

馬場勇一郎 新たな挑戦への道
こだわりの中距離で新たな道に挑戦する。高校までの800メートルから1500メートルに転向した馬場勇一郎(政経1=中京大中京)。中学生記録を背負って高校へ進むも、苦しい結果が続く。それでも逆境を乗り越えた経験を強みに、さらなる飛躍を目指す。
大記録の重圧
中学3年次の夏、一つの大記録とともに彼の名は陸上界に知れ渡った。800メートルの日本中学生記録。33年間破られなかった記録を塗り替え、脚光を浴びた。それ以来付きまとう「勝って当たり前」という目。「早く塗り替えてほしい」。そう思うほどの重圧だった。高校では下からの追い上げを感じる中、結果が出ずに苦しむ。常に勝ち続けてきた馬場に降りかかった大きな試練。1、2年次はインターハイ決勝に進出できず。注目されているからこそ、周りから厳しい言葉も飛んだ。
貫いた中距離
苦しい中でもこだわり続けた800メートル。高校まではスピードを追い求め、大学から距離を踏もうとした。「最終的な大学での目標を大切にマイペースでやっていこう」という監督の言葉に感化される。他の選手を意識することをやめ、自分の走りと向き合い続けた。練習時間を確保するために寮で一人暮らしを始めた高1の冬。陸上のために全てを費やしたことは自信につながった。
同じ800メートルを走る先輩、鳥井風樹(中大)と細井衿菜(慶大)の存在も大きかった。何度も不調から立ち上がり優勝する2人を見て、自分もやってやると奮起した。
「ようやく神様がプレゼントをくれた」と振り返る3年次のインターハイ。大雨のなかでのレースだった。自分が何位にいるかも分からずに小さな体を必死で動かし、つかみ取った銅メダル。順位以上に、練習の成果を出せたことへの喜びが込み上げた。
新たなる挑戦
当初のプラン通り、高校で伸ばしたスピードを武器に大学では1500メートルに挑戦する。「中学生記録保持者という肩書でやり続けてきたからこその体験や思いがあった」。今まで苦しんできたその肩書は、今では成長の糧になったと思える存在だ。大学では「3分40秒切りが目標」とタイムにこだわる。現在は持久的な練習を中心に、新しい種目と向き合っている。馬場の挑戦は始まったばかり。積み重ねた経験を携え、新たな道を走り始めた。
[西村美夕]
◆馬場 勇一郎(ばば・ゆういちろう)政経1、中京大中京高。サッカーと『ONE PIECE』が好き。163センチ、55キロ。
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