話し方

明大スポーツ新聞
2021.10.12

 少し前の話。電車で座っていると、おしゃれな70代くらいのおばあちゃんが隣に座ってきた。「この電車って渋谷の方に行くか分かるかしら」。きれいな言葉遣いだなと思いながら、渋谷に止まることを伝えると「ありがとう」とすてきな笑顔でお礼を言ってくれた。柔らかい話し方ときれいな言葉遣い。このおばあちゃんとはこの後も少しの間おしゃべりをしていたが、その少しの時間だけでその人柄が伝わってきた。

 このおばあちゃんと話してから、私は話し方が与える人の印象は思っている以上に大きいと思うようになった。話し方でその人の人柄がこんなにも出るのかと。あの日、私はそのおばあちゃんに「どうしてそんなに話し方がきれいなんですか」と思わず聞いてしまった。昔の仕事柄、言葉遣いには気を付けなければいけなかったから、その名残が残っているらしかった。「私もきれいな話し方ができるようにします」と伝えると「無理に変えなくても話し方もその人の雰囲気をつくっているものの一つだからね。個性の一つだよ」。そう言われて、色々な人の話し方を思い出してみた。気にしたことはなかったが、もちろんみんなそれぞれ話し方は違う。話すペース、トーン、方言を話す人もいてよく考えてみれば面白いなと思った。おばあちゃんが言っていた通り、話し方はその人の雰囲気をつくり出すものの一つでその人の個性の一つなのかもしれない。個性の一つ、大事にするか。と思いつつ、あのおばあちゃんに憧れて検索履歴には「きれいな話し方に変える方法」が残っているけれども。

 

[宇野萌香](執筆日:9月14日)