

中條扇之介 新天地で世界を目指す
不屈の精神でこぎを進める。中條扇之介(商1=成立学園)は高校からボートを始め、わずか1年でU―19日本代表に選出される。しかし、ケガやコロナ禍で苦悩は続いた。その壁を乗り越え、明大という新たな舞台でさらなる高みへ、世界を目指す。
夢への第一歩
「五輪に出たい」。幼少期から抱いてきた夢だった。山形県のスポーツタレント発掘事務所に所属していた中條。中学3年次夏の適性検査でワットバイクの数値を評価され、ボート競技に誘われる。未知の競技だったが「自分にとって夢への一番のアプローチ」とボートに夢をかけることを決意した。
高校時代はJOCエリートアカデミーに所属。「スタートが遅い分、人よりも多く練習した」と水上練習に加え自主的に陸上トレーニングに取り組んだ。なかなか結果が出ず、苦しい時期が続いたが「お前ならいける」というコーチの言葉を胸に3月の代表選考に挑んだ。レースはラスト250メートルまで勝負がもつれ込む大接戦。それでも自分の強みである後半の勝負強さを生かし、見事代表の座をつかんだ。
高校2年次夏。満を持して迎えたU―19世界選手権。「Bファイナルまでは行きたい」と目標を掲げるも結果は及ばず。海外選手との体格や技術の差をどれだけ縮められるか、中條の新たなスタートだった。
苦しみの先に
そんな矢先、中條に悲劇が襲う。2年次に疲労骨折により12月のアジア大会を欠場。3年次にはコロナ禍の自粛期間中に腰をケガしてしまう。練習はできず、大会も中止。「ボートをやめたくなった」。先の見えないリハビリ生活の中で、モチベーションの維持に苦しんだ。
高校を卒業し、数ある選択肢の中で明大への進学を決意。この選択は中條を苦しみから救うきっかけとなった。チーム一体となってインカレ総合優勝を目指す明大。今までは個人で戦ってきた中條にとって「チームのために頑張る」ことは新鮮だった。仲間の存在は大きな刺激になり、失いかけていたボートへの情熱を取り戻した。
新天地で新たな一歩を踏み出した中條。目標はインカレ、全日本選手権優勝。さらにパリ五輪出場と、その瞳は世界も見据えている。こぎ出した先にどんな未来が待っているのか。夢をかなえる日はそう遠くない。
[新谷歩美]
◆中條 扇之介(なかじょう・せんのすけ)商1、成立学園高。車とアウトドアが好き。得意なことは誰とでも仲良くなれること。184センチ・81.5キロ
(写真は本人提供)
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