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(32)杉崎成 どこまでもがむしゃらに 明治の、世界の4番に

硬式野球 2021.09.15

 まさに〝怪物〟の名にふさわしい男がやってきた。高校通算52本塁打のスラッガー・杉崎成内野手(総合1=東海大菅生)。春季フレッシュトーナメントで神宮の空に3本のアーチを描き、鮮烈なデビューを飾った。西東京の名門・東海大菅生高で1年次から4番を担ってきた杉崎が、〝明治の4番〟に名乗りを挙げる。

 

成長の軌跡

 向上心はとどまることを知らない。小学1年次、兄の影響で始めた野球。気付いたときには夢中になっていた。そんな杉崎が大きく成長したのは中学時。愛知西リトルシニアで練習に励む傍ら、バッティングスクールにも通い、木製バットで練習。打撃に自信を付けた。高校へ進む際、杉崎は「兄と違うチームでプレーがしてみたい」。新しい環境を求め、父兄の母校でもある愛知の強豪・東邦高ではなく、東海大菅生高へと進学。一年次から主軸を担った。4番として、学年が上がるごとに責任と重圧は増していった。そんな中で迎えた最終学年。杉崎は、最後のチャンスにかけていた。しかし2020年春夏の甲子園は、突如として全高校球児の前から消えた。「なんのためにやってきたのかな」。大きなショックを受けた。それでも、若林弘泰監督から送られてきたのは「切り替えて独自大会で優勝するぞ」。熱いメッセージが杉崎の心にもう一度火をつけ、独自大会優勝を成し遂げた。

 

恩師の言葉

 「自分ならやっていける」。高校の先輩のいない環境に不安はあったものの、高いレベルで勝負するため明大へ。春季リーグ戦への出場こそかなわなかったが、春季フレッシュトーナメントでは試合連続で本塁打を放った。恩師・若林監督も「たいしたもんだ」。活躍を喜んでくれた。あまり褒めることはないという若林監督。「お前はプロになんていけないぞ」。厳しい言葉を何度かけられただろうか。しかし杉崎には忘れられない言葉がある。「お前は大学に行ってから絶対にプロに行けよ」。野球人として、人間として成長させてくれた恩師がこぼした本音は、杉崎の中で信念へと変わった。

 

夢への旅路

 華やかな打撃とは裏腹に、がむしゃらに、冷静に上を目指す。そんな杉崎が次なる目標として掲げるのは、秋季リーグ戦で本塁打を打つこと。そしていずれはプロへ、メジャーへ。恩師との約束を果たすため。杉崎の挑戦は、まだ幕を開けたばかりだ。

 

[栗村咲良]

 

◆杉崎 成(すぎさき・なる)総合1、東海大菅生、175センチ、80キロ、右投右打ち、内野手 

杉崎の座右の銘は〝我武者羅〟。先輩に掛けられた「お前、がむしゃらだな」。その一言がきっかけとなり、杉崎のプレースタイルとなっている。


※写真は硬式野球部提供


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