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私の強みとは

明大スポーツ新聞 2021.12.16

 「自己紹介を300字程度で書いてください」。ゼミの入室課題。気合を入れて臨んだものの1問目から頭を抱えた。明スポに入ってから文章を書くのはうまくなったはずだった。しかし書いてきたのは他者のことばかり。自分のことになると書く手が全く進まなかった。

 「父は日系カナダ人です」。幼少期から自己紹介のたびに言ってきた。「すごい」。そんな声に少しの優越感に浸る。しかし実際はすごくなんかない。「じゃあ英語話せるの」。大嫌いな質問が飛んでくる。途端に得意になっていた気持ちは萎んでしまう。英語は人並み以下だし、海外に住んでいた経験もない。すごいのは少し特殊な国籍だけ。いつからか自己紹介が恥ずかしく苦手になった。

 「埼玉県出身です。趣味は野球観戦とギターを弾くことです」。つまらない自己紹介ができ上がっていく。他に書けることは明スポのことくらい。「硬式野球部を中心に取材しています。選手の人間性が素晴らしくて……」。駄目だ。気付いたら記事になっている。結局他人ベースのことしか書けないのだ。

 自分は他者のおかげで成り立っているのだなとつくづく実感した。私の良さを伝えるには、関わってきた人の良さを伝えなければいけない。特に私は人一倍誰かの影響を受けやすかった。高校の講演会では毎回感動していたし、受験期は常に友人に刺激をもらって勉強していた。取材でも必ずその選手の生き様や考え方に感銘を受けてしまう。それくらい私が関わってきた人たちは魅力的だった。それが私の強みなのではないか。自分の力で得た強みではないが、これに勝る強みはない気がした。

 私はこれまで書いてきた薄っぺらい文章を全て消し、真っ白な枠内に再び書き始めた。「私は周りの人に大変恵まれた20年間を生きてきました」。


[西村美夕]


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