

二ノ宮主将 前進し続けた4年間は準Vで閉幕
主将の意地だった。フリースタイルの頂点を決める全日本大学選手権。97㌔級の二ノ宮寛斗主将(営4=岐南工)が準優勝を果たした。明大では寺田靖也コーチ(平29農卒)以来3年ぶりの決勝進出。明大の看板を背負った4年間。自他ともに認める努力で、結果を残し続けた。主将として挑んだ1年間はケガに悩んだが、腐らず前向きに。学生大会の締めとして表彰台に上ってみせた。
自分で切り開く
集大成の銀メダルだ。吉田ケイワン(日大)との決勝は、一歩届かず8―11。手にしたメダルは望んだ色ではなかった。それでも、昨年のインカレ優勝以来遠ざかっていたフリーでの表彰台入り。充実の4年間を駆け抜けた。
「1年生の時から頼りがいがあった」。三つ上の先輩、寺田コーチは当時を振り返る。明大は決して強豪校ではない。緊張感のない全体練習が週に2、3日。高校で世界も経験した二ノ宮との温度差は歴然だった。
「自分でやるしかない」。強豪校に1人で足を運び武者修行。努力を惜しまず、3年次夏にはインカレ王者に輝いた。主将就任後は、部全体に経験を還元。内容の濃い練習を後輩に課した。だがそれ以上に自分に厳しく。ケガの多い中でも、誰よりも気を引き締めて鍛錬を行った。「4年間でレスリングを好きになれた」。高みを目指し、自力で駆け上がってきた。だからこそ、明大を選んだ4年間に悔いはない。
夢へと一直線に
幼少期から、欲しいおもちゃの前で動かないような頑固な性格。そんな少年はレスリングに出会うと夢中になった。各世代での日本一を目指し、達成するとすぐにより高い目標へ着手。次第に、刺激し合える仲間が増えた。試合会場では、他大の関係者からの声援も。「交流が増えた。そこは自分でやってきた成果」。真っすぐな向上心が多くの人を引き付けてきた。
観客席にはいつも母・記子さんの姿があった。普段は離れて生活する息子に直接ねぎらいの言葉を掛けた4年間。中学生まで習っていた柔道では競技への姿勢を叱ることもあったという。けれど立派な大人になった今はもう、必要ない。試合前は必ず2人でグータッチ。「応援してくれる全ての人のパワーが寛斗の力に変わるように」(記子さん)。母が今までもこれからもずっと一番のサポーター。「本当にありがたいです。照れくさくて言えないけど……」。背中を押され、新たな一歩を踏み出した。
【福田夏希】
◆二ノ宮寛斗(にのみや・ひろと)岐阜県出身。高校生の頃から、試合では決まって祖母から送られる赤いタオルを使用している。今大会後の飲み会では『敬語禁止ゲーム』を開催。後輩に「おい、ニノ!」と呼ばれるいつもと違った雰囲気だったが、楽しい会になった。169㌢・97㌔
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