石浦大貴 伝統の継承者
並み居るディフェンスを持ち前のフィジカルで突破していく。NO.8石浦大貴(政経1=報徳学園高)の持ち味は突破力。高校3年次の全国高校大会(以下、花園)では後半からの出場ながら四つのトライを決め、チームの史上最多得点に貢献した。コロナ禍の半年間に蓄えた力で、虎視眈々(たんたん)と紫紺を狙う。
断ち切るもの
2つ上のいとこの入学をきっかけに報徳学園高の受験を決めると、ラグビー部に入部。軽い気持ちで始めた競技ながらめきめきと頭角を現し、高校2年次には花園の舞台も経験する。その後、3年連続花園ベスト8の先輩たちを超えようと決意し、新チームでは積極的なプレーをしようと話し合った。その中で石浦は不動のNO.8として、プレーでチームをけん引した。夏合宿では練習試合を全勝に終え、順風満帆かと思われたが、チームメイトのけがにより歯車が狂い始める。「メンバーがあいつじゃなかったからとか言い訳はしたくなかった」。新チーム始動後からのいい流れを共に作ってきたメンバーの離脱は、確実にチームを揺らした。また、報徳学園高にはW杯開催の年は花園に出場できないというジンクスがあり、石浦の代はまさにその年。「今年は厳しいのでは」という雰囲気が関係者の間には漂っていた。
だが、さまざまな逆境に逆に闘志をみなぎらせると「チームとしては負ける気もなかった」と強気なプレーで、県大会決勝で関学大高に辛勝。W杯の年としては3大会ぶりに花園出場を決めた。長年の負の連鎖を断ち切れたという事実は、単に花園出場を決めたという現実よりも大きかった。その後出場した花園では、1回戦で大勝を飾るも、2回戦の国学院栃木高戦ではあと一歩が届かず敗退。結果のみにこだわらず、「最後までみんなでラグビーができて楽しかったから悔いはなかった」と満足のいく形で高校ラグビーを終えた。
受け継ぐもの
高校卒業後は天理大への入学を決めていた。しかし、明大出身のコーチの勧めもあり、急遽進学先を変えた。決め手は報徳学園高出身の選手の多さだった。田中澄憲監督が同高出身ということもあり「どの学年にも先輩がいて、毎年、紫紺を着て活躍しているところを見ていた」。石浦が紫紺を着ることは、二つの母校の伝統を守ることにつながる。まずは冬の選手権のメンバーに近づくため「自分のやることをやる。一つ一つ上がっていきたい」。先人たちが積み重ねた伝統を、自らもまた継承者として受け継いでいく。
【向井瑠風】
◆石浦 大貴(いしうら・だいき) 政経1、報徳学園高。マイブームは映画を見ること。最近、3日間で『闇金ウシジマくん』のドラマと映画を見終わった。178センチ・98キロ。
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