

佐藤伊吹 氷上で美しく輝く期待の新星
ミスの少ない安定した演技で観客を魅了する。佐藤伊吹(政経1=駒場学園)は大学入学後、初の大会となった関東学生選手権で5位入賞と、幸先の良いスタートを切った。期待の新星が、黄金期を迎えるフィギュア部門の一員として氷上で躍動する。
苦悩の日々
決して楽な道のりではなかった。中学2年次にジュニアに昇格。その年に目標であった全日本ジュニアに出場するなど、順風満帆なスケート人生を歩んでいた。しかし、迎えた中学3年次の東日本ジュニア。SP(ショートプログラム)でミスを連発した。FS(フリースケーティング)も振るわず、結果は14位。前年から順位を上げるどころか、全日本出場さえ叶わなかった。この頃から佐藤の歯車が狂い始める。高校進学後も調子が上がらず、もやもやする日々。なぜ調子が悪いのかがはっきりわからない。自問自答する毎日だった。
大きな決断
もどかしい日々に思わぬ形で終止符を打った。「このまま全日本に出れるか出れないかのレベルでは意味がない」。葛藤の末、思い切った決断に出た。シニア転向。スランプ脱却へ向け心機一転、殻を破ることを決意した。
シニア転向後の初戦・飯塚杯。結果はノーミスの演技で2位。初のシニアの舞台で残した納得のいく結果に「自信がついた」。この大会をきっかけに調子を上げ、東京選手権優勝、東日本選手権では3位で表彰台に。憧れの全日本選手権への切符も手にした。
「ジュニアの時は練習も試合もただこなすだけだった」。全日本選手権の舞台で日本トップレベルの演技を肌で感じ、自分を見直した。すると今までの自分に足りなかったものがようやく見えてくるように。それは、ただこなすだけではなく〝目標を持つこと〟。「来年も絶対に出てリベンジしたい」。この強い思いは明確な目標へと変わり、佐藤の心を突き動かした。それは練習への意識にも変化をもたらす。〝1本〟のジャンプ、〝1回〟のスピンを大切にするようになり、練習の質も向上。確たる目標ができたことが佐藤の大きな原動力となった。
次なる舞台
大学生となった今、目指すは「大人っぽく、力強い」スケート。より総合力が求められるシニアの舞台に対応していく。大学での目標は「自分が出場した上で、インカレで団体優勝」すること。期待の新戦力も加わり、さらに層が厚くなった明大。熾烈(しれつ)なメンバー争いを制し、団体優勝に貢献することができるか。氷上で輝きを放つその姿から目が離せない。
[加川遥稀]
◆佐藤 伊吹(さとう・いぶき) 政経1、駒場学園高、160センチ。趣味は料理。よく作るのは卵焼き。大学ではスケートのみならず料理の腕も磨く。
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