22年ぶり歓喜の抱擁 日本一
長い紫紺の歴史に新たな1ページを刻んだ。全国大学選手権(以下、選手権)決勝・天理大戦を制し、22年ぶり13度目の大学日本一に輝いた。試合開始早々に先制を許す波乱の幕開けとなったが、前半22分に勝ち越すと以降一度もリードを許すことなく、22―17でノーサイド。タフな試合を勝ち切った。昨年度、準優勝に終わった悔しさを胸に戦い続けた1年間。頂点だけを目指し始まったリベンジは最高の形で幕を閉じた。
猛攻封じた粘り
1年越しに頬を流れたのはうれし涙だった。5点リードで迎えた最後のワンプレー。じわじわと前進してくる天理大に対し、気迫のディフェンス。残り22㍍、最後の力を振り絞り出足の鋭いタックルを突き刺した。するとこらえかねた相手がノックオン。優勝を告げるホイッスルとともに、選手たちの歓喜の雄たけびが響いた。場内には22年ぶりの王者を祝福する〝メイジ〟コール。観客数2万人超えの秩父宮は大歓声に包まれた。「本当にうれしい」。日本一だけを目指し、チームを率いてきたスクラムハーフ福田健太主将(法4=茗溪学園)は涙ながらに答えた。
我慢強さが勝利の要因だ。留学生3人を中心に、フィジカルに自信を持つ天理大に対し「チームとしてやることは見えていた」(福田健)。1人目のタックルで仕留め、2秒以内に起き上がるタフなディフェンスを徹底。その結果、相手ボールを奪ったターンオーバーの回数は6回と粘り強さが光った。関東大学対抗戦(以下、対抗戦)までは決して堅いとはいえなかった明治のディフェンス。「選手権を通して成長してくれた」と田中澄憲監督は選手たちをたたえた。
負けて得た本音
「今日まで決して楽な道のりではなかった」(福田健)。関東大学春季大会で優勝を果たし、大きな期待を背負って迎えた対抗戦。「上級生が浮足立っていた」(齊藤剣・政経4=能代工)。慶応、早稲田と伝統校相手に接戦をモノにできず連敗。しかしこの負けが選手を成長させた。対抗戦後、4年生で決起集会を実施。リーダー陣だけでなく22人全員が思いの丈をぶつけた。元々仲の良い代だが「本音を語り合ったことで本当のコミュニケーションが生まれた」(スタンドオフ忽那鐘太・文4=石見智翠館)。敗戦を経験して得た真の信頼。それは対抗戦で型にはまり過ぎていたという福田健のプレースタイルも、柔軟なものに変えた。決勝前半22分に勝ち越し点となったウイング髙橋汰地(政経4=常翔学園)のトライ。福田健は相手の意表を突くクロスパスを使いトライへつなげた。「コミュニケーションを取って最高の選択ができた」(福田健)。大舞台で見せた巧みな戦術。4年生全員の思いから生まれたプレーだった。
エクシード完結
1点差に泣いた昨年度の決勝から1年。スローガンである『Exceed』を完遂してみせた。準決勝では対抗戦で敗れた早稲田へのリベンジ、決勝では春夏と連敗を喫していた天理大を破っての優勝。昨年度の準優勝という成績だけでなく、常に過去の自分たちを〝超えて〟きた。「全員が成長し続けてきたのを実感できた1年だった」(プロップ祝原涼介・情コミ4=桐蔭学園)。平成最後の年にとどろかせた明治の名。「このチームで試合ができて良かった」。日本一の主将が日本一の笑顔で締めくくった。【鈴木貴裕】
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