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東京五輪を言葉から振り返る

明大スポーツ新聞 2021.10.11

 東京五輪が終わってしまった。本当にやるんだ、と思っていたらあっという間だった。「なんだかんだ盛り上がった」とか「東京五輪がなければあの人は死ななかったのに」とかあると思う。新聞で東京五輪を盛り上げようとしたからには、振り返る責任があるはずだ。ここでは、東京五輪そのものではなく、メディアの表現について考えたい。

 「美しすぎる○○選手」「美人アスリート」。こんなフレーズを五輪期間中見かけなかっただろうか。実は、東京五輪の報道において、このような表現はIOCによって禁止されていた。2021年6月に改訂された『Portrayal Guidelines 』上で「あらゆる形態のコミュニケーションにおけるジェンダー平等で公正な描写が行われること」を求めた。参考和訳は〝IOCではなく〟東京 2020 組織委員会ジェンダー平等推進チームが遅れて7月30日に作成した。

 選手のアイデンティティーはジェンダーのみによっては定まらない。だから、選手のジェンダーに焦点を当てたあらゆる表現はすべきでないし、特定のジェンダーに関わるステレオタイプ的な表現は、ジェンダー平等・多様性を掲げる東京五輪において、認められないはずだった。女性選手だと笑顔や涙、私生活に焦点当てられがちだよね、なんてことも書いてある。

 問題なのは、メディアがこの表象ガイドラインを気にも留めていないことだ。メディアに関係する人間の一体どれだけが、このガイドラインにのっとって表現を試みたのだろう。この表象ガイドラインはあらゆるメディアに適用されるため、あらゆるメディアのあらゆる表現を思い出してほしい。主要メディアも堂々と「美女アスリート」と書いていたので、まあPDF26枚分の英語のガイドラインなんか見もしなかったんだろう。和訳も40枚分あるし、だったら選手を〝分かりやすく〟書く方が楽なのだ。さて、重要なのは振り返って何をするかだ。自らに問わなくてはならない。


[田崎菜津美](執筆日:9月13日) 


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