7位から逆転 インカレ総合4連覇
執念でつかみ取った頂点だ。1日目終了時点で総合7位と幸先の悪いスタートも、怒涛(どとう)の巻き返しで逆転優勝。黄金時代をつなぐ4連覇を達成した。
◆9・7~9日本学生選手権(横浜国際プール)▼男子総合❶明大
二つの〝げき〟
3年間王者に君臨する最強集団に、不穏な空気が流れていた。初日から成績は振るわず、2日目も表彰台候補の選手が予選落ち。王座陥落の危機に、指揮官の〝げき〟が飛んだ。「優勝への気持ちが足りない」(佐野秀匡監督)。これが選手の闘志に火を付けた。「順位を一つでも上げる気持ち。自分の言葉では足りなかった」(内田航主将・法4=淑徳巣鴨)。その後は一人一人が確実に、そして予想を超える結果で得点を重ねた。2日目最終種目・400㍍メドレーリレーでは表彰台が厳しいとされていた中、2位を獲得。最終日も破竹の勢いで、首位に立つ中京大から首位を奪い22・5点差をつけた。4年間で最少得点となったが〝劇〟的な逆転優勝は、過去3年を超える喜びをもたらした。
重かった天皇杯
1年前、断トツで優勝を飾り3連覇。次なる主将に任命されたのは内田だった。しかし待っていたのはケガとの闘い。3年次12月に足の傷口が化膿(かのう)する病に。計3回の切開手術を余儀なくされた。手術後は最長1カ月泳げないこともあり、体力づくりも調子もその度にリセット。「期待の声もストレスになっていたかもしれない」と満足に練習ができない上に、4連覇への重圧も増していった。「最後に格好良い姿を見せたい」。今大会、初日の400㍍自由形では予選落ち。名誉挽回のチャンスは、最終種目・800㍍フリーリレーだけとなった。予定では予選のみの出場だったが、決勝も「泳がせてください」と全部員の前で優勝への思いと共に嘆願。「おとこ気を買った。決勝に出る選手にもプラスになった」(佐野監督)。すると、自己ベストまでわずか0秒77の泳ぎを披露。結果が求められる世界で、最後の最後にチームに貢献してみせた。歓喜の中に、一人安堵(あんど)の表情を浮かべた。総合優勝した大学にだけ贈られる天皇杯。「重かった。いろいろなものが詰まっていた」。支えてくれた仲間への感謝、重圧からの解放、さまざまな思いが詰まったトロフィーを掲げ、競泳人生を締めくくった。
【坂田和徳】
◆内田航(うちだ・こう)東京都出身。好奇心旺盛な性格。培った教養で「誰とでも話せる」と同期も感心。181㌢・76㌔
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