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野村馨 〝負け〟を知ってさらなる高みへ

アメリカンフットボール 2020.10.07

 「負ける感覚があまりわからない」。そんな衝撃的な言葉を発したのはDB#2野村馨(政経2=佼成学園)。抜群のプレーの読みを武器とする明大期待のホープだ。クリスマスボウル3連覇の立役者は、ディフェンスの最後のとりでとして、さらなる高みを目指す。

 

成し遂げた3連覇

 高3次の冬。高校日本一を決める大会、クリスマスボウル。1年生の時から出場していた野村にとって、三度目の舞台は一味違っていた。3連覇への重圧。「自分がやらないと」という責任感。さまざまな想いが頭の中を駆け巡った。1年前は「先輩が上手だから、自分がやらなくても勝てる」と、どこかで逃げていた。それでも勝ち続けられた。しかし、今年は違う。迎えた決勝戦、序盤から劣勢の試合展開で「正直ハーフタイムでは諦めかけていた」と弱気な部分も出てしまう。だが、勝利への執念が野村を奮起させた。同じ明大に進学したRB#6森川竜偉(政経2=佼成学園)が相手のファンブルを誘う。落ちたボールを野村が拾い、残り時間わずかでタッチダウン。それが決定打となり、劇的な勝利を収めた。試合を振り返り「勝てないと思っていた試合に勝てたことは良い経験になった」。


 そうして3連覇を成し遂げた野村が向かった先はアメフトの本場、米国。全国高校選抜の一員として、本場でのトレーニングと米国代表との試合を経験した。パワーに押されつつも「3年間で培った技術は通用していた」。自信をもって大学へと主戦場を移した。

 

敗北を成長の糧に

 「負けることが悔しい」。明大でワンシーズンを過ごし、負け知らずの男は徐々に敗北の悔しさも実感している。ただ、敗戦を糧にさらなる成長を図っている。課題のタックル力を強化するため、昨年から体重を8キロ増量させた。武器であるプレーの先読みにもさらに磨きをかけている。次なる試合の勝利に向けて、準備は万端だ。


 そんな彼の原動力は、「アメフトが好き」の熱い思い、ただそれだけ。好きだから、楽しいから「勝ちたい」の思いも湧く。今の目標は「試合の流れを変えるビックプレーを起こす存在になること」。そう語った彼の目は真剣そのものだった。連勝街道を猛進してきた男が明大を日本一へ導く日はそう遠くない。


[伊東彩乃]

 

◆野村 馨(のむら・きょう)政経2、佼成学園高。憧れはNFLのマーション・ラティモア選手。仲間からは前歯をいじられるかわいらしい一面も。175センチ・78キロ


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