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就活生の必勝おにぎりが選手支えた 38年ぶり6度目の全日本制覇!

硬式野球 2019.07.10

 待ちわびた光景だ。全国から27大学が集い日本一を決する全日本大学選手権に、明大は東京六大学を代表して出場。決勝で佛教大を6-1で下し、38年ぶり6度目の優勝を果たした。「やっと歴史がつながった」と、春の日本一は善波達也監督の大学1年次以来の快挙。最高殊勲選手賞には、森下暢仁主将(政経4=大分商)が選出された。


猛進

 9回裏2死二塁、森下が投じた146㌔の直球にバットが空を切る。その瞬間、神宮球場は勝利の歓声に包まれた。選手たちも、応援し続けたファンたちも。38年ぶりの待ちに待った春の日本一。マウンドでナンバーワンのポーズとともに咲いた笑顔。世代を超え、託された夢を成し遂げた選手たちは達成感に満ちていた。

 最上級生の活躍なしでは語れない。北本一樹内野手(文4=二松学舎大付)は5割を超える打率で打線をけん引した。3回戦では強豪・東洋大相手に森下が完封勝利。準決勝は伊勢大夢投手(営4=九州学院)が好リリーフを見せ、喜多真吾内野手(法4=広陵)がダメ押しの本塁打を放った。迎えた佛教大との決勝。「みんながつないでくれた」。先発した森下は気迫あふれる投球で9回10奪三振1失点の完投。試合後の優勝インタビューでは「このメンバーと野球をやれて本当に良かった」。主将はすがすがしい表情で仲間への思いを語った。


一丸

 昨秋、どん底から新チームが始動した。下級生の頃から活躍していた一つ上の先輩。その4年生主体のチームがリーグ戦4位。また、北本の代は規定打席に1人しか到達していなかった。さらにリーグ戦期間中、ベンチ外の選手が応援に来ていないことが発覚。「先輩ができなかった優勝を自分たちが……」(北本)。迎えた春季リーグ開幕戦、オーダーには新4年生が並んだ。「自分たちが活躍しないと勝てない」(喜多)。不安で動きは硬くなった。

 そんな選手たちに勇気を与えたのがベンチを外れた4年生だった。始動時に繰り返した学年ミーティング。全員の心にあった〝チームが勝つには〟。この思いで自ら裏方を買って出た。普段はチームを離れて、就活に専念する人が大半。そんな中「自分たちのできることをやっていこう」(蓮見昌吾寮長・営4=明大中野八王子)。5時半に始まる朝練では、率先してサポート。私生活の面でも模範となった。 試合当日には早朝から100個のおにぎりを握った。選手が手に取ると、愛情がこもった背番号付き。「本気で応援してくれている。勝たなきゃいけない」(北本)。〝必勝おにぎり〟は士気を上げ、背中を押した。それに応えるようにガッツポーズは決まってスタンドの方へ。拳の先にはネットを握りながら喜ぶワイシャツ姿の4年生。「本当に選手たちはすごいことを成し遂げてくれた」(今井竜司学生コーチ・国際4=豊川)。誰一人欠けてはならない、紛れもなく〝全員〟で戦い抜いた春。「サポートしてくれた人や応援してくれた人、全員のおかげで優勝できた」(北本)。喜びと同時に感謝があふれた。


四冠

 次なる目標は春秋連覇、そして秋の神宮大会制覇。大学野球史上5回しか達成されていない〝四冠〟だ。秋は王者としてのプレッシャーがのしかかる。「チームが一つとなって日本一を」(森下)。春に築いたチーム力を武器に、いまだ成し得ていない新たな歴史を刻み込む。


【坂田和徳】


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