(49)~FINAL CHALLENGE~ 松岡賢太「自分に矢印を向けて考えられるようになったのが1番の成長」

ラグビー
2019.11.19

 「真価が問われる代」。武井日向主将(商4=国学院栃木)は今年の最上級生についてこう語る。苛烈極まる対抗戦、そして連覇の懸かる大学選手権へ。激戦のさなか、4年生一人一人に今シーズンに懸ける思いについてうかがった。

 

第17回は松岡賢太(商4=京都成章)のインタビューをお送りします。(この取材は11月17日に行われたものです)

 

――明大での4年間を振り返ってください。

 「同期に武井という主将であり、ライバルがいます。その存在がいたからこそ成長できました。自分が出られないことが多かったので、悔しくて自分がどう試行錯誤したら、試合に出られるかをすごく考えました。高校の時は与えられた課題をこなすだけだったのですが、ただただ練習をこなしているだけではダメだということも気づかされました。何が求められていて、自分に何が足りないのかということを自分で考えて、練習や試合に取り組む力が4年間でついたと思います」

 

――学年が上がるごとに成績は上昇しました。

 「1年生の時は京産大に負けたのですが、僕は関西出身で関西の大学に負けたくないという思いで関東に来ました。関西の大学に負けて、試合には出ていなかったですけど、すごく悔しくて、自分が試合に出たら他大には負けたくないという気持ちが強くなりました。3年生で優勝することができて、自分もメンバーに入ることができて、優勝した時に見られた景色というのはこれまでとは全く違いました。喜んでいる仲間や無数のメディア、応援してくださっている明治のファンの方々など優勝しなければ味わえない景色がありました。それは去年の4年生が築き上げてくださったものなので、今度は僕らの代でその景色をもう一度見たいという思いです。去年の4年生以上に私生活からスキのないチームを作り上げて、連覇に挑戦したいです」

 

――フッカーへのこだわりはありますか。

 「高校まではフィールドプレーが持ち味でした。昔はセットプレーがダメでもフィールドプレーが良かったらいいやという考えだったのですが、大学に入って、フッカーとして何が大事かということを考えた時にセットプレーでした。スクラムでは最前列で舵を握らなければいけないですし、ラインアウトもスローイングがダメだったらボールは捕れないです。求められているものがセットプレーなので、重きを置いてセットプレーでみんなからの信頼を勝ち取れるようにやろうと思っています」

 

――武井選手とのポジション争いを振り返ってください。

 「最初は、僕も負けず嫌いで変なプライドも邪魔してしまって『なんであいつが出てんねん』と自分が出られない状況を自分に矢印を向けず、他のせいにしていました。でもやっぱり客観的に見ると、僕に足りないものを彼は持っていますし、逆に言うと彼が持っていないものを僕にはあると思えるようになりました。他人に矢印を向けるのではなくて、自分がなりたい選手像を目指して、リザーブとしての活躍を求められているのであれば、どれだけその仕事を全うできるかというように自分に矢印を向けられるようになりました」

 

――1番印象に残っている試合を教えてください。

 「最近なのですが、ジュニア選手権初戦で帝京大に0―61で大敗した試合です。その時にチームは負けてしまったのですが、個人的にはミスはしていなくてそんなに悪いとは思いませんでした。危機感をあまり感じていなかったのですが、次の週から自分のポジションが1つ下がっていて、ジュニアのリザーブになってしまいました。納得できなくて、田中監督と滝沢FWコーチの所に自分から話に行きました。その時に『プレー云々で落としたんじゃない。リーダーという立場なのに、あの逆境の中でチームをどうしていこうとか後輩をどう支えようとか、チームを引っ張っていく姿勢が見られなかった』と言われました。それを言われた時に自分のことしか考えていなかったんだなと感じて、4年生の立場としてすごく甘いなと感じました。自分だけではなくて、試合の流れを変えるための声掛けなどチームファーストで考えなければいけないということを気づかされました」

 

――それ以降の試合で意識していることはありますか。

 「やることは変えていないですけど、メンタル面は変えました。例えば後輩がミスをしてしまった時に次にいいプレーが出来るように繋げてあげるような声掛けを意識しています。4年生に励まされたら、下級生は救われると思うので、そういう声掛けが出来るように心掛けています」

 

――対抗戦はリザーブで出場することが多い中で意識していることはありますか。

 「心掛けていることはインパクトを残すことです。インパクトを与えるということは、元気な僕が体を当てて、ディフェンス、アタックどちらにもインパクトを与えるプレーをすることによって、チームに安心感を与えられます。逆に相手からすると、疲れている中で出てきてほしくないプレーヤーになりたいです」

 

――松岡選手にとって〝真価〟とは何ですか。

 「明治大学ラグビー部がどうあるべきかということです。僕は明治大学ラグビー部という組織がめちゃくちゃ好きで、やはり強い存在でなければいけないと思います。そのために私生活であったり、日々の努力を怠らないことが大事になります。勝敗以上に、明治大学ラグビー部の価値や本質を上げて、応援したくなる存在にならないといけないと思います。努力をして、常勝軍団にならなければいけないですし、なおかつ応援してもらえるような人間性を持った組織にならなければいけないです」

 

――ありがとうございました。

 

[上松凜助]

 

◆松岡 賢太(まつおか・けんた)商4、京都成章高、175センチ、100キロ

4年間で1番楽しかった思い出は全員で行うチームビルディング。ムードメーカーの松岡は宴会の司会を任されている。下級生の頃は「(辻)惇朗(政経4=常翔学園)とコンビを組んで、ネタをやっていました。試行錯誤しました(笑)」

 

次回は矢野湧大選手のインタビューをお送りします。