エース兼主将・阿部弘輝 最後の箱根路へ!

競走
2019.12.19

 紫紺に受け継がれるエースの系譜。明大はこれまで何人も学生長距離界のトップ選手を輩出してきた。今年度のエース・阿部弘輝主将(政経4=学校法人石川)もその中の一人だ。一時代を築き、今なお活躍する鎧坂哲哉選手(平24営卒・現旭化成)、横手健選手(平28政経卒・現富士通)も背負ったエース兼主将の肩書。彼らに共通するものは何か。阿部の主将像に迫る。


系譜

 一躍その名を知らしめた昨年度。どの大会においても、出場すればエースたる走りを披露してきた。11月には1万㍍で27分台をマーク。今年度、日本人学生が1人もたたき出すことのできなかった快記録だ。一気に学生長距離界のトップに駆け上がった阿部だが、かつて紫紺のエースとして君臨した27分台ランナーが他にも2名いる。1人は箱根で毎年異なる区間を好走し、4年次には49年ぶりの3位以内に導いた鎧坂選手。もう1人は1年次から力強い走りを披露し、3、4年次には1区で最高のスタートを切ってみせた横手選手だ。阿部を含め3人に共通するのは、27分台を出したことだけにとどまらない。駅伝の実績においても、それぞれが全日本で区間新記録を樹立。最終学年では主将を務め、紫紺の大黒柱を担った。


象徴

 「主将としてとにかく結果を出せばいい」。〝結果が全て〟というスタンスで取り組んでいたのは鎧坂選手だ。当時の駅伝監督である西弘美スーパーバイザーが求めていた自主性を体現し、海外遠征を重ねるなど個人の力を追い求め、結果も残した。一方「きついことを言って引っ張るキャプテン」。一つ上の学年が黄金世代と言われるほど力があった中で、次期主将を任された横手選手。強いキャプテンシーで言葉でも引っ張り、同期の木村慎選手(平28商卒・現Honda)がそれをカバーする形で役割をうまく分担させてきた。

 対する阿部は「とにかく勝ちにこだわること」を最も意識してきた。シーズン前半は2本の海外レースに出場し、ユニバーシアード1万㍍では銀メダルを獲得。世界相手に強さを証明した。また自身だけでなく、チームに対しても〝勝ち切る〟ことを意識付け。昨年度の全日本と箱根では自らの役割を全うしたが、チームとしては勝負弱さを痛感した。その反省から、〝アベノミクス〟を決行。「駅伝もトラックレースも勝ちにこだわってほしい」という旨を伝えた。結果的にその思いは通じ、組トップを取るチームメートの姿が目立つように。故障者同士のミーティングも画策し、手本としてアプローチ方法を示した。結果を追い求めながら、気付いたところはチームに還元する。鎧坂選手と横手選手の対称的なチームづくりを融和させたのが、今年度の主将といえるだろう。



勝負

 唯一手にしていないのは、箱根での成功だ。1年次は4区13位と力を発揮できず、2年次には予選落ちを経験。昨年度こそ3区で快走したものの、チームは大惨敗を喫した。また今年度、阿部は故障による2カ月の離脱を経験。鎧坂、横手両選手も4年次はケガに苦しんだが、それでも最後の箱根は区間上位で駆け抜けた。またしても先代2人との共通点を増やせるか。「最後の年ぐらいは勝ちたい」。勝負へのこだわりを結果で示す時が来た。希望している区間は1区。5年ぶりシード奪還へのラストピースは、やはりこの男で間違いない。

【川和健太郎】

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