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ずるい言葉

明大スポーツ新聞 2021.10.13

 「あなたのためを思って言っているんだよ」。誰もが一度は耳にするであろう言葉。これを聞いてどう思うだろうか。もやもやするが、反論もできない。大人から言われると正しい気がして、不満を持つ自分が悪いとさえ思える。しかし、何か引っ掛かりを感じる私は間違っているのだろうか。

 大学受験を題材にしたドラマを見た。子供を一流大学に入れるために親たちが口をそろえて言うのが「あなたのため」。でも実際は一流大学に子供を入学させた自分を手に入れたい、そしてそれが子供の幸せに違いないという思いが隠れているのかもしれない。その思いは、本当に〝あなたのため〟になっているのだろうか。

 あるアメリカの歌手が、過去の黒人差別的な発言が批判され「黒人の友達がいる私が黒人を差別しているはずがない」と主張した。その言葉に納得してしまう自分がいた。一方で、それが差別をしていない理由になり得るのか疑問も残る。もんもんとしていた時「I have black friends論法」という用語に出会った。黒人の友達がいることを口実に、自分は差別的ではないと正当化するのだ。セクシャルマイノリティや障害者などに対してもこの論法は使われる。「そういう友達がいるから分かるよ」。その言葉の裏には〝分かっているつもり〟が隠れている。そしてそのおごりが差別につながる恐れもあるのだ。

 言い返せないような言葉を使って相手の口をふさぐ。そういった〝ずるい言葉〟を知らず知らずのうちに使ったり、言われたりしているかもしれない。一回立ち止まってもやもやと向き合ってみる。自分が抱いた違和感を、そのままにはしたくない。


[覺前日向子](執筆日:9月14日)


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