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『孤独のグルメ』に倣え! 個食のススメ

明大スポーツ新聞 2019.09.26

 食欲の秋、孤独に食事を取るときが来た。SNSの影響で他人からの評価を求めがちになった今日この頃。一方で、そればかりを気にすることに「疲れた」との声もよく聞かれる。周りにもまれて自分が分からなくなった時こそ「個食」で自分を見つめ直したい。


同調

 自身の判断基準は、時に他人によっても左右される。ツイッターやインスタグラムの『いいね』数が気になってしまう経験は、誰にでも覚えがあるのではないだろうか。経営学部で経営心理を研究している中西晶教授は「SNSの発展で自己評価を相手に頼る風潮が強くなった」と語る。その理由の一つに挙げられるのがアイデンティティーを確立できていないこと。特に10~20代は「他人に認められたい」という気持ちが強い。だが重要なのは周囲の目よりも自分自身の価値観。そのためには「一歩引いて自分を見つめる時間が大事」(中西教授)だという。他人と常につながっている状況は疲れるものだ。たまにはスマホの向こうの相手だけでなく、自分と対話してみよう。

 

個食

 その一つの方法となるのが一人飯。今や女性が一人で牛丼屋に行くことも珍しくない。10月に新シリーズが放送される『孤独のグルメ』をはじめとし、食事にまつわる数々の作品を手掛けてきた久住昌之氏は「他人は関係ない」と語る。元来、食事は個人の営みであり、周りに気を遣うものではない。『孤独のグルメ』の主人公である井之頭五郎も作中で語る。『モノを食べる時はね誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ』。自分のペースで食事を取ることで、自分を見直す機会となるだろう。幸いリバティータワーのある神保町には幅広いジャンルの飲食店が点在している。食うにはもってこいの食欲の秋。自分を見失いそうになったそこのあなた。今秋、一人飯デビューはいかがだろうか。


【綾部禎】


久住昌之さんインタビュー抜粋

――『孤独のグルメ』の制作秘話は

「90年代終わりのバブルなグルメブームを嫌だと思っていた編集者が、「もっと日常的な食べ物漫画を描けませんか」と依頼してきたのがきっかけです。グルメというのはたくさんお店を知っていて、おいしいものを説明できる人のことだけど、僕はそんなことに興味ありません。他人は関係ないグルメを考え〝孤独の〟グルメになりました」


――飲食店を選ぶ際の基準は

「僕はネットの情報に頼らず、自分の頭と足を使い、お店を探します。そうすると、どういうお店がおいしいのかではなく、自分はどんなお店が好きなのかが分かってくる。そしたら、ガイドもネット情報もいらなくなる。どこに行ってもあまり失敗しなくなります。神保町には長く愛されているお店がたくさんあります。都内で、数十年間続いている飲食店が多く残っているのは神保町と浅草くらいですよ。」


――久住さんにとって食べることとは

「生きているということではないでしょうか。よく「最後に食べたいものは何ですか?」と聞かれるけど、死ぬ間際なんて食べるどころではないでしょ(笑)。最後に食べたいものなんて言うのは、幻想で、お腹がすくというのは、強く生きていることです。腹が減って死にそうなんていうのは元気の証しだと思います」


◆久住昌之(くすみ・まさゆき)漫画家、ミュージシャンとして幅広い分野で活動。漫画の代表作は『孤独のグルメ』の他に『野武士のグルメ』がある


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