(5)視覚障がい者柔道小川和紗選手にインタビュー!(後編)

明大スポーツ新聞
2020.12.04

 パラリンピックまであと1年。明大スポーツ新聞部は中大スポーツ新聞部と協力し、幅広い視点からパラスポーツを取り上げていく。第2弾となる今回は、視覚障がい者柔道の第一線で活躍する小川和紗選手にお話を伺った。前編、後編の2回に分けて掲載する。前編はこちら

 

(この取材は11月19日に行いました)

 

視覚障がい者柔道とは

視覚に障がいがある人を対象に考えられた柔道。お互いに組んでから始まる点が特徴的だ。組み合った状態から相手をいかに崩すかが勝負のポイントになってくる。

 

――パラ五輪出場への推薦候補内定が決まった時の心境は。

 「正直ホッとして、少し心のゆとりができました。プレッシャーを感じていてもどかしい気持ちもあったからです。あとは意識が、より高まったと思います。トレーニングの一環としてダンスを取り入れているのですが、一つでも多くの種類のダンスを覚えたいというのがあり、体が疲れていても夜にダンスの練習をしにいくなどしています。リラックスにつながりますし、体を動かしていることで自分の調子の良し悪しがわかります」

 

――パラリンピックの1年延期、メンタルケアはどうなさっていましたか。

 「延期と決まった直後は、こういった状況なので仕方ないなという感じだったのですが、2、3日くらい経ってから気持ちを切り替えました。逆に1年伸びたことで、今まで後回しにしていた強化メニューや、もう少し技の精度をあげるなど、やれることがあると思っています。その結果として納得のいく柔道ができればいいなと、前向きに考えることをしていました」

 

――具体的に取り組みはなさいましたか。

 「体の面では手首が固いので、それをほぐすストレッチ。技の面では担ぎ技の数を増やしたかったので、角度や相手の懐に入った時の顔の向き、吊り手の高さ、肘などを細かく調整していきました。地味に見えがちですが、そういうことが大事だと思うようになったので楽しくやっています」 


大会に挑む小川選手(写真左)


――来年パラ柔道を見る人に魅力を伝えるならどう言うところですか。

 「私は、70キロ級で一番小さい選手だと思います。みなさんには小柄な体格の選手が戦っている姿を見ていただき、「小川すごいな」と思ってもらいたいです。できれば今磨いている担ぎ技で対戦相手を投げたいと思っています。そこを見てほしいです」

 

――アスリートとしての最終的な目標は。

 「2020年東京パラリンピックに出場して金メダルを獲得したいです。でも、一度では物足りなく、まぐれと思われるのも悔しいので、2024年パリパラリンピックにも出場して、金を獲得したいと思っています。」

 

――今ジュニアのパラ選手もたくさんいるが彼らへの思いは。

 「まだ若いのでたくさんの経験をして、柔道が好きという気持ちを忘れないで、楽しんで柔道をして欲しいです。そして、相手を思いやる気持ちも忘れずに練習に励んで欲しいです」

 

――パラスポーツをこれから始める人へ。

 「日本視覚障害者柔道連盟のH Pには、挑戦したい人はご連絡くださいと書いてあります。世の中にはさまざまな障害を持つ方がいらっしゃいますが、問い合わせをするという一歩を踏み出すことが難しいという人が多いと思います。ただ、そういう一歩を怖がらずに新たに踏み出していろいろな競技に挑戦するのもありだと思います」

 

――ありがとうございました。

 

[下神大生]

 

◆小川 和紗(おがわ・かずさ)千葉県出身 アスリート引退後は所属会社である㈱オー・エル・エムでヘルスキーパーとして、それまで応援して頂いた社員の皆さんに貢献したいという小川選手。恋話から仕事の話まで幅広く社員の方の悩みに寄り添いたいと力強く語った

 

※写真は本人提供