重圧も責任も伝統も背負って エース兼主将・森下暢仁!

硬式野球
2019.04.01

 神宮の熱い戦いが幕を開ける。4月13日に東京六大学野球春季リーグ戦が始まる。4季ぶりの優勝を狙う今季は、投手の森下暢仁(政経4=大分商)が主将に就任。投手兼主将には歴代、星野仙一氏(昭44政経卒)や川上憲伸氏(平10商卒)などそうそうたる顔ぶれが並ぶ。今秋のドラフト上位候補に挙がる絶対的エースがチームを優勝へと導く。

捨てたエゴ
 まさかの主将就任だ。「あの森下が⁉」。ライバルのニュースを聞き、驚く他大の選手は多かった。マウンドで見せるクールな表情から、リーダーとしての姿を想像することは難しい。善波達也監督も「暢仁(森下)の主将は途中まで全く考えていなかった」と笑う。穏やかでマイペースな性格には、チームへの無関心という一面もあった。「雑用はしないタイプ。前は『誰かやっといて』という感じだった」(北本一樹内野手・文4=二松学舎大付)と同期も語る。

 転機は新チーム始動後、主将候補の北本がケガの治療でチームを離脱。そんな状況で誰よりも声を張り上げるエースの姿があった。「自分がもっと責任感を持たないといけない」。首脳陣からの叱咤(しった)にも強気に言い返し、チームを鼓舞。指揮官は「出てくる言葉からパワーを感じる」と迷わず〝主将・森下〟を決断した。

 自覚が生んだ大きな変化。背景には2年分のもどかしさがある。森下は1年次の春秋連覇と日本一の瞬間を、同期で唯一ベンチから見守った。しかし、それ以降は無冠。優勝を知る最後の学年となった。4季以上連続で優勝を逃したのは実に11年ぶりのこととなる。「下の学年には優勝を経験させる」。森下は主将あいさつで何度もこの言葉を口にした。強い明治を取り戻す――。伝統の重みにも正面から向き合い、戦うつもりだ。


信頼の土台
 主将として厳しい言葉も仲間に投げ掛ける。それでもチームメイトは「暢仁が言うならやるしかない」と語る。その説得力は圧倒的な投手としての実力から生まれる。2年連続で大学日本代表に選ばれるなど実績は六大学屈指。5種類以上の変化球を操るが、あえてこだわるのは直球だ。「直球をしっかり投げないと変化球も生きない」。しなやかな腕の振りから繰り出されるボールは最速153㌔。入学当初、腕の振りが〝速すぎて〟肘を骨折したという逸話もある。篠原翔太捕手(政経2=報徳学園)は「打者への圧がある」と球威のすごさを語る。

 優勝には大車輪の活躍が不可欠だ。過去に投手兼主将として優勝に導いた高橋三千丈氏(昭54商卒)や柳裕也選手(平29政経卒・現中日ドラゴンズ)は同時にベストナインも獲得。逆に4年次に成績を落とした星野氏は優勝に届かなかった。ベストナインには勝利数が重視され、森下も「投げた試合は全部勝つ」と意気込む。エースとして勝ち切る強さが求められる。


背中で示す

 弱さはもう見せない。母・美生さんは息子の性格を「怖がりで繊細」と話す。森下も就任当初は「自分でいいのかなと思った」という。それでも「期待に結果で応える」と覚悟を決めた。記念すべき40度目の優勝を狙う今春。背番号〝10〟を背負い、強い明治の象徴として。重圧も責任も伝統も、全て受け止めてマウンドに立つ。

【楠大輝】

◆球歴 小学3年次から明治少年野球クラブで野球を始める。大東中では九州大会優勝。大分商高では1年次夏に控えとして甲子園出場を果たす。3年次にはU―18 ( 18歳以下)日本代表に選ばれた。明大では1 年次春に初登板。大学日本代表に2度選出され、国際大会での通算防御率は1.98
◆球種 最速153㌔の直球とスライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップ、ツーシーム
◆サイズ 180㌢・75㌔
◆好きな言葉 〝過去は運命。未来は可能性〟。「今が大事だという意識を持たせてくれる」
◆趣味 ドラマ鑑賞

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