手塚崚馬 自分を貫く卓球を
静かな努力家。内に秘めた卓球への強い思いが彼を強くする。6月に行われた関東学生新人選手権ではダブルスで優勝を収める活躍を見せたが、そこにたどり着くまで決して平坦(へいたん)な道のりではなかった。つらい時期を乗り越えて確立した今がある。
確立した自分の卓球
卓球は兄の影響で小学2年次に本格的に始めた。強豪・明徳義塾中へ進学すると3年次には全国中学校卓球大会で優勝。ナショナルチームに参加するなど、着々と結果を出していった。しかしその裏には多くの努力と覚悟があった。転機となったのは中学2年次の秋頃。中学1年次に通用したドライブ型では結果を残せなくなっていた。「決め球がないと、ラリーだけでは勝てない」。悩みを抱えたままプレーを続けていたある日、球をたたく技と前陣プレーを見込んだ監督はスマッシュを決め球とする戦術を勧めた。そこで心機一転、戦術をドライブ型からスマッシュ型に変更。練習を重ねると全中優勝として大きな成果が表れた。「最初はうまくいかなかったが最後まで諦めなかった」。
スランプを乗り越えて
高校進学後、ベスト4入りをインターハイで果たすも、その後ケガで結果が出せず苦しむことに。悪いイメージを払拭できず思うようにいかない日々に自信を失った。しかし、高校2年になるという新しい機会に、自分と向き合うことで少しずつ自分の卓球を取り戻していく。「自分のプレーを見直して、常に挑戦者の気持ちを大事にした」。ケガをして不安な気持ちが大きくなっていた自分に自信を取り戻したとき、再び卓球に自分ならではのプレーを見出した。
先輩の背中を追って
「日本でトップクラスの大学」と語る明大に進学して宮川昌大選手(情コミ2=野田学園)と組んだダブルスで優勝するという鮮烈な大学デビューを果たした。その翌月に行われた全日本大学総合選手権。準優勝に「2位は全然うれしくない」と悔しさを浮かべる先輩の姿に刺激を受けた。「自分も先輩のように強くなりたい」。大学4年間の目標として掲げた「インカレ優勝」はその決意の表れだろうか。大学生になってからは自分で考えて練習することを意識し始めた。生活のすべてが卓球につながると日々の努力に気合を入れる。明大のプライドを背負った原石はまだ輝きだしたばかりだ。
[新村百華]
◆手塚 崚馬(てづか・りょうま)政経1、明徳義塾高。はしゃぐよりもゆっくりする時間を大切にしたいタイプ。176センチ・63キロ。
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