阿部弘輝 強さ得たエース

競走
2018.12.19

 真のエースたれ。阿部は、三大駅伝関連の大会でいずれもチームトップの成績を残した。箱根でも明大の大黒柱として期待される。


進化と真価

 二つの変化で殻を破った。1年次は全日本で1区17位。箱根も4区13位と失意のうちに沈んだ。転機となったのは2年次の全日本。調整をロードではなくトラックで走りの型をつくる方法に変更。「絶対にいける練習が確立した」。この調整法で7区区間新記録を樹立。続く関東インカレや日本選手権の好走にも直結した。

 「メンタルが不安」と語っていた2年前。高過ぎる理想があだとなり、納得できる練習が積めない自分にいら立ちを感じていた。そんな阿部を見かねて声を掛けたのは当時コーチだった山本駅伝監督。2年次の3月に焼き肉に連れていくと「プライドを捨てろ」と一言。この時に得たのは冷静に自分を見つめ直す視点。悪い結果になっても「理由付けをし切り替えられるようになった」。自信をにじませながら語った表情はエースそのものだった。

 「エースの重圧は感じない。結果で黙らせる」。普段の謙虚な彼に似つかわしくないビッグマウスは、一貫した信念の現れだ。「自分が納得するために走っている」。事実11月の八王子ロングディスタンスでは1万㍍で今年度日本人学生最高となる27分56秒45を記録。またも結果で語った。

 「僕にとっては一つの段階」。世界での活躍を目指す阿部にとって箱根はいわば通過点。それでも「1歩ずつレベルを上げる」と慢心の色は見えない。2度目の箱根路で真価を発揮する。

【島田雄貴】