特集記事
SPECIAL

4年ぶりシードへ 復活のM

競走 2018.12.19

 古豪復活ののろしを上げる。昨年度、10年ぶりに箱根駅伝(以下、箱根)出場を逃した明大。チーム再建へ、4月から山本佑樹駅伝監督が就任し、新たな指導体制が整った。そこから10月の箱根予選会では5位、11月の全日本大学駅伝(以下、全日本)では3年ぶりの1桁順位とチームは上り調子だ。最終目標は2014年度以来のシード権(以下、シード)奪還。強い明大を取り戻し、箱根路で紫紺旋風を巻き起こす。


改革

 〝速いだけで強くないこれまでの明大に対する評価の代名詞だ。エントリー選手の上位10人の1万㍍の平均タイムでは、青学大に続いて2番手。ところが、毎年タイム通りに走ることができず、持ち味を発揮できなかった。

 個々の能力は他大と引けを取らないのに、なぜ結果を残せなかったのか。理由は練習法にあった。これまで明大は5000㍍と1万㍍のタイムを関連づけた、スピード強化が中心。しかし箱根は一区間の距離が20㌔以上。速さだけでは対応できない。山本駅伝監督は対策として、この1年、ハーフマラソン(以下ハーフ)と1万㍍の関連性に着目。「長い距離で走るための1万㍍を選手に意識付けた」。夏合宿では走行距離を昨年度から大きく増やし、距離克服への糸口をつかんだ。

 成果はすぐに表れた。10月以降、12人がハーフの自己記録を更新。その後11月には1万㍍で15人もの選手がタイムを伸ばした。思惑通りのチーム状況に「雰囲気と底上げは非常にうまくできている」と山本駅伝監督。昨年度までとの違いを見せ、勢い十分のまま、箱根に臨む。


適性

 1万㍍の記録が速いだけでも山では勝てない。明大のもう一つの鬼門が5区だ。前回の箱根では青木涼真(法大)が9人走で区間賞を獲得した。当時、青木の1万㍍のタイムは29分30秒64と今の明大で14番手に相当する記録。ここから極端にタイムが良くなくても山を制すことができると分かる。5区に起用が予想されるのが酒井耀史(商2=須磨学園)。1万㍍のタイムは平凡だが、高校時代は世界クロスカントリーの代表に選ばれ、高低差のあるコースを走った実績もある。11月の上尾ハーフでもチームトップでゴールし、山登り、距離への適性は十分。「登りのイメージは何回もできている」。酒井が〝山の神〟となれるかに注目だ。


継走

 「上位を確実にするためには出だしが第一条件」と日本陸上競技連盟マラソン強化戦略プロジェクトリーダー・瀬古利彦氏は語る。1、2区で上位に食い込むことはもちろんのこと、勢いを維持するという意味で3区は重要区間だ。2015年度の箱根ではこの区間で順位を八つ落とし、8年連続のシードを逃す一要因となった。そんな3区での出走が予想されるのは三輪軌道(理工3=愛知県私立愛知)だ。1年次も同区間を任されるなど、期待の大きかった三輪。しかし、昨年度は箱根予選会の途中棄権など、結果の振るわない日々が続いた。「チームに迷惑を掛けたのでその分恩返しをしたい」と臨んだ今年度。箱根予選会でチーム5番手の結果を残すと、全日本では3区6位と復調。直近の記録会でも1万㍍のベストを更新した。出場した三大駅伝(出雲、全日本、箱根)で全て3区を任された三輪が、つなぎの走りでシードを引き寄せる。

 今年度は三輪をはじめ、成長著しい選手が多く、チーム全体が上り調子だ。「全力を尽くすのみ」(山本駅伝監督)。盤石の布陣で強豪を脅かす疾走を見せる。

【綾部禎】


関連記事 RELATED ENTRIES