牛丼から学ぶジェンダー
明大スポーツ新聞 2021.11.10
私は某牛丼チェーンストアでアルバイトをしている。ある日、大柄の男性と細身の女性の夫婦が入店した。二人が頼んだのは、同じメニューだったが、ご飯に並盛りと大盛りの違いがあった。先に出来上がった大盛りの方を迷わず男性の前に置こうとした。すかさず男性は「あちらです」と女性の方を指す。私はそのとき気付かされたのだ。
こういった自分の固定観念における、知らず知らずのジェンダーはささいな生活の中に無数に含まれている。男性ならこれ、女性はこっち。じゃあ逆はダメなのか。その疑問の答えはきっと「ダメじゃないけど…」だろう。ジェンダーというと、大きな問題になってしまうかもしれないが、大きな社会問題というのはこういう小さいものの積み重ねではないだろうか。
私はその女性に謝罪した。「申し訳ございません」。私の間違った固定観念はこんなにも簡単に人を傷つける可能性がある。別に気にしない人もいれば、とても傷つく人もいる。だが、そういう先入観や決めつけは、自分たちが自分たちの生活を生きづらくしているのではないかと思った。これが食べたいのに女だから、これがしたいのに男だから。それでは非常に生きづらい。時代は移り変わるのに、自分たちの思考は全く時代に合っていない。今なら、小さいことから考え直しても間に合うのではないか。勝手で、意識しないジェンダーが誰かを不幸にする前に。
私は、それ以来、必ず誰の商品か聞くようにしている。特盛とお子様メニューを頼んだ親子然り、ミニ盛と大盛を頼んだカップル然り。この店員変なこと聞くなと思われても気にしない。今はまだ、違和感に思えるこの質問が、いつか普通に変わっていったら。私はその〝いつか〟をとても待ち遠しく思う。
[小原愛](執筆日:10月16日)
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