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(35)松島元希 大学こそはエースナンバーをつかみ取る

硬式野球 2021.09.16

 目標は明大のエースだ。松島元希(文1=中京大中京)は164センチと小柄ながらも、最速140キロ後半を誇る速球派左腕。3年次にはチームを公式戦無敗へ導いた。中高ともに全国制覇を経験した左腕が、明大に日本一の栄冠を授ける。

 

想定外の始まり

 考えもしない一言だった。「投手をやってみないか」。入学直後に部長から投手転向を提案される。中学時代は外野手として日本一を果たし、高校でも背番号8を目標に入学した松島。「できるわけがない」。自信はなかったが「肩の強さを買ってくれているならやってみよう」と投手転向を決意。転向当初は周りに圧倒されたが、負けず嫌いな性格から自主練習を繰り返し、1年次秋にはベンチ入りを果たした。県大会決勝では公式戦初登板も経験。球速も140キロに到達し、自信をつけた松島は重要な局面での登板も増えた。

 しかし、2年次夏に待ち受けていたのは大きな試練だった。先輩の引退が懸かった県大会準決勝。同点で迎えた7回途中から登板。しかし、一死しか取れず降板を余儀なくされた。その後、自分が許した走者が生還し、1点差で敗北。「自分たちの代で日本一にならなくてはいけない」。新チームでのリベンジを決意した。 

 

苦難から無敵へ

 リベンジを誓った松島であったが、またしても苦難を強いられる。2年次秋に、県大会、東海大会を制し、神宮大会に出場。背番号10で臨み、準決勝に先発。しかし5回を投げ6失点とふがいない投球に終わった。松島は、のちにドラフト1位でプロ入りを果たしたエースの高橋宏斗(中日ドラゴンズ)との差を感じ「自分も信頼される投手になる」と決心。練習試合から全て0点で抑えることを意識した。コロナ禍になると、各自での練習も多く、モチベーションを失いかけた。しかし、チームメートから送られる練習の動画を見て自分を奮い立たせた。迎えた3年次夏の独自大会では、松島が中心となって勝ち進み、優勝。見事に雪辱を果たした。大会を通じて16イニングを投げ、自責点1という圧巻の投球を披露した。「満足できた」。甲子園交流試合も勝利し、コロナ禍で新たに掲げた公式戦無敗という目標を達成し、有終の美を飾った。

 

友を追いかけて

 「高校時代の思い出は悔しいものばかりだった」。高橋の存在もあり、エースとは呼ばれなかった松島。「自分もプロに行って、負けないようにしたい」。直近の目標は最速150キロ。将来的には明大で〝11番〟をつかみ取り、エースと呼ばれる存在に。そしてプロの世界でまた高橋のライバルになることを夢見て、松島は前に進み続ける。

 

[中村謙吾]

 

◆松島 元希(まつしま・げんき)文1、中京大中京高、164センチ、73キロ、左投左打ち、投手

喋れたらかっこよさそうとノリで選んだフランス語が難しすぎて、人生で1番後悔している。

 

※写真は硬式野球部提供


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