張っていたけど、大会が無くなったからと言って何も変えることはなくて、同じように頑張り続ける。最近は〇〇の試合に向けて、というように練習をすることはなく、目の前の練習に全てを懸けるではないですけど、試合のための練習ではなく、自分がよりうまくなるために目の前のものに全身全霊を注ぐというように僕はやっています。正直大会が無くなって練習にやる気が出なくなることもありましたし、無気力になることもありましたし。それで練習に行けなかった日もあったのですが、原点に立ち返って練習しにいったときに、そういう気持ちがなくとも練習に打ち込めたので。特に気持ちを整理するということは無く、今までやってきたことと同じことを続けているという感じです」

 

――練習も今まで大会前に取材してきた時から変わらないことをずっとしているということでしょうか。

 「そうですね。特に変わらず、ずっと同じことを続けているという感じです。ジャンプを単発で跳ばずに連続で跳ぶ、ひたすらそれの反復練習しかしていないですね」

 

――山隈さんにとって、全日本とはどういう存在ですか。

 「んー…怖いですよね、やっぱり。全日本にはいい思い出もあるし、悪い思い出もあるけど、残念なことに記憶って上書き保存じゃないですか。最初はいいものとして保存したものがその後悪いものになって、記憶は上書き保存なので、今の自分には悪いイメージとして残っている。一概に楽しいものなんて、そんな簡単には思えないし、最高の試合です!とかではなく、現状僕にとっては怖い試合ですね」

 

――では、ユニバーシアードは山隈さんにとってどのような存在でしたか。

 「楽しみでしょうがなかったです。逆ですよね、だから。怖さとかはいっさい無くて、久しぶりに海外に行けるという、代表になれたというその喜び。自分が今まで頑張ってきた分だけ、苦しんできた分ようやくつかめたチャンスだったので、それを物にするとかじゃなくて……自分ができる全部を尽くして、悔いなく最高に楽しんでいきたいと思っていたので、試合に対する恐怖心とかはいっさいなくて、ただ本当に楽しみな試合でした」

 

――そのように楽しみだった試合の代わりに、プレッシャーの大きい全日本というのはつらくないですか。

 「逆に言うと、全日本はいつかは向き合わなければいけない試合だし、逃げられないので。今年はユニバーシアードという僕にとって新しいきっかけみたいなものがあったのですが、それが無くなって全日本に戻されるということは『逃げていたら駄目だよ』ということなのかなとも思いますし、ユニバーシアードが逃げなわけではないですけど。『向き合わなければいかんよ』という…運命的にあるんだろうなと考えながら(笑)。それが今年か来年かというただそれだけなのですが、どちらにせよ向き合わなければいけないものですし。(全日本は)舞台もすごく大きいし、お客さんもいるし、注目度も違うし、観客の雰囲気もすごくいいし、あの独特の緊張感も本当に…怖いけど。でもあの緊張感の中で滑れるというのは幸せの一つだし、本当に試合だけで見たら素晴らしい試合だし。あそこで滑らせてもらえる、あそこで自分の演技をさせてもらえるというのは幸せなことです。怖いという気持ちもありますが、原点に立ち返って、あんな素晴らしい場所で滑らせてもらえるんだという喜びみたいなものもあります。だから全日本になってしまった、ということは全くなくて。そんな素晴らしい場所で滑らせてもらえるのは純粋に嬉しいですし、逆に恐怖心と闘うことも楽しみなので。自分が持っている恐怖心に打ち勝てるかどうか、それもすごく楽しみだし、あの場所で滑るのも楽しみだし。最終的にはすごく楽しみな試合だなと思います」

 

――注目している選手はいますか。

 「特にいないですね。お客さん目線でスケートを見たことがないし、スケートに関して僕は僕のことしか考えていないので。でもそうですね、明大の選手には注目してください(笑)」

 

――西日本の選手と東日本の選手には何か違いはありますか。

 「レベルはやっぱり西日本の方が高いです。後は文化とか技術的な違いもありますね。パワフルさは西日本の方があります。上品さというか、品があるスケートをするのが東日本の選手かな。僕の中ではそういう印象があります。西日本の選手は激しい競争の中を勝ち抜いてくるので、どこもそうといえばそうなのですが、勝ち抜いてくる強さというのがあるし。東日本は所作とか、きれいなスケートをする人が多いです。それは西日本にいたときはなかったもので、東日本のリンク事情とかそのようなものも関係があると思います。東では一人一人の練習が多いのですが、西ではグループの集団での練習が多い。そういう練習の仕方の違いなどが影響していると思います」

 

――西と東の練習をどちらも経験してみて、どちらの方が自分に合っていたなとかありますか。

 「わからないです…どちらも好きですけどね。西の激しい競争の中、生き残って戦っていくのも好きだし、こちらで一人で自分と戦いながらやっていくのも好きだし。ただ僕は感情的な人間なので、気持ちとかそういう面で言うと…いやどうなんだろう。その人の置かれている状況によると思います。僕はこちらに来てやり方を合わせるというよりも、自分に合う練習方法を先生と模索してきたし、今の方が合っていると思います。合うように、二人で練習の仕方であったり、雰囲気であったりを作ってきたので。東と西で分けるとわからないですが、練習の仕方は今が一番合っていると思います。こちらは自分のテリトリーが広くて、練習メニューもそうですし、先生が導いていくというよりか自分たちの意識次第ですごく良くなるし悪くもなる。それが難しいなとも感じたし、逆に自分で追い込めば先生ももっとそれに着いてきてくれるというのが今の僕と重松直樹先生の間にはあるので。自分次第というのがこちらの方が強くて、それは僕は好きだなと思います」

 

――ファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。

 「ユニバーシアードの僕を楽しみにしてくださっていた方もいると思うし、僕自身も楽しみにしていたのですが、幸か不幸か全日本の舞台に今年も立てることになって。やっぱり昨年のこともあるし、僕自身も不安な気持ちもあるのですが、それを拭うくらいの練習を積んでこれているので。より大きな会場でまた皆さんの前で滑れるということがとても楽しみですし、自分の出せる全てを尽くして演技するので、ぜひ皆さんに楽しんでいただけたらなと思います。どうぞ応援よろしくお願いします」

 

――全日本での目標をお願いします。

 「自分の集大成というか、自分の一番いいものを皆さんに見せるというのを目標にしたいと思います。結果とかは正直分からないし、結果については終わってから振り返ればいいので、そこら辺はいっさい頭に入れずに。とにかくみなさんに僕のベストを見せられるように頑張ります!」

 

――ありがとうございました。

 

[向井瑠風]


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